縦型の短い動画「ショート動画」が手軽に視聴できると人気だ。中でも『YouTubeショート』は、2023年2月から収益化が始まり、注目を集めている。ほかのメディアにはない、YouTubeショートの持つ可能性に迫る。
教えてくれた人は…
株式会社TORIHADA ささきこうたさん
ショートムービーマーケティング会社TORIHADAプランナー。自身も動画クリエイターとして活動しており、YouTubeチャンネル「ぼくと嫁の日常」の登録者数は13.8万人。
成長を続けるYouTubeショートは〝現代版テレビCM〟
ショート動画とは、1分程度で構成された縦型の動画を指す。短時間で手軽に視聴できるとして、若い世代を中心に人気だ。サムライトの調査によると、Z世代の8割近くが週に1日以上ショート動画を視聴しているという。
ショート動画が持つ広告媒体としての可能性に、企業も注目している。動画クリエイター兼TORIHADAプランナーのささきこうたさんが解説する。
「ショート動画での宣伝に使われるPR動画、いわゆる『案件動画』は、テレビCMと異なり、インフルエンサー自身が撮影・編集します。これが広告っぽさを嫌うZ世代にフィットしています。
また、今ではテレビとショート動画サービスでは、CPV(広告視聴1回あたりのコスト)にほとんど差がないといわれています。
これらの理由から『同じコストなら、インフルエンサーにショート動画を作ってもらおう』という流れが生まれてきているのです」
「ショート動画」といえばTikTokがその中心だったが、2021年7月からサービスを開始したYouTubeショートが急成長している。
「23年2月にはショート動画媒体唯一となる広告収益が解禁されました。クリエイターからの注目度も高く、YouTubeショートの優先度を高くしている人が増えています」
YouTubeデータ分析ツール「kamui tracker」によると、23年1月から6月までにYouTubeに投稿された動画のうち、ショート動画の割合は約12%で、21年比で約3倍の成長を遂げている(下図)。
YouTubeショートの強みは、オーディオライブラリーなど機能面に加え、年齢層の広さやマルチプラットフォームといったYouTube自体の特徴を生かしている点にある。
「TikTokはZ世代が主な利用層ですが、YouTubeは年齢層が幅広く、異なるトレンドを生み出しています。22年11月には、YouTubeショートがテレビなど大画面端末に対応しました。スマホやタブレット以外でも視聴できるのは大きなメリットと言えます」
今後もYouTubeショートは成長を続けると、ささきさんは予想している。
「ショート動画はひとつのジャンルへとなっています。競合サービスと差別化を図るために、今後はコンテンツの形を変化させながら発展していくと思います」
23年8月からは、YouTube Music版のショート動画といえるサンプル機能が追加された。これからもショート動画という形式を軸に、様々な形でコンテンツを展開することで、新しい市場を開拓していくことだろう。
YouTube内でのショート動画投稿の割合(%)
出典:YouTubeデータ分析ツール『kamui tracker』
日本でサービス開始した2021年7月以降、大きく成長。22年後半には10%台へ突入した。23年では10%以上の水準を保っている。
世代におけるショート動画の視聴頻度
出典:サムライト「Z世代における『ショート動画』の〝リアル〟な利用実態」
Z世代の8割以上がショート動画を週1日以上視聴している。また35%以上がYouTubeショートの視聴頻度は週5日以上と回答した。
Z世代に人気なショート動画ジャンル
出典:サムライト「Z世代における『ショート動画』の〝リアル〟な利用実態」
TikTokはダンスやファッション動画が人気。それに対してYouTubeショートはゲーム動画やレシピ動画など、カテゴリーの幅が広い。