ハイレゾ伝送をワイヤレスで実現!多数のスピーカーに同時接続できるWi-Fiオーディオシステム「ミュートラックス」って何?
2023.09.25同期信号を使いピタリと音を同期
仙台でのイベントで求められた複数のスピーカーの音の同期問題。これが今までWi-Fiで1対複数のワイヤレス伝送ができなかった理由だった。スピーカー同士をどのように同期させるか、宮崎さんの解決法は親機と子機の同期を調整することで、子機同士の同期をとる方法だった。デジタルデータの転送時にクロック信号を使って同期を取るように、基準となる信号を使ってタイミングを合わせているという。具体的には子機側のバッファーに貯めらたデータを使って時間を調整する。この方法では親機から子機への音の遅延が生じるが、それよりも子機同士の音が揃うことが重要になるのだ。この遅延は10ミリ秒から5秒の間で設定ができる。マイク音声などリアルタイム性が求められる環境では遅延を小さく、BGMなど音の安定性が求められる環境では遅延を大きくするといった使い方が可能だ。
親機にはミュージックプレーヤー機能がありmicro SDの楽曲再生にも対応。操作は本体のスイッチ、及びリモコンでおこなえる
親機はPCとUSB接続するだけで、バスパワーで起動し自動的にPCに認識され子機との通信を開始する
1対多で広がる用途
親機6万6000円、子機4万4000円のセット11万円で一般販売予定のミュートラックスは、どんな人達に使われているのだろう。まず、多いのは店舗のBGMなどに使うためのオーディオ用として。内装をほとんど仕上げてからスピーカーが必要なことに気付くケースで救世主になるという。また、高校のマーチングバンド部が楽器の演奏の練習時に使うワイヤレスのイヤモニシステムとして使えないかという相談を受けて、イヤホンジャック付きで充電池内蔵の子機も開発している。さらに花火師から、大阪淀川の花火大会で使うから、300m届かせたいという依頼も受け、八木アンテナを使い到達距離500mを実現した。半導体の工場に設置された測定器から出る音声ガイダンスを複数の場所で聞きたいという依頼にも応えた。
ハードオフや家庭に眠っているスピーカーをハイレゾの音楽を流して復活させたいという宮崎さんの願いから生まれたミュートラックスは、設計者の想像を超えた使い方が提案され、高音質ワイヤレス伝送の可能性を広げてくれている。一般販売の開始が楽しみな製品である。
写真・文/ゴン川野