リクルートは企業で働く人事担当者5048人を対象に、人材マネジメントをテーマとした「企業の人材マネジメントに関する調査2023」を実施。
その回答結果から企業におけるアルムナイ(カムバック採用/退職者コミュニティ)の現状と採用や、従業員エンゲージメントなどに関するリポートを発表したので、本稿では、その概要をお伝えしていく。
アルムナイネットワークを通じて採用を行なっている企業は「採用が好調」「従業員エンゲージメントが高い」
近年、人事領域では「アルムナイ」に注目が集まっている。「アルムナイ(alumni)」とはalumnusの複数形で、「学校の卒業生・同窓生」を意味する。
そこから転じて、人事領域では「企業の離職者・退職者」という意味で使われている。構造的な人材不足が加速する日本において、アルムナイネットワークは有効な人材獲得手法の一つとして捉えられ、採用においての活用が広がってきたという。
かつて離職者・退職者は、在籍していた会社からネガティブな印象を持たれることもあった。しかし現在、人材獲得競争の激化を背景に、「かつて一緒に働いた仲間をもう一度戦力として迎え入れよう」という意識に転換している。
実際、アルムナイネットワークを通じて採用を行なっている企業、あるいは構築に取り組んでいる企業は、そうでない企業に比べ、「採用が好調」「従業員エンゲージメントが高い」などポジティブな傾向が見られることが、今回の調査で明らかになった。
アルムナイネットワークを通じた採用を行っている企業は1割強
企業の人事担当者に「現在実施している採用手法」を聞いたところ、アルムナイネットワークを通じた採用を実施していると答えた企業は1割強(12.3%)だった。現段階ではまだ一部の企業に限られていることがわかる。
アルムナイネットワークを通じた採用を行っている企業ほど、採用がうまくいっている傾向
次に、アルムナイネットワーク活用とこの 1~2 年の人材採用の状況の関係を確認した。人材採用の状況については、「人員数」と「人材レベル(求める人材要件に合致する人を採用できているか)」という二つの観点で見ていく。
まず、「人員数」という観点で「十分に採用できている」「ある程度採用できている」と答えた割合は、アルムナイ採用を行っていない企業が 31.6%であるのに対し、アルムナイ採用を行っている企業は 42.9%となっている。
次に、「人材レベル」という観点では、「十分に採用できている」「ある程度採用できている」と答えた割合は、アルムナイ採用を行っていない企業が 24.6%であるのに対し、アルムナイ採用を行っている企業は 34.5%と、こちらでも差が表れている。
実際に、出戻り社員の受け入れを行っている企業は半数以上
一方、退職した従業員の再雇用――いわゆる「出戻り社員」を受け入れているか、という質問に対して、「受け入れている」と答えた企業は半数以上(55.5%)した。
アルムナイネットワークを明確に採用手法としては認識していないものの、実質的にはアルムナイ採用を半数以上の企業が行っていると言えるだろう。今後、戦略的にアルムナイネットワークを通じた採用の仕組みを整備することで、有効な採用チャネルとして活用できる可能性がありそうだ。
アルムナイネットワークの構築に取り組んでいる企業は約 3 割
アルムナイネットワーク構築の現在地に目に向けると、すでに構築に取り組んでいる企業は3割を超えている(31.0%)。約3社に1社がアルムナイネットワークの構築をしていることが判明した。
また、アルムナイネットワークの構築に取り組んでいない企業のうち、「取り組む予定がある」と答えた企業は約1割だった(11.2%)。
アルムナイネットワークを構築している企業も採用がうまくいっている傾向に
アルムナイネットワークの構築と採用状況の関係にも注目した。 「人員数」という観点で「十分に採用できている」「ある程度採用できている」と答えた割合は、アルムナイネットワーク構築に取り組んでいない企業が30.4%であるのに対し、構築に取り組んでいる企業は43.0%。
「人材レベル」という観点では、「十分に採用できている」「ある程度採用できている」と答えた割合は、アルムナイネットワーク構築に取り組んでいない企業が21.8%であるのに対し、構築に取り組んでいる企業は36.6%と、14.8ptの差となっている。
調査概要
調査方法/インターネット調査
調査対象/全国の人事業務関与者(担当業務2年以上)
有効回答数/5048人 ただし、従業員規模30人以上の企業に勤める2761人を集計対象とした。
(従業員規模30~99人:753人、100~299人:605人、300~999人:540人、1000人以上:863人)
調査実施期間/2023年3月29日(水)~2023年3月31日(金)
関連情報
https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20230920_hr_01.pdf
構成/清水眞希