音声通話の本人確認簡略化が実現
法林氏:あるメーカーの人に、楽天モバイルに端末を納めるんですか? と聞いたら「絶対ないです」と言っていた。なぜ絶対ないのかと聞いたら、「元々人数が少ない上に、楽天モバイルがiPhoneを扱うようになってからはiPhoneしか売れてなくて、かつ、そのiPhoneも余っているらしい」と。楽天モバイルは端末が売れていない。どうするのかなと。もしかしたら今年は何もないと思うけど、タイミング次第ではiPhoneの扱いを停止されてもおかしくないという話もある。
石川氏:いやいや、それはアップルが許さないですよ。
法林氏:いやいや。一応、台数でコミットしているわけでしょ。
石川氏:まぁ、ね。サムスンはやめちゃいましたもんね。
房野氏:どうしてもネガティブな話に戻ってしまいますね……
法林氏:でも、楽天がモバイル事業に参入して以来、僕らはいろんな問題点を指摘してきたけど、彼らも徐々に気が付いて、少しずつ改善してきている。グループ内の連携とか、iPhoneを扱った方がいいんじゃないかという話もそうだし。そうなってきているので、今はネガティブな話だけど、僕たちが「こうすればいいのに」と提言し続けていれば、もしかすると実現するかもしれない。
石野氏:ポジティブな話としては、ようやく契約数が去年の500万台に戻ったこと。やっぱり1年かかったかな……と思いましたけど。
法林氏:我々がよく言っている「500万の壁」(新規参入のキャリアは400万から500万契約で契約者数の増加が止まるという事例)はどうなりますかね。ちゃんと超えられるかな。
石川氏:超えるんじゃないですかね。超えるけど、この後どう伸びるかですよね。
石野氏:Y!mobileだけで1000万契約あるという数字を聞いてしまうと……
法林氏:Y!mobileで1000万契約、UQ mobileで800万。
石川氏:ahamoで500万。
法林氏:そう考えると、ちょっとしんどい気がする。かなりネジをまかないと。
石野氏:本当に60年とかかっちゃうわけですよ。
法林氏:本人認証をやめる件が……
石野氏:やめるわけではないですよ(笑)
房野氏:いわゆる〝ワンクリック申し込み〟ですね。データ通信プランに加え、音声プランも楽天銀行や楽天証券、楽天生命に本人確認情報を提出している人は簡単に契約できるというサービスが、2023年8月31日に開始されました。
法林氏:日本在留の外国人に買ってもらうつもりなのかなと思った。在留証明書があればOKなので。
石野氏:簡略化できる人は、楽天銀行、楽天証券、楽天生命に本人確認情報を提出している人。データ通信プランの時は楽天カードを持っていればOKだったじゃないですか。音声プランでやるにあたって、警察から何か言われたんじゃないかな、カードだと甘いとか。
法林氏:三木谷さんは「ウチのカードの方が認証は厳しい」って言っていたけどね。データ通信の場合は、訪日外国人にSIMカードを配っているし、それはできる。
石野氏:データ通信プランの場合は、本人確認をしなくても違法ではない。でも、音声通話は本人確認をしないと違法になる。だから慎重にやったんだと思います。TCA(電気通信事業者協会)加盟各社はデータ通信の場合も本人認証をするようにしているし、MVNO委員会主導でMVNOもするようになったんですけど、しなくても違法ではない。音声通話のプランの場合は違法になっちゃうので、たぶん、三木谷さんが決算説明会で言ったように「楽天銀行の本人確認はドコモショップより厳格だ」といって警察に認めさせたのかなと(笑)
ただ、ちょっと気になったのが、確かにマネーロンダリング対策でドコモショップより楽天銀行の方が厳格な本人確認をしているかもしれないですけど、楽天銀行は楽天銀行という会社であって楽天モバイルじゃないので、情報を流用するのはどうなんだっていう話がある。
法林氏:それはそうだ。
石野氏:法人格が違うのに個人情報を流用しちゃっていいのかなっていう点は気になる。それで本人確認OKですっていうことになっちゃっていいのかなぁっていうのは、ちょっと疑問ではあります。
……続く!
次回は、新型「iPhone 15」について会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘
文/房野麻子