車・バイク用語の中には「聞いたことはあるけれど、どの部分を指しているのかわからない」という言葉も少なくない。「クラッチ」もそんな用語の一つだ。普段AT車に乗っている人であれば、「半クラッチ」や「クラッチペダル」と聞いてもピンとこないのではないだろうか。一方、車用語のクラッチを知っていても、車以外の「クラッチ」については馴染みがない、という人も多いはず。
そこで本記事では、車の「クラッチ」の役割や使い方、また、同じ「クラッチ」でも意味が異なる同音異義語についても解説する。
「クラッチ」は動力の伝達装置
クラッチとは、車のエンジンとトランスミッション(変速機)の間に取り付けられている動力伝達装置を指す。エンジンの動力をトランスミッションに伝えたり遮断したりすることで、車の発進・停止・変速を調節するパーツだ。
クラッチの役割は?「ブレーキ」との違い
クラッチが繋がっていると、エンジンからトランスミッションに動力が伝わり、車輪が回る=車両の発進が可能となる。反対にクラッチが切り離されている状態ではエンジンの動力は伝わらず、車は停止する。また、ギアチェンジ(変速)の際には、クラッチ操作でエンジンの動力を一旦遮断した後に再び繋ぐことで、変速時の衝撃を抑えたスムーズな走行が可能となる仕組みだ。
なお、クラッチが遮断されている状態(クラッチペダルを踏み込んだ状態)では、車は発進しないが、この状態とブレーキとの違いがわかりにくいと感じる人もいるだろう。ブレーキは、走行中の車の車輪などに摩擦を加えることでエネルギーを吸収し、減速・停止させる装置を指す。車の動力伝達を制御するクラッチと、車の動力を吸収するブレーキ、という具合に違いを知っておくと良いだろう。
半クラッチとは?マニュアル(MT)車のクラッチ操作方法
マニュアル車を運転する際はクラッチの操作を覚える必要がある。発進や坂道発進などで必要な「半クラッチ」は、踏み込んだクラッチペダルを徐々に離していくことでエンジンの動力を少しずつタイヤ側に伝え、スムーズな発進に繋げるやり方だ。
半クラッチを上手に行うためには、クラッチペダルを踏み込んだ状態でギアをニュートラルから1速に入れ、アクセルを踏み込みつつ、徐々にクラッチペダルを離していく。坂道発進の場合などは、早めに半クラッチの状態にしないと車両が下がってしまうケースもあるため注意しよう。
オートマ(AT)車はクラッチ内蔵の自動制御
オートマ(AT、オートマティック)車は、このクラッチが内蔵され、自動で切り替えを行うため、ドライバーが自分でギアチェンジやクラッチ操作をする必要がない。クラッチペダルもなく、アクセルとブレーキ操作のみとなるため、運転免許を取得する際にもマニュアル車と比較して取得期間が短く済むなどのメリットがある。
バイクにもクラッチがある?
車だけでなく二輪車(バイク)も、クラッチ操作の必要な車種(MT車)と、自動制御の車種(AT車)に分かれる。バイクの場合は左側のハンドルグリップにクラッチがあり、左足のステップ付近にギアチェンジペダルがある。クラッチレバーを握り込むとクラッチが切れ、離すと繋がる仕組みだ。発進時は、クラッチを握り込んだ状態でギアチェンジペダルを一回踏み込んで1速に入れたあと、アクセルをひねりながらクラッチレバーを少しずつ離していく。
なお、AT車のバイクは、車と同じようにこれらのギアチェンジが自動化されている。
他にもある「クラッチ」の同音異義語
クラッチは、車やバイクの「クラッチ」以外の意味を持つ場合もある。混同しないためにも車用語以外のクラッチも押さえておこう。
ゲームの「クラッチ」は大人数に一人で勝つこと
eスポーツなどのゲームでは、戦況が不利な状態をひっくり返して勝利することを「クラッチ」と呼ぶ。FPS(First Person Shooter)と呼ばれる自分が操作するキャラクターの視点で進行する3Dシューティングゲームで主に使われる用語だ。FPSの代表的なタイトルには『VALORANT』『Apex Legends』などがある。
バスケの「クラッチ」はシュート関連用語
バスケットボールでも主にシュートに関連する用語として「クラッチ」が頻繁に使われる。覚えておくと、観戦時によりゲームを楽しめるはずだ。
・ダブルクラッチ:ディフェンスをかわすためにゴール手前でボールを持ち直すなどして2回シュート体制に入ること
・クラッチシューター:ここ一番で何度もシュートを決める土壇場に強い選手
・クラッチタイム:シュート一本によって勝敗が分かれる競った場面のこと
※データは2023年2月上旬時点のもの。
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文/編集部