ロボット掃除機ルンバのメーカーとして知られるアイロボットが、5年の開発期間をかけた新次元の空気清浄機「Klaara p7 Pro」を日本先行発表。併せて、ルンバの新たなハイスペックモデル4機種をデビューさせた。その発表会で新製品について自ら説明するために、コロナ禍以降で初めて来日したコリン・アングルCEOを、本誌は単独インタビュー。新ルンバの開発秘話や、空気清浄機ビジネスの展望についてお聞きした。
現在最高の機能性を実現した新製品群
今回発表された新製品は「ルンバ コンボ j9+」「ルンバ コンボ j9+ SD」「ルンバ j9+」「ルンバ j9」の4機種と、高性能空気清浄機の「Klaara p7 Pro」、および、それらを統合的にコントロールする「iRobot OS 7.0」である。
新ルンバ4機種は、ルンバ i シリーズ比で最大2倍の吸引力、さらに向上した障害物の自動認識・回避機能、そして、清掃の必要性が高い場所を予測して掃除の順番を提案する「ダートディテクティブ」機能を共通仕様として持つ(後2者の機能は、iRobot OS 7.0とiRobot Homeアプリの組み合わせで実現)。加えて、「ルンバ コンボ j9+」と「ルンバ コンボ j9+ SD」は、カーペットとフローリングを自動判別して水拭きも行う「パッドリフティングシステム」を備え、「ルンバ コンボ j9+ SD」と「ルンバ j9+」には、本体のゴミを自動収集するクリーンベースが付属。ハイエンドの「ルンバ コンボ j9+」では、家具キャビネットのようなフロントオープン方式の新型クリーンベースによって、自動給水機能もサポートされた。
一方の「Klaara p7 Pro」は、一体成型ボディによるクローズド・キャプチャー技術と、汚染物質を99.98%除去できる3段階フィルターシステムにより、従来製品にはない高いAQI(空気質指数)を達成。「Klaara p7 Pro」のある部屋にルンバが入ると連動して床も空気もきれいにするスマートさも備える。
消費者の高機能指向に即した新ルンバ j9 シリーズ
新ルンバ4機種は、すべて高性能・高付加価値モデルですが、このレンジのモデルを充実させた理由は何でしょうか?
アングル氏:ロボット掃除機は安価なモデルの市場が成長しつつ、ハイスペックモデルの需要拡大も加速しています。ルンバ j9シリーズは後者に向けたラインアップですが、低価格帯のモデルも重視しており、最廉価モデルのルンバ i2は、この半年間に日本で大きな成功を収めました。一方で、ハイスペックモデルでは、革新的な機能の恩恵を実感していただけます。
新ラインアップは最大2倍の吸引力を持ち、「ルンバ コンボ j9+」は自動給水機能も備えます。こうした仕様を組み込むうえで直面した問題はありましたか?
アングル氏:最高レベルの性能実現のためにダブルパワーのモーターを搭載しましたが、放熱効率を高めることがチャレンジングでした。また、「ルンバ コンボ j9+」の本体サイズや基本デザインは、j9シリーズの他モデルと同じです。機能が増えても、性能や信頼性は落とすことなく、全機構をエレガントにまとめることに力を注ぎました。
5年来の構想を現実化した空気清浄機「Klaara p7 Pro」
新事業展開として、インテリジェントな空気清浄機を選ばれたのは何故ですか?
アングル氏:コロナ禍や花粉症の重症化など、現在の地球環境において空気の質を高めることはとても重要で、成長の可能性がある分野です。実は、過去の空気清浄機のブランドの期待値調査で、アイロボットは3位でした。そんな製品は作っていなかったのにです(笑)。それだけ期待が高いことを受けて、参入への意欲がさらに高まりました。スマートで健康的な住環境を目指すアイロボットにとって、「Klaara p7 Pro」は5年に渡る開発の成果であり、次の大切なステップなのです。
開発プロジェクトに、香港理工大学のアンソニー・ロウ博士がアドバイザーとして参加された理由は何でしょうか?
アングル氏:ロウ博士は、粒子測定技術や室内空気質に関する世界的な権威です。また、彼自身も、ルンバなどを通じて私たちの技術力の高さを知っていました。そのため、最高の空気清浄機を開発するという共通の目的に向かって意気投合したのです。
ファンがフィルターの後にある空気清浄機が多い中で、「Klaara p7 Pro」ではフィルターの前にあたる底部に位置しています。この構造のメリットは何でしょうか?
アングル氏:既存の空気清浄機の弱点は、筐体パネルの隙間によって空清能力が低下し、動作音も大きいことです。音が大きいために、せっかく購入した製品が使われなくなることもあります。「Klaara p7 Pro」では、継ぎ目のない筐体の底部から、3層一体構造の大容量フィルターに対して大径のファンを使って空気を送り込むことで、漏れのないフィルタリングを実現しました。通常はファンが10%程度のパワーで十分な性能を発揮するので音も静かですし、空気質の常時モニタリングで家の状態や住人のライフスタイルを把握して、ベストなタイミングでパワフルな空清機能を発揮します。
「Klaara p7 Pro」は、御社で初めて「プロ」の名を冠しており、3色あるカラーバリエーションうちのグリーングレーも、従来にない色ですね。
アングル氏:プロの名を冠したのは、最高の空気清浄機を作ったことを製品名でも示したかったからです。医療機関や大型の施設でも十分対応できる機能を備えています。また、アイロボットのコーポーレートカラーでもあるグリーンを初めて採用したのは、「Klaara p7 Pro」はサイズが大きいため、中立的でありながら、スタイリッシュなセンスを感じさせる色が欲しかったのです。さまざまなインテリアとマッチするように、少しくすみがかかった色調にしています。
日本市場の重要性とアイロボットのこれから
「ルンバ j9+SD」は日本市場のみの展開で、「Klaara p7 Pro」は世界に先駆けて日本で発表され、先行販売もスタートします。アイロボットにとって日本とは、どのような存在でしょうか?
アングル氏:私たちにとって、日本は北米に次いで大きな市場です。また、過去の経験から、日本市場で成功することができれば、他のどの市場でも通用することがわかっています。そのため、日本市場は戦略的にとても重要なのです。たとえば、3年前に日本の消費者をリサーチした結果が、今回のルンバ コンボ j9+のカラーリングや、サイドテーブル的な機能を持たせたクリーンベース、そして、その天板の木調仕上げなどに反映されています。
また、iRobot OS 7.0の最大の特徴である「ダートディテクティブ」機能は、人が掃除をするのと同じような判断の下に清掃しますが、たとえばフローリングを水拭きする際に水分が多すぎれば床を痛めるかもしれませんし、タイル張りの風呂場では逆に水分が少ないときれいにならない可能性があります。そうした掃除の仕方においても繊細な日本人が満足できることを目指し、それが他国の消費者にとっても良い結果をもたらすのです。
では最後に、新たに参入した空気清浄機ビジネスを含めたアイロボットの今後への豊富と、日本のユーザーへのメッセージをお願いします。
アングル氏:私たちが新たな市場に参入するのは、その市場でトッププレイヤーの1つになれると確信してのことです。空気清浄機においても最高品質の製品を提供することを実践しており、「Klaara p7 Pro」は、その最初のステップだといえます。
私たちのすべての製品に共通するインテリジェントな機能性は、これからも家電製品の利便性とパフォーマンスを向上させていきますし、空気清浄機で培ったアイデアが他の製品をさらに進化させる可能性もありますので、ぜひ期待していてください。
Colin Angle(コリン・アングル)
アイロボット創業者、CEO。3歳で自宅のトイレを修理した逸話を持ち、エンジニアでありながらスポーツやアウトドアも大好きな万能選手。マサチューセッツ工科大学で電気工学とコンピュータ科学の学位を取得後、1990年にアイロボットを設立し現在に至る。
https://www.irobot-jp.com/klaara/
https://www.irobot-jp.com/roombacombo/
取材・文/大谷和利 撮影/田中麻以(小学館)