普段何気なく、スマートフォンやタブレットなどで使うデータ通信は、各通信キャリアが基地局を建て、通信エリアを整備することで成り立っています。ドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクの通信3キャリアでは、4G LTEエリアの「人口カバー率」が99.9%を突破しており、普段の生活圏では、ほとんどのシーンでデータ通信ができるようになっています。
しかし、日本は山間部や島が多く可住地面積率は約33%と低い国であるため、データ通信の「面積カバー率」は約60%にとどまっているのが現状。居住地を優先して整備していることやコスト面から、日本全土をカバーするのは至難の業といえます。
そこでKDDIは、イーロン・マスク氏が代表を務める「スペースX」と新たな業務提携を結び、スマートフォンと衛星を直接繋ぎ、通信ができるサービスの展望を発表。サービス開始は2024年内を目途としていますが、実現すれば、〝日本から圏外がなくなる〟ことも夢物語ではなくなるかもしれません。
「スペースX」ってどんな会社?
KDDIとの事業内容について触れる前に、簡単に「スペースX」について触れておきましょう。スペースXは、正式名称「スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ」というアメリカの企業で、2002年にイーロン・マスク氏によって設立された航空宇宙メーカーを指します。民間企業としては初めて、有人宇宙船を国際宇宙ステーションに到達させたことでも知られています。
今回、KDDIとスペースXの協業で利用するのは、スペースX内の「スターリンク」という、衛星通信サービス。飛ばしたロケットからカード式の衛星を宇宙空間に撒き、スマートフォンと衛星を直接通信できるようにするという事業となります。
ロケットからカード式の衛星を宇宙空間に撒くことで、地上のスマートフォンと直接通信をする
スペースXとしては、執筆時点(2023年8月下旬)で5000機近いロケットを打ち上げており、日本を除くと5か国の通信キャリアに対してすでに協業体制にあるそう。なお、アジア圏では、日本が初めて、衛星通信事業を行うパートナーとなります。