ノープランで島旅ツーリング
ぶらり旅を志してナビアプリ&事前の計画を禁止しながらも、「見つけた橋は全部渡る」をモットーに広島県の海沿いを西に向けて旅する本レポート。
前回の記事では国道185号線から安芸灘(あきなだ)大橋へと渡り、ついに安芸灘とびしま海道へと突入しました。橋でつながる7つの島の制覇を目指して今日も愛車クロスカブのアクセルを回します…!
前編はこちら
そうだ、野宿をしよう!
2本目の橋、蒲刈(かまがり)大橋を渡ろうとした時のこと。ふと時計を見ると、もうすぐ17時になろうとしていることに気が付きました。太陽はすでに西へ傾いて、光がオレンジがかっています。
「もうすぐ日が暮れちゃうのか。…そうだ、野宿をしよう!」
宿泊場所だけは困らないようにと事前にチェックをしておいた内容によると、最後の島である岡村島の北端に小さな野営場があるのです。陽が暮れる前の設営完了を目標に、この日は観光を取りやめて一気に島を進むことにしました。
安芸灘とびしま海道の島は一周25km以下の小さな島ばかり。橋を降りたらすぐに次の橋への案内標識がたっているため迷うことがなく、ノープラン旅でも焦らずに済むのは有難いです…!
おかげで18時半には野営場に着き、ササッとテントを張ることができました。
同日に宿泊していたのは、身軽で慣れた様子の自転車とバイクの旅人が1人ずつ。余談ですが、筆者も含めて全員が午後9時にテントに入って就寝準備をするという少しストイックな行動をとっていたのは、(キャンプではなく)野営ならではの出来事なのかもしれません。
野営場の前には海が広がり、ちょうど夕陽が沈んでいくところが見えます。瀬戸内海は波が少なく穏やか。連なる島々で水平線は見えません。
ゆっくりと島の後ろへと隠れていくオレンジ色の太陽を眺めていると、自分の心までメラメラと炎があがっているような気がしてなんだか興奮します。
ついはしゃいでたくさん写真を撮っているうち、いつの間にか汗だくになってしまいました。
「今日はお風呂に入れないのに!」
慌てましたが後の祭り。念のために…と持って来ておいた汗拭きシートが大活躍の夜でした。
江戸時代の街並みを楽しむ
翌朝、目が覚めたのは午前7時。テントから出ると、すぐ目の前で釣り人が釣竿を投げているところでした。
驚くべきことに、昨晩同じ野営場に泊まった2人は既に撤収を終えて姿を消しています。
「出遅れちゃったかもしれないな」
ボヤきましたが、朝から資料館などを見て回りたいため、早すぎる時間に出発しても意味がありません。ストレッチをして心を落ち着かせたら朝ご飯のパンを食べ、歯磨きをしたら撤収を済ませ、出発したのは午前8時半のことでした。
まず向かったのは、昨日気になりつつも通り過ぎていた大崎下島。江戸時代から昭和初期にかけて瀬戸内海交通の中継港として栄えた島で、中でも御手洗町並み保存地区には古い建物がたくさん残っています。
クロスカブのエンジンを一旦オフにして押しながら路地に入ると、木造の建物が並び、江戸や昭和へタイムスリップしたような街並みが広がっていました。
この付近はもともと土地が小さく無人だったのですが、江戸時代より数度にわけて埋め立てが進められ、寄港する船が増えて発展していったのだそう。資料館には、島のすぐ目の前で船がひしめき合っているモノクロ写真がありました。
大崎下島での取引は宮島、尾道に次ぐ規模になり、寄港した船の中にはオランダ使節や琉球通信使、シーボルトやケンペルといった歴史に名を遺す偉人達もいたのだそうです。
これだけ建物や街並みがキレイに残っているのに、朝ということもあってか人通りはまばらです。1時間ほど散歩して、穴場的な観光地を堪能しました。
ミカン畑を駆け抜けて!
瀬戸内海の島々を走っていると、店や畑といった目的地になりそうなものが何もない、急な斜面のふもとにトラックがポツンと停めてある様子をよく見かけます。
この日もオレンジ色のタンクを積んだトラックが海沿いの道に停められていて、不思議に思ってクロスカブを降りて覗きに来ました。
そこにあったのは、斜面に沿って設置されたモノレール。ちょうど休憩中だったオーナーの方にお話をうかがうと、この上にはミカン畑が広がっているのだそうです。
「ミカンは水はけが大事じゃけん斜面で作るんよ。平らな土地でも作れんことはないけど、全然甘くならんのよ」
付近には、山へ向かって伸びる狭くて急な上り坂が何本もあります。そのうちの1本を走ってみると、聞いていた通り。ぐんぐんと高度が上がった先でミカン畑に囲まれました。海が見える絶景ロードに、思わず「ヤッホー!」とヘルメットの中で叫びます。
夏なので、ミカンは未熟で葉っぱとソックリな緑色。これから冬へ向けて甘く美味しく育っていくのだそうです。
ミカン畑への道は車1台分の幅しかなく、急激な坂道やカーブ、行き止まりもたくさんありました。どんな場所でも身軽に走れるクロスカブのおかげで、Uターンや方向転換もラクラク。島旅を満喫するには小型バイクが一番だと改めて実感しました。