物を盗むことは、言うまでもなく犯罪です。
また、自分自身が盗んだ物でなくても、盗まれた物であることを知りながら転売することも犯罪に当たります。
物を盗まれた側としては、転売後2年間は返還を請求可能です。転売された物の所在が判明したら、速やかに返還請求を行いましょう。
本記事では盗品を転売した場合の取り扱いについて、刑事責任や所有権の帰属などを解説します。
1. 盗品を転売した人が負う刑事責任
他人の所有物を自ら盗んだ場合は、「窃盗罪」により「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」に処されます(刑法235条)。
この場合、盗品を転売する行為は窃盗罪に吸収されるため、別途処罰されることはありません。
一方、他人が盗んだ物を転売した場合は、以下のパターンに応じて犯罪の成否や種類が異なります。
(1)犯人と意思を通じた上で転売した場合|盗品等関与罪
(2)犯人と意思を通じることなく、盗品と知りながら転売した場合|遺失物横領罪
(3)盗品とは知らずに転売した場合|犯罪不成立
1-1. 犯人と意思を通じた上で転売した場合|盗品等関与罪
窃盗罪の犯人と意思を通じた上で、盗品を転売した場合は「盗品等関与罪」が成立します(刑法256条)。また、盗品等関与罪の犯人と意思を通じた上で、盗品を転売した場合も同様です。
盗品等関与罪は、以下のパターンに分類されています。
(1)盗品の無償譲受け
→犯人から無償で盗品を譲り受けた場合に成立します。法定刑は「3年以下の懲役」です。
(2)盗品の運搬
→有償・無償を問わず、犯人から委託を受けて、盗品の所在を移転させた場合に成立します。法定刑は「10年以下の懲役および50万円以下の罰金」です。
(3)盗品の保管
→有償・無償を問わず、犯人から委託を受けて、盗品を管理した場合に成立します。法定刑は「10年以下の懲役および50万円以下の罰金」です。
(4)盗品の有償譲受け
→犯人から有償で盗品を譲り受けた場合に成立します。法定刑は「10年以下の懲役および50万円以下の罰金」です。
(5)盗品の有償処分のあっせん
→有償・無償を問わず、犯人による盗品の転売を仲介した場合に成立します。法定刑は「10年以下の懲役および50万円以下の罰金」です。
1-2. 犯人と意思を通じることなく、盗品と知りながら転売した場合|遺失物横領罪
犯人と意思を通じてはいないものの、盗品であることを知りながら盗品を転売した場合は「遺失物横領罪」が成立します(刑法254条)。
遺失物横領罪の法定刑は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金もしくは科料」で、盗品等関与罪よりは軽くなっています。
1-3. 盗品とは知らずに転売した場合|犯罪不成立
盗品等関与罪および遺失物横領罪は、行為者に故意がある場合(=盗品であることを知りながら行った場合)に限って成立します。
したがって、盗品であることを知らずに盗品を転売した場合は、犯罪が成立しません。