ストップ安・ストップ高は、株価の急騰や急落を一定限度内に抑えるための株価制限制度です。ある銘柄がストップ安またはストップ高となった場合、取引は値幅制限内でしか行えなくなります。ストップ安・ストップ高の仕組みや、起きた場合の対処法を確認しましょう。
ストップ安・ストップ高とは
日本の株式市場は、1日の国内株の株価変動について制限を設けています。これを前提に、ストップ安・ストップ高はどのようなものなのか確認しましょう。
ストップ安は下限まで株価が下落すること
ストップ安とは、株価変動が1日の限度額の下限に達した状態です。ストップ安となった銘柄は、その日はストップ安の価格以下での取引は成立しません。
ストップ安が起きるのは、投資家からの売り注文が殺到したケースです。企業に関するネガティブなニュースが報じられた場合、ストップ安が発生しやすくなります。
例えば『企業の大幅な業績悪化が見込まれる』『決算発表の数字が悪かった』『企業のスキャンダルが発覚した』といった場合、その銘柄の売りが増える傾向です。このほか、世界情勢を左右するニュースが入った際や、買いが入りすぎた翌日などにもストップ安が起こるケースがあります。
ストップ高は上限まで株価が上昇すること
ストップ高とは、株価変動が1日の限度額の上限に達した状態です。ストップ高となった場合には、その銘柄はストップ高の価格以上では取引できなくなります。
ストップ高となるのは、投資家からの買い注文が集中した場合です。企業にとってポジティブなニュースが流れると、ストップ高が発生しやすくなります。
例えばある銘柄について、『大型取引が発表された』『業績の上方修正が行われた』『決算の数字が予想外によかった』といった場合、多くの投資家がその銘柄を購入したいと考えるでしょう。その結果、株価が上昇を続ければ、ストップ高となります。
ストップ安・ストップ高の目的
ストップ安・ストップ高というルールが設けられているのは、投資家を保護する、市場の安定性を保つという目的からです。
株価が急落・急騰すると、投資家の恐怖心や不安・焦りが刺激されます。パニック的な売り・買いが起こりやすくなり、大きな損失を被る投資家が出てくる可能性が高まるのです。ストップ安・ストップ高を設定することは、投資家の利益を守ることにつながります。
またストップ安・ストップ高が発動すれば、それらを下回ったり上回ったりする株価では取引できません。取引量を抑えることで市場の熱を冷ます結果にもつながり、市場の安定性を維持する上でも有益です。
値幅制限とは
ストップ安・ストップ高の基準となるのが『値幅制限』です。どのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
1日の売買の値動きの幅を一定に制限
値幅制限とは、1日の株価変動を一定範囲内に抑えるために設けられた制限ルールです。許容される値幅については、『基準値段』に基づき東京証券取引所が定めています。
基準値段となるのは、前日の終値や最終気配値段(買い方の『買いたい値段』または売り方の『売りたい値段』)です。多くの場合において、ストップ安・ストップ高は、基準値段の上下約15〜30%の間で設定されます。
値幅制限の基準値段
国内株式の売買における基準値段と値幅制限は、以下の通りです。
基準値段 | 値幅制限(上下) |
100円未満 | 30円 |
200円未満 | 50円 |
500円未満 | 80円 |
700 円未満 | 100円 |
1,000円未満 | 150円 |
5,000円未満 | 700円 |
1万円未満 | 1,500円 |
3万円未満 | 5,000円 |
5万円未満 | 7,000円 |
10万円未満 | 1万5,000円 |
… | |
5,000万円以上 | 1,000万円 |
ただし値幅制限は、売買の状況によって変更される場合があります。例えば国内株について、2営業日連続で以下のいずれかの状態となったケースです。
- ストップ高(安)となり、かつ、ストップ配分も行われず売買高が0株
- 売買高が0株のまま午後立会終了を迎え、午後立会終了時に限りストップ高(安)で売買が成立し、かつ、ストップ高(安)に買(売)呼値の残数がある
すなわち『ストップ安またはストップ高となり、株の売買が成立しない状態』あるいは『上限または下限価格で売買が成立したが、同じ価格の売りまたは買いの注文が残っている状態』が2営業日続いた国内株については、3営業日目から値幅制限が拡大されます。
東京証券取引所が定める値幅制限の拡大幅は、元の『4倍』です。ただし拡大されるのは、ストップ安の場合は値幅制限の下限のみ、ストップ高の場合は上限のみとなります。
ストップ安・ストップ高への対処法
ストップ安・ストップ高が起きているタイミングこそ、投資家には冷静な判断が必要です。ストップ安・ストップ高への対処法を確認しましょう。
ストップ安になった場合
ストップ安になった銘柄を所有している場合、損失の恐怖から、すぐに手放したいと慌ててしまうかもしれません。しかし急落の原因が一時的なものなのであれば、株価は再び上昇するケースもあります。市場の雰囲気やそのときの感情に流されて、安易な判断をしないことが大切です。
そもそもストップ安になったとしても、売却するまで損失は確定しません。『今後もこの企業を応援したい』『また復調する』と思える場合は、塩漬け覚悟でホールドを続けるのも一つの方法です。
また株の買い場を探していた人にとっては、ストップ安は絶好のチャンスとなります。勢いで買い注文を入れたくなるところではあるものの、まずは状況を見ることが必須です。
投資には『落ちてくるナイフはつかむな』という格言があります。急落する株は、底を打ったと思える状態になってから購入しましょう。
ストップ高になった場合
ストップ高になった株式を所有している場合は、戦略的な売却が必要です。安易に全ての株を売却すると、後日さらに高値をつける可能性があります。まずは企業の経営環境や財務状況の分析を徹底し、ストップ高の原因を調べましょう。
株高が一時的なトレンドに過ぎないと思えるのであれば、早めに手じまいした方が利益を得やすくなります。一方で株価の上昇が企業の経営実態を反映するものなら、上昇トレンドは今後も続く可能性があるでしょう。ホールドを続け、さらなる値上がりを待つのも一つの手です。
またストップ高の株式を購入したい場合も、勢いで購入するのは控えましょう。ストップ高の銘柄を慌てて購入すると、高づかみになるケースが少なくありません。『買うべき要素』が明確になった時点で、買い注文を出すのがよいでしょう。
売買成立方式の種類も紹介
売買成立方式には『ザラバ方式』『板寄せ方式』や、やや特殊な『ストップ配分』があります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
ザラバ方式
ザラバとは、前場(午前の取引)・後場(午後の取引)それぞれの『寄り付き(取引の初めに成立する売買)』から『引け(取引の最後に成立する売買)』までの間のことです。この時間帯に実施される売買成立方式が『ザラバ方式』と呼ばれます。
ザラバ方式は、発注済みの売り・買い注文と新規の売り・買い注文の価格が合致すれば、その時点で売買成立となる仕組みです。価格を合致させる際には、『価格優先』『時間優先』の原則が適用されます。
例えば、買い注文の場合はより高い金額が、売り注文の場合はより低い金額の注文が優先される決まりです。また同じ金額が提示された場合は、より早く買いまたは売りの注文を出した方から売買が成立します。
板寄せ方式
板寄せ方式は、主に『寄り付き』や『引け(大引け)』などにおいて、始値・終値を付けるときに使われる売買成立方式です。売買注文を全て『板』と呼ばれる注文控えに並べて付け合わせ、最も多くの売買が成立する価格を決定します。
例えば板寄せ方式で始値を決定する際は、条件に合わせて売買注文を合致させていく流れです。具体的には、以下の三つの条件を全てクリアして、最適な株価が決定されます。
- 成行(値段を指定しない注文方式)の売り注文・買い注文を全て約定(売買成立)させる
- 約定値段より高い買い注文と、約定値段より低い売り注文を約定させる
- 約定値段において、売り注文または買い注文のいずれか一方の全てを約定させる
注文の付け合わせによって全ての売買注文が約定した場合、その価格が『始値』となります。
ストップ配分
ストップ配分は、ストップ安またはストップ高が発生している場合に選択される売買成立方式です。
ストップ配分が選択されると、ストップ安またはストップ高の価格での注文数が証券会社ごとに合算されます。合算の結果、その株価での発注が多い証券会社から、優先的に1単位ずつの株式が割り当てられる仕組みです。
なお、割り当てられた株式をどのように配分するかについては、特に決まりはありません。割り当てを受けた証券会社は、自社のルールに従って株式を投資家に分配します。
構成/編集部