クレカ未所持の地方在住者
正直、使い方に関してはあまりに簡単過ぎてこれ以上書くことはないのだが、ともかく高速バスネットでPayPayやau PAYを利用できるようになったという事実は知っておいて損はない。
これは誰に対して最大の恩恵を与えるかというと、「クレカを持っていない地方在住者」ではないかと思う。
「今日びクレカも持ってない人なんか多くない」と言われそうだが、それは大都市圏の発想である。地方に行けばクレカもデビットカードも持っておらず、あるのは地方銀行か信用金庫の預金口座のみという人も。しかしこれは言い換えれば、それだけ地銀と信金の影響力が日本では大きいということだ。
なぜこのような話をするのか。それはPayPayが今年7月から全国241の信金の口座と紐付けできるようになったからだ。PayPayといえば「自社発行以外のクレカの締め出し」が話題になってしまったが、その傍らでこのような施策も行われていたことを書かなければフェアとは言えない。
静岡市でのPayPayキャンペーンは、まさにこのアップデートに助けられたと言える。もしもPayPayと紐付けできる金融機関が未だ都市銀行のみに留まっていたとしたら、あそこまでのセンセーショナルを巻き起こしてはいなかったのではないか。
そして、高速バスネットに関しても「地銀・信金の口座からPayPayに残高を移動させてバスの予約をする」ということが可能なのだ。ある種のユニバーサルサービスが、こんなところで実現している。
「旅行の在り方」が変化する?
「QRコード決済のポイントを旅行のために活用できる」という点も大きいだろう。
たとえば、静岡市から東京のバスタ新宿までは割引がなければ片道3,000円。このくらいなら、日頃からキャンペーンも利用しつつ頑張って貯めていけば割と早く到達できる額ではないか。高速バスネットがコード決済に対応してくれたことにより、「ポイントの使い道」が格段に広がったのだ。
旅行の在り方自体も変わるかもしれない。
つまり航空会社のマイレージサービスのように、「○○ポイントを貯めて旅行に出かける」という共通認識が確立するかもしれないということだ。これは旅行者を受け入れる側にとっても恩恵に溢れた話で、今後は「ポイント旅行者」を想定したキャンペーンも実施されるのではないか。
そしてこの現象は、各決済サービス間で繰り広げられている「ポイント戦争」にさらなる燃料を投下するものでもある。
【参考】
高速バスネット
https://www.kousokubus.net/BusRsv/ja/
取材・文/澤田真一