3. 所有者不明土地管理命令が発令されるとどうなる?
裁判所が所有者不明土地管理命令を発令すると、「所有者不明土地管理人」が土地の管理を開始します。
所有者不明土地管理人は原則として、土地の保存行為および土地の性質を変えない範囲内での利用・改良行為のみを行います。
ただし、裁判所の許可を得れば、土地の性質の変更を伴う利用・改良行為(例:地目の変更など)や、処分行為(例:土地の売却など)をすることも認められます(民法264条の3)。
土地の状態に応じて、所有者不明土地管理人に必要な権限を与えることで、利害関係人が不利益を被らないようにし、かつ土地の利用を促進することが所有者不明土地管理制度の目的です。
4. 所有者不明土地管理制度の利用手続き
所有者不明土地管理制度を利用するためには、対象となる土地の所在地を管轄する地方裁判所に申立てを行う必要があります(非訟事件手続法90条1項)。
裁判所に対する申立ての際には、申立書のほか、土地に関するさまざまな添付書類が必要です。必要書類等の詳細については、裁判所の資料をご参照ください。
申立てを受けた裁判所は、提出された書類を確認し、所有者不明土地管理命令の要件を満たしているかどうか審査します。必要に応じて、申立人などの審問(裁判所での質問)が行われることもあります。
要件が満たされている場合には、裁判所は所有者不明土地管理命令を発令し、対象土地は所有者不明土地管理人の管理下に置かれます。
5. まとめ
特に長年利用されていない土地を相続した場合には、権利関係がよく分からない状態になっているケースが少なくありません。このような場合には、相続土地国庫帰属制度や所有者不明土地管理制度を活用して、適切な形で土地の利用・管理・処分などを行いましょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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