タレック・アミン氏退任の影響は?
石川氏:楽天は、携帯電話の国内事業はテストマーケティングだという言い方をすることもあった。海外、楽天シンフォニーで稼ぐと。「4000億円規模で売上が立ってます」と言っていたけど、楽天シンフォニーは大丈夫なのかと。
房野氏:楽天モバイルの代表取締役 共同CEO、楽天シンフォニーの代表取締役CEOだったタレック・アミン氏が退任した件ですね。
前 楽天モバイル株式会社 代表取締役副社長 兼 CTO タレック・アミン氏
石川氏:そこは気になるポイント。
石野氏:そうですねぇ……
石川氏:楽天シンフォニーの代表取締役社長代行になったシャラッド・スリオアストーア氏がいれば大丈夫なんだろうけど……
楽天モバイル株式会社 代表取締役 共同CEO兼CTO シャラッド・スリオアストーア氏
石野氏:技術面では大丈夫でしょうけど、ってところですよね。
房野氏:イメージダウンしますか?
石野氏:イメージダウンというか、MWC(モバイル業界の世界的イベント)とかに行くとアミン氏が登壇して、いろんな人がアミン氏に挨拶しに来ているじゃないですか。ああいうのを見ると、アミン氏は世界のモバイル業界の顔っていう感じがする。
石川氏:三木谷さんは彼のことを「モバイルネットワーク界のスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのような存在」と言っていた。
石野氏:サッカー選手にも例えていた。
房野氏:調べてみたら「イニエスタがヴィッセル神戸(楽天傘下)でプレーしているよりもインパクトがある」だそうです。
石川氏:あれだけアミン氏を持ち上げていたけど、いなくなった途端に三木谷さんは塩対応になった。せめて決算会見の時に、今までお世話になったとか、楽天モバイルの基礎を築いてくれたとか、なにか言うのかなと思いきや。
法林氏:うーん……裏で何かあったのかもしれないね。
石川氏:中途半端なタイミングでの退任って、やっぱりちょっと引っかかるじゃないですか。家族の事情だったらそうかって感じになるけど、今回はあまりに急すぎる。新体制の発表が8月7日にあったけれど、その前の週にグループ最大級のイベント「Rakuten Optimism 2023」があって、当初、アミン氏が登壇する予定だったんです。それが、気がついたら登壇者が変わっていた。結構急だったんだなと。
石野氏:そうそう。X(旧Twitter)で公式アカウントがアミン氏の登壇を告知していたんですよね。でもプログラムでは直前でいなくなっていた。ちょっとねぇ……僕自身は、共同CEOが送り込まれてきた時点で、おや? とは思っていました。だって、社長もいてCEOもいて、さらに共同CEOとして鈴木和洋氏が送り込まれてきて、そんなにCEOがたくさん必要なのかと。
ちょっとおかしいなと思ったのは、6月頃にいきなりスリオアストーア氏のインタビューが楽天モバイルのブログに載ったりして、すごくプッシュしていたんです。また、確か総務省に電気通信事業者の管理責任者のような人を登録しないといけないんですけど、その時点で名前がスリオアストーア氏に変わっていたり。
石川氏:キーマンが続々辞めているっていうのが気になるんですよ。
石野氏:そうですねぇ。
石川氏:技術戦略本部長だった内田信行さんがStarlinkの日本法人に行ってしまって……
石野氏:あれは衝撃でした。もうAST SpaceMobileはダメなのかなって思いました(笑)
石川氏:先日、NewsPicksで「緊急生配信「どうなる楽天!?」徹底分析」という番組に出演したんです。その時に元日本経済新聞記者でジャーナリスト大西康之さんも参加されていて。
石野氏:堀江貴文さんの番組ですね。すごい面子だなと思っていました。
石川氏:大西さんから楽天について書かれたご自身の本をいただいたんです。「なぜ10人が海賊船に乗ったのか」みたいな感じで、三木谷さんの周りにいる10人が、どういう経緯で楽天モバイルを一緒にやるようになったかという話で、10人の名前が挙がっていたんですが、そのうちの3人がもういない。海賊船から降りちゃったと(笑)
アゴダ・インターナショナル・ジャパンに行った大尾嘉宏人さん、楽天モバイルの初代社長の山田善久さんも然り。
法林氏:広報の人もこの間1人辞めた。
石野氏:アミン氏はどうするんでしょうね。
石川氏:楽天モバイルが一応なんとか、首の皮一枚つながっているのは、アミン氏の存在があったからじゃないのかなと。国内では厳しかったけれども、仮想化技術を入れたこと、仮想化技術を外販するっていうことがあった。新体制では三木谷さんが楽天シンフォニーを率いる感じになっているけど、三木谷さんは見ている余裕はないと思うので……
石野氏:たぶん、海外のキャリアの人にとっては三木谷さんよりアミン氏の方が親しみやすい。
石川氏:楽天シンフォニーは日本人が1人もいないだろうっていうぐらいの、実質的に外国企業なんですね。三木谷さんは外国人との交渉は問題なくできるだろうけど、通信技術の面では当然、素人みたいなものなので。
法林氏:技術者はいるから、それをどうするか。率いるのは三木谷さんがいいのかって話になる。
石野氏:ほぼ100%外国人部隊みたいな組織を、三木谷さんが直接牽引したことはあるのかなっていうのは、ちょっと気がかりなところです。今までもアミン氏を下に入れて、自分で率いていたようなものといえばそうですけど……
石川氏:MWCとかで見ていると、三木谷さんはアミン氏に楽天シンフォニーのことはお任せなんだなっていう感じがあった。一応、イベントのプレゼンの時にちょこっと出てきて三木谷さんもしゃべるけど、シンフォニーのハンドリングはアミン氏に任せていたんだなと。
法林氏:楽天シンフォニーは一応、ドイツの通信事業者である1&1社にシステムを売ったわけじゃない。その運用は、大丈夫なのかな。逆にそこから焦げ付く可能性もあるよね。
石野氏:そっちのキャリアがお金がなくて払えないとか(笑)
法林氏:それもあるかもしれないけど、例えば何かの機能を実装しなきゃいけないけど載らない、みたいな話になるとか。
房野氏:でも、スリオアストーア氏が活躍するかもしれないですよね。
石野氏:そうですね。
石川氏:実務的には問題ないような気がするけど、アミン氏は業界の顔的な人物だったからなぁ……1&1の社長にアミン氏がなっていたりして(笑)