ソニーは、高画質LEDディスプレイシステム「Crystal LED」の新製品として、バーチャルプロダクションによる映像制作向けに最適化した「VERONA(ベローナ)」を2024年春に発売すると発表した。
ラインナップはBrompton対応モデルの「ZRD-VP 15EB」(ピッチサイズ1.56mm)と「ZRD-VP23EB」(ピッチサイズ2.31mm)、Megapixel対応モデルの「ZRD-VP15EM」(ピッチサイズ1.56mm)と「ZRD-VP23EM」(ピッチサイズ2.31mm)の計4機種。いずれも価格はオープン。
Crystal LEDは、自由なサイズと形状で大画面を構築でき、臨場感のある高精細な映像を映し出すことができる高画質LEDディスプレイ。今回発表された「VERONA」は、大画面LEDディスプレイに映し出した3D背景映像でスタジオ内に仮想空間を創り出し、その中で人物など実在の被写体の撮影と合成を同時に行なう映像制作技術バーチャルプロダクション向けの製品だ。
そんな「VERONA」の最大の特徴は、リアルな仮想空間を作り出す高画質性能。新開発した独自のディープブラック&低反射コーティング技術により、深く引き締まった黒の表現と隣接するLEDディスプレイやスタジオ用照明機材からの外光によるコントラスト低下を大幅に低減。
同時に、内側からのLED素子の光もその特性を損ねることなく透過することで、1,500cd/m2(※1)の高輝度を実現しているほか、デジタルシネマ向け規格DCI-P3を97%以上(※1)をカバーする広色域に対応しており、臨場感と没入感のある映像でリアルな仮想空間を創り出すことができるのだ。
しかも、高性能ドライバーICの採用により、業界最高水準の7,680Hzのリフレッシュレートを実現。これにより、スキャンライン(水平方向の黒い線)を低減し、高品質なバーチャルプロダクションを撮影することが可能となるという。
↑VERONA (ディープブラック&低反射コーティングあり)
さらに、映像制作の効率化に貢献する簡単、迅速、高精度な設置性能も実現。数多くの撮影現場からの要望に応え新設計したディスプレイキャビネットは、特別な工具を使わなくてもディスプレイキャビネット同士をロックできるレバー式ロック機構や、正確な位置合わせが容易にできる位置決めピンなどの新しい機構を採用。作品や撮影シーン合わせて、ステージの大きさや構成を変更する際に、簡単、迅速、高精度な組み立てを可能にしている。
また、LEDモジュールの表面はコーティングにより保護されており、かつ設置時に隣接するディスプレイキャビネットがぶつかることによる破損を保護するエッジプロテクションやスライドイン機構を搭載しているため、一般的なLEDと比較して、設置時のLEDモジュールの破損リスクを大幅に低減する。
バーチャルプロダクション用途では、ディスプレイキャビネットを積み上げた際の耐久性やカーブ/オーバル設置、撮影シーンに応じたLED壁の位置を変更できる吊り下げ設置など、高度な設置が必要とされるが、「VERONA」では、最大14台(高さ7m=キャビネット0.5m×14台)までスタッキングできるキャビネットの強度を高めているうえ、専用の角度調整ブロックを使用した機構を新たに採用し、高精度なカーブ設置が可能。フラットなディスプレイを実現する機構設計とZ軸調整機構も新搭載し、簡単で迅速なメンテナンスを可能にするクイックモジュール交換機能も採用した。
このほか、使い慣れた操作性で作業効率を維持できるディスプレイコントローラーを採用しているのも特徴。映像ソースを受信し複数のディスプレイキャビネットに映像を分配するディスプレイコントローラーには、バーチャルプロダクション業界で広く使われているBrompton Technology社製のTessera SX40(「ZRD-VP 15EB」「ZRD-VP23EB」用)と、Megapixel社のHELIOS (「ZRD-VP15EM」「ZRD-VP23EM」用)を使用することができる。
加えて、高効率の超微細LEDチップとソニーの電力制御技術を組み合わせることで、低消費電力化も実現。Bシリーズ「ZRD-B15A」とVERONA「ZRD-VP15EB」(キャリブレーション機能オン時)を比較した場合で、それぞれ最大輝度で算出した単位輝度当たりの電力効率(※2)を約27%向上させている。
※1 仕様は発表日時点の情報。最終仕様と異なる可能性がある。
※2 単位輝度当たりの電力効率とは、光源がある輝度を出すのに必要な電力量を示す。
関連情報
https://www.sony.jp/crystal-led/
構成/立原尚子