■連載/阿部純子のトレンド探検隊
葬儀を終えた約3割の人が心残りがあり、半数近い人がもう一度お別れの機会を求めている
葬儀業界では近年、家族形態の変化や近所付き合いの希薄化など、ライフスタイルの変化により葬儀の小規模化・簡素化が進んでいる。さらにここ数年は、コロナ禍により会食の自粛や県をまたぐ移動の制限、三密の回避、高齢者への配慮などから、葬儀の小規模化や簡素化がさらに加速している。
その結果、喪主や家族、参列できなかった人から、「心残りや後悔を感じる」という声が広がっている。仏事・供養に関する商品やサービスを提供する業界大手の「メモリアルアートの大野屋」では、この「弔い不足」を葬儀業界が抱える新たな問題であると捉え、20歳~99歳の、葬儀経験者300名・非参列者100名の計400名を対象に実態調査を昨年行った。
「後悔や心残りに感じていることはあるか」の質問に「ある」は29.3%で、特にコロナ禍で葬儀を実施した人では36.1%と高い結果に。喪主・喪主の家族では30.6%が「ある」と回答しており、葬儀を行ったにも関わらず後悔や心残りは持った人が多いことがわかった。
「非参列者」においては38%に上り、喪主・家族よりも高い結果に。「親しい相手柄だったのに、最後のお別れができなかった」「亡くなったことを後から知ってショックを受けた」といった非参列者の声や、「後から亡くなったことを知った故人の友人から、怒りの連絡があり戸惑った」という遺族もいた。
「後悔や心残りがある」とした人の45.3%が「もう一度お別れする機会が欲しい」と回答。特に、葬儀に参列できなかった人は、55.2%が望んでいることがわかった。
「高齢化社会が進み、葬儀の増加に伴い法事も増えています。しかし法事に関しても、家族葬と同様に周囲に気遣い、納骨を済ませた旨の書状を送るだけで、終えてしまうケースが非常に多くなっています。
葬儀の時間が短くて十分にお別れができず心の整理がつかない、経験や知識の不足で葬儀の選択基準がなかった、散骨したら心の拠り所がなくなってしまったなど遺族の心残りや供養方法のミスマッチ、さらに参列できなかった親族や友人・知人が感じる想いを、私たちは『弔い不足』と定義しました。
そこで様々な状況でやむを得ず弔い不足になってしまったお客様に、法事という機会を介して、弔い不足を解消できる業界初の弔い直しに注目した新サービス『私とみんなの法事サービス~リビング法事~』(以下、リビング法事)を、当社で葬儀を施行されたお客様を対象に開始いたしました。
葬儀の際にできなかった落ち着いた会食や、葬儀にはお呼びできなかった友人・知人にもお集まりいただき、みなさんが語るエピソードや思い出話によって家族が改めて故人のことを振り返ることができます。
本サービスは、宗教者による読経など従来の法事も可能ですが、宗教行事にはとらわれず、故人との思い出や抱えている気持ちを思い思いに語り合う弔い直しの場として、故人を偲ぶ場をご提供できればと思っております」(メモリアルアートの大野屋 取締役執行役員 セレモ事業本部長 横田智一氏)
「リビング法事」は、小平、横浜エリアのメモリアルアートの大野屋で、葬儀施行した人が対象。同社の家族葬専用式場「フューネラルリビング」(小平・横浜・多摩は来年開業予定)にて実施する。自宅やホテルといった別の会場でも対応は可能。
貸切の会場になるため、周りを気にすることなく、ゆっくりと故人と向き合い、ゆかりのある人同士で故人についての思い出を語り合うことができる。
フューネラルリビング小平での実施で、食事なしの場合は6万円~、食事ありの場合は10万円~。食事についてはビュッフェスタイル、お弁当スタイルなど様々な形態に対応しており、1人前3000円後半から可能。ブーケ祭壇に関しては花の種類によって異なり8万円から対応する。