日経平均株価指数(日経平均)が最近の高値を前にもたついている。ゴールデンウィーク明け以降の急騰を経て今年7月3日に1990年3月以来の高値を付けた日経平均だが、米利上げの長期化懸念や中国経済への不安などもあって、その後は3万2千円台を中心としたもみあいの展開が続いている。
一方、広く日本の株式市場全体に目を転じると、投資家としてはワクワク感を抑えきれない「別世界」が広がっている。
こうした状況を受けて、三井住友DSアセットマネジメントは、同社チーフグローバルストラテジストの白木久史氏による「日経平均ばかり見ていると見誤る日本株の強さ 『シーズン2』に突入する2023年の日本株上昇相場」と題したマーケットレポートを公開した。詳細は以下の通り。
上昇相場は「シーズン2」に突入
日経平均がもみあいの展開を続けている一方で、幅広い銘柄をカバーする東証株価指数(TOPIX)は7月3日の高値を抜けて、33年ぶりのバブル後の最高値更新が続いている。
TOPIXが日経平均をしり目に上昇を続けている背景には、原油価格の反転による鉱業・石油株の上昇や高配当株の海運株の好調に加え、日本の金利上昇を好感した金融株の好調がある。
一方の日経平均は、電機や精密といった値嵩ハイテク株の調整が足を引っ張り、TOPIXに大きく出遅れる展開となっている。
プロの世界では「TOPIXの一択」
日本を代表する株価指数の一つである日経平均だが、株価の高いいわゆる「値嵩株(ねがさかぶ)」の動きに強く影響を受けるため、株式市場全体の動きをみる上で構造的な欠陥を抱えているとの指摘がある。
このため、機関投資家が日本株運用の成績を見る「ものさし」に使うのは、もっぱら時価総額の加重平均であるTOPIXのほうだ。
そう考えると、プロ目線で見た現在の日本株は、春先の急騰後のもみあいを経て、再び上昇トレンドが明確になっており、日本株上昇相場の「シーズン2」は既に始まっていると言ってよさそうだ。
低PBR企業の行動変容で上昇する高配当・割安株
エネルギー価格や国内金利の上昇といった外部要因に加え、今の日本株の上昇を後押ししているのが、東京証券取引所による「株価純資産倍率(PBR)1倍割れ企業」への改善要請だ。
資本効率やビジネスの収益性で見劣りする「PBR1倍割れ企業」だが、内外からの圧力の高まりを受けた経営改革への動きに注目が集まっている。
低PBR企業による経営改革は、資本効率の改善を通じて株価にポジティブな影響を与える可能性がある。また、株主重視への転換、株主還元の強化への動きは、市場全体の配当や自社株買いの増加を通じて高配当株への追い風となっている。
市場ではこうした動きを敏感に察知して、高配当・割安株の好調が続いている。厚すぎる内部留保が内外からの批判の的となっている日本企業だが、株主還元の向上を通じた資本効率の改善と評価向上は、今後も長期的な投資テーマとして注目できそうだ。
NT倍率反転で加速する日本株上昇の「シーズン2」
短期的にはすっかり蚊帳の外となった感のある日経平均だが、外部環境次第では大きく反発する可能性がある。というのも、前述の通り値嵩ハイテク株の影響を大きく受ける日経平均は、米ハイテク株の動向に敏感に反応する傾向があるからだ。
今後、米国で遠からず利上げが終了するとの見方が市場では有力だが、利上げ終了を受けて米長期金利が下落に転じた場合、米ハイテク株が再び騰勢を強めることで、日経平均も反発に転じる可能性が高そうだ。
さらに、米ハイテク株が上昇することで海外投資家のリスクオンが鮮明になると、日本株の中でも海外投資家のなじみの薄い小型株よりも、日経平均に採用されているような大型株が物色の中心となる可能性がある。
米ハイテク株の反発をきっかけに、ここもと低下が続いていたNT倍率(日経平均をTOPIXで割った数字)の反転が起きるようなら、日本株上昇相場の「シーズン2」が加速する可能性がある。
まとめに
日経平均がもたつく一方、幅広い銘柄が組み入れられたTOPIXは上昇傾向が鮮明だ。背景にはPBR1倍割れ企業への圧力の高まりを背景とした「高配当・割安株」の上昇や、金利上昇期待を映した金融株の健闘がある。
既に上昇相場の「シーズン2」に突入した感のある日本株だが、今後、米国での利上げ終了によりハイテク株が上昇する局面では、日経平均も反発に転じることで日本株の上昇傾向がさらに鮮明になる可能性がある。
出典元:三井住友DSアセットマネジメント
構成/こじへい