業界別や領域別にトレンドを追いかける専門チームを編成、企業の価値創造をサポート
―まずはStylusが行なうアドバイザリーサービスの内容を教えてください
「企業とは基本的には年間サブスクリプション体系で契約し、新規事業や経営戦略を立てる上で参考になるようなレポートをまとめたデータベースを提供しています。新たなレポートを発行する際に契約企業に連絡を取り、内容の説明などのインプットを直接行なうこともあります。その他、プロジェクトごとに個別で契約したり、広告会社などと協業してクライアント企業のイノベーション創出に伴う課題解決と向き合っています」(秋元さん、以下同)
―コンサル業界としてStylusの立ち位置や戦略コンサルなどとの違いを教えてください
「課題解決よりも企業への助言・情報提供といったインプットに特化していることが最大の特徴です。世界中から集めた質の高い情報を提供するのが、Stylusの役割といえるでしょう。戦略系のコンサルは中期経営計画の立案などのアウトプットをするのが主ですので、そこに違いがあります。インプットというと類似する業態にシンクタンクがありますが、シンクタンクは特定の業界における定量調査などをレポーティングするのに対し、Stylusは人々のライフスタイルや嗜好性の変化、他社事例の収集分析などマクロな視点で業界を越えた幅広いインプットを提供しています。時には全く異業種の情報もあえて提供することもあります」
●用語の補足
・戦略コンサル:マッキンゼーやボストンコンサルティンググループといった、企業の経営課題に対する成長戦略などの立案・提案を行なう企業
・シンクタンク:三菱総合研究所や日本総合研究所といった企業で、研究員が在籍し特定の事例やテーマに沿った調査や研究データの分析などを行なう企業。
―イノベーション関連の調査はどのような体制で行なっていますか
「産業の業界別や、デジタル、サスティナビリティ、ラグジュアリーといった領域別で合わせて20チーム編成して調査を行なっています。調査チームは様々な経歴を持つ人たちで構成されていて、世界中に特派員がいます。我々の主な調査手法としては(1)デスクリサーチ:データやプレスリリースを収集する、(2)フィールドリサーチ:カンファレンス、イベント、新店舗やポップアップなどに出向き直接情報を集める、(3)有識者インタビュー:様々な業界の有識者やインフルエンサーにから話を聞いて情報収集を行なう、という3つがあります。そこから得た様々な情報をレポートとしてまとめ、クライアント企業に提供しています。企業からのリクエストに応じて、個別調査を行い、インプットをすることもあります」
―企業からはどのようなニーズやオーダーがありますか
「新規事業や新商品の企画、未来予測、リブランディングの3つが多いです。例えば、オリンピックが終わりコロナ禍も収束した今から10年20年後の戦略立案に向けた助言や、老舗企業が、若い世代に向けた商品開発を行なったり、彼らに刺さる情報発信の仕方を考えたりするときに必要な情報提供などを行なっています」
企業担当者として、アドバイザリーファームに頼る必要性は本当にあるのか?
ネット上で様々な情報が手に入り、尚且つChatGPTなどの生成系AIを使って、いとも簡単に情報を整理できる時代に、わざわざアドバイザリーファームに頼ってインプットをする必要があるのだろうか。そもそも新規事業の成功率が上げられるのだろうか。
「大企業から中小企業まで企業の規模を問わず、どの企業でも自社が手掛ける事業以外の情報にはアンテナが低いことが多いです。一方、イノベーションを起こすには他領域の情報や考え方などと組み合わせることが鍵となる場合が多いです。そこにアドバイザリーファームの存在価値があると考えています。
例えば自動車メーカーだと当然、自動車業界や関連するモノづくりに関するアンテナの感度は高いですが、それ以外の領域である“食”や“エンタメ”、“ラグジュアリー”と言った情報感度は低くなりがちです。しかし、他領域にこそイノベーションの種が転がっています。Stylusでは、いずれも『パーソナルスペース』として関連があるとして自動車メーカーにインテリアの新しいトレンド情報を提供したこともあります。異業種や異なる領域からの様々な情報を結び付けるのが我々の仕事でもあります」
加速度的に世の中が変わっていく時代の良きパートナーとして活用したい
DXやAIの登場などビジネス環境が急速に変化し、Z世代やアルファ世代といったデジタルに強く多様な考え方を持った人々が社会の中心になっていく世の中で、企業が存続していくためには、企業自身もアップデートし続け、新たな価値を創造し続けなければならない。本業に集中しながらも、イノベーションを起こすために広い視点で情報を集めて、新しい価値を創造し、新規事業を成功に導くのは至難の業だ。
様々なトレンドに対して、理解を深めるためのパートナーとしてアドバイザリーファームを活用していくことで、自らも気づかなかった自社の可能性を見つけることができるかもしれない。
取材・文/久我吉史