■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、〝楽天グループ、楽天モバイルの今〟を会議します。
依然として赤字決算ながらも赤字幅は減少
房野氏:楽天グループ、楽天モバイルの現状についてお聞かせください。
石川氏:楽天グループの決算は想定の範囲内だったよね。しばらく赤字は続くよね、グダグダ言ってもしょうがない。
法林氏:赤字の幅がちょっと小さくなった。少し抑えが効いてきた。
石川氏:KDDIとの新ローミング協定によって、設備投資はしなくてよくなるし。
法林氏:しなくていいとは言えないけど、抑えることはできる(笑)
石川氏:KDDIのローミングによって、都心部でプラチナバンドを手に入れられることは非常に大きかったのかなと。表向き、700MHz帯の3MHz幅を割り当てられたらちゃんとすると言っているけど、それほど整備を急がなくてもよくなるとは思います。あと、契約者数が7月の1か月で10万件伸びたことをどう捉えるか。このペースで行けば年間120万件、3年間で360万件になると、一応、損益分岐点である800万から1000万件に届く。そこまでもてば好転する可能性もあるけど、とはいえ3年で1兆円を超える社債を返させなきゃいけないので、まだまだ予断を許さない。この先、毎月10万件ずつ新規契約を獲得できるかどうかっていうのも……
石野氏:そうなんですよ。三木谷さん(楽天モバイル 代表取締役会長 三木谷浩史氏)は「ナンバーワンキャリアになる」と言っているじゃないですか。ドコモのユーザー数に追いつくのを計算したら68年ぐらいかかる。僕はもう生きてない(笑) せめて生きているうちにナンバーワンになったところを見せてほしい。
石川氏:三木谷さんも、その結果を見られない。
石野氏:というのは冗談として、どうするんだろうなとは思いますね。1か月10万件増ぐらいじゃ、ナンバーワンキャリアという目標まで全然足りない。仮にドコモから10万移行してもらって、その分楽天モバイルの契約者数が10万増えたとしても、半分の30年間ぐらいはかかっちゃう。
石川氏:ソフトバンクの孫さん(ソフトバンクグループ 代表取締役 会長兼社長 孫 正義氏)も過去に「ドコモを超える」と言って、結局超えられなかったくらいだし、ハードルは高い。iPhoneという端末を一時独占で扱いながらもドコモを超えられなかったので。
石野氏:でも、ネットワーク品質は超えましたね(笑)
石川氏:安さ一本槍、使い放題3278円だけでは、ちょっとなかなか響かない。
法林氏:収益を上げていく構図が、料金プラン1個で全部まかなえるものではない。Y!mobileのUSBドングル「Stick WiFi」で通信する500円のプランもそうだけど……
石野氏:「シェアプラン」もですね。
法林氏:そういうものも用意していかないといけない。楽天モバイルはワンプランにこだわりすぎている。
石野氏:楽天にもデータプランがあるけれど、あれはないのと同じ。ニーズに応じた料金が当然あるので、ワンプランにこだわり続ける必要はないんじゃないかという気はしますね。
法林氏:「ahamoよりは繋がります」って言えばいい。「こんなに速い」って。
石野氏:そうなんですけど、楽天もそれをあまり言い過ぎると、4Gの周波数帯が所詮、バンド3の20MHz幅ぐらいしかないので、ユーザーが増えすぎるとすぐにパンクしやすい構造はあるのかなと。