コンパクトなスマートフォンがハイエンドである意義はあるのか
ここまでの話を振り返ると、携帯電話としての基本的な機能は、コンパクトなデザインのほうが使いやすく、動画視聴やゲームといったコンテンツを楽しむのであれば、大画面のほうが有用というのが、個人的な見解。
しかし、Zenfone 10は現行のハイエンドチップセットであるSnapdragon 8 Gen 2を搭載した、れっきとしたハイエンドスマートフォン。コンパクトでありながら、ヘビーなアプリもサクサクと動かせる、少し矛盾した端末ともいえます。では、コンパクトな筐体に、ハイエンドの性能を搭載する意義はあるのでしょうか。
もちろん、5.9インチのディスプレイでも、動画や電子書籍はしっかりと見ることができます。大画面モデルと比較すると、若干迫力に欠ける印象もありますが、慣れればそこまで不満に思うことはありません。
個人的に、Zenfone 10がハイエンドの性能を持っている最大の利点は、ゲームプレイにあると感じています。特にスマートフォン本体を横に持ってプレイする、FPSゲームやリズムゲームをプレイする際には、「持ちやすい」「長時間プレイしていても疲れにくい」といった特徴を存分に活かすことができます。
ASUSのスマートフォンとしては、Zenfoneシリーズのほかに、ゲーミングスマートフォンの「ROG Phone」シリーズがラインアップされており、Zenfone 10にも機能、性能の一部を踏襲。ゲームプレイ時の細かな設定ができる「Game Genie」機能や、144Hzリフレッシュレートに対応したディスプレイ、遅延の少ない有線イヤホンとの接続ができる3.5mmイヤホンジャックの搭載などは、ゲームを快適にプレイするための仕様ともいえるでしょう。
6軸スタビライザー2.0搭載のカメラは「夜景撮影」に強みを発揮
Zenfone 10に搭載されているアウトカメラは、5000万画素広角、1300万画素超広角の2眼構成、インカメラは3200万画素のシングルレンズとなります。ハイエンドスマートフォンとして見ると、望遠レンズがなく、画素数も極端に高いわけではないため、カメラ性能重視のユーザーには、手放しにおすすめできる端末とはいいにくいというのが本音です。
とはいえ、Zenfoneならではの特徴もしっかり搭載。特に印象が強いのが、Zenfone 9より広角カメラに搭載されていた6軸スタビライザーでしょう。Zenfone 10では、より補正が強くなった、「6軸スタビライザー2.0」という、アップデート版が搭載されており、電子式手ブレ補正と合わせた、強力な補正がかけられるように進化しています。
6軸スタビライザーは主に手ブレを補正するためのものとなっており、動く被写体をサッと撮影したいシーンや、動画撮影時などに有用。ハイエンドスマートフォンということもあり、画像処理もスムーズなので、撮影体験は良好です。
個人的に、特に6軸スタビライザーの力が発揮されていると感じたのが、夜景といった暗所での撮影。夜景モードでは、多くの光を集めながらシャッターを切るため、シャッターボタンを押してから数秒間は位置を固定しておく必要があります。この数秒の間にスマートフォンが動いてしまうと、ピントの合っていない、ぼけた写真になってしまうことがあります。
スマートフォン本体を手に持って撮影をする場合、完全に固定しておくのは至難の業。夜景モードを使って写真を撮ったけど、ピントがいまいち合わないという経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。Zenfone 10の場合、ちょっとした手ブレであれば、6軸スタビライザーがカバーしてくれるため、夜景モードでも手軽に、ピントの合った写真が撮影できるのが魅力に感じています。もちろん、ナイトレール撮影やタイムラプス撮影をするのであれば、三脚やジンバルを用いるのがおすすめですが、「暗所でもサッと撮影したい」というシーンにはぴったりです。
コンパクト×ハイエンドのZenfone 10は〝刺さる人には刺さる〟スマホ
5.9インチのコンパクトディスプレイに、最新ハイエンドチップセットや6軸スタビライザーを搭載したZenfone 10。携帯性や操作性に優れ、電話やメールといった、携帯電話の基本機能が使いやすい端末として見ると、幅広い層におすすめできる端末です。
とはいえ、ハイエンドスマートフォンであることを踏まえると、販売価格がどうしても気になるところ。執筆時点で価格は公表されていないものの、10万円はくだらないと考えると、上述の〝携帯電話的な使い方が出来ればいい〟というライトユーザーの場合、お財布と要相談となります。もちろん、アプリの起動がスムーズといった利点はあるので、懐事情さえ許せば、十分ありです。
一方、動画視聴や電子書籍の閲覧といったコンテンツを楽しみたいユーザーにとってみれば、大画面の優位性も捨てきれないところ。今回、Zenfone 10を実際に試した所感としては、〝基本機能からゲームまで〟をヘビーに、長時間楽しみたい人向けの端末といったところです。
筆者のように手のサイズが小さい人や、長時間スマートフォンでゲームをプレイしたい人には、大手を振っておすすめしたい端末ではあるものの、狭いニーズであるのも事実でしょう。
〝刺さる人には刺さる〟数少ないコンセプトを採用していることもあり、実際に使ってみると「Zenfone 10以外考えられない」くらいピタッと来る人もいるはずです。まずは、量販店などで一度手に持ち、軽さと扱いやすさを感じてみてください。
取材・文/佐藤文彦