AmazonのAWS、MicrosoftのAzureとともに、3大クラウドの一角を担う「Google Cloud」。データ解析、機械学習など幅広いサービス群が多くの企業に活用されている。今話題の生成AIのビジネス活用にも注目が集まっている。
ソリューション&テクノロジー部門
統括技術本部長
寳野雄太さん
企業向けの生成AIサービスを提供開始
「Google Cloud」は、Googleが自社で活用している様々なシステムを、企業向けに提供するサービス。最近では、生成AIの「Bard」でも使用されている、大規模言語モデル「PaLM 2」などを用いた、システムの提供も発表されている。8月には日本の企業に向けて、生成AI活用の事例やポイントを紹介するイベント「Generative AI Summit」も開催された。
その基調講演では、コンシューマー、エンタープライズそれぞれに、生成AIでできることのユースケースを紹介。またネガティブなインプット、アウトプットを自動検知するなど、責任あるAIのための取り組みも紹介された。
ソリューション&テクノロジー部門で統括技術本部長を務める寳野雄太さんは「生成AIの基盤モデルを活用することで、企業は顧客に対して新しいユーザー体験を提供できるほか、あらゆるデータを価値に変えられる」と説明。3つのユースケースをもとに、生成AIでできることを紹介した。
新しいユーザー体験の例に挙げられたのは、とある自転車メーカーのサイト。生成AIをチャットボットと連携することで、専門知識を用いた商品選びのアドバイスをしたり、おすすめの商品を提案できる。さらにユーザーが持っている製品と、自社製品との比較表を自動作成して提示することも。自社の商品データベースやカタログにない質問にも、インターネット上の一般知識を用いて回答することが可能。やりとりの最後に、サマリーをまとめて表示するといったこともできる。
また企業内の様々な情報を生成AIに読み込むことで、業務の効率化も進められる。たとえば投資会社が、決算報告書やアニュアルレポートといった自社が管理する膨大な資料を生成AIに読み込めば、必要な情報をより簡単に引き出せるようになるだけでなく、引用元の資料も提示できる。
さらに生成AIはテキストだけでなく、様々な種類のデータを関連づけて処理する「マルチモーダル」にも対応する。例えば、ECサイトで数多くの商品を扱う企業では、画像をAIに読み込ませるだけで、AIが商品特徴を理解して自動で分類やタグ付けが可能に。画像データをより有意義に活用できるというわけだ。
Google Cloudでは今後、無償のトレーニングの提供をはじめ、様々なプログラムを通じて、企業の生成AIの活用やシステム開発をサポートしていく考えだ。
Google Cloudにおける生成AI活用のユースケース
新たなユーザー体験の提供
ユーザーとのコミュニケーションに生成AIを活用。自社データからだけでなく、インターネット上のデータから一般的な質問にも答えられる。文章だけでなく画像の中身も理解して回答できる。
自社データ活用で業務を効率化
自社データを生成AIに取り込むことで、情報を素早く取り出せるようになり、業務の効率化につながる。前後の文脈を理解した回答や、引用元の資料を表示することもできる。
あらゆるデータから情報を取得
画像や動画、音声といったデータからも情報を読み取り、回答することができる。撮影した写真から、様々なキャラクターがファッションについてアドバイスするデモも紹介されていた。
責任あるAIのための取り組み
ネガティブな質問がされると、システムがそれを検知するデモも。どのようにアウトプットするかを、企業側がカスタムすることも可能。インプット、アウトプット両方をフィルタリングできる。