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世界で圧倒的シェアを誇る中国の車載電池メーカーと言えば?

2023.09.13

電気自動車ではアメリカ、中国、ドイツのメーカーが乱立しているが、その電気自動車の基幹部品では中国企業が圧倒的なシェアを誇っている。

国策で中国は電気自動車の先駆者に

中国国内では、「NEV規制」、「CAFC規制」を背景に電気自動車(以下EVという)が普及し、2023年上半期の中国の販売台数に占めるEVは、日本が全体の約2.38%の約5万台に対して、中国は約20.5%の約272万台となっている。特に都心部では、購入時補助金があったことやナンバーの発行数をガソリン車で制限されたことから、NEV車の普及率は40%、タクシーやバスでは100%となっている。

・NEV規制(新エネルギー車規制法)

NEVとは、EV・PHEV(プラグインハイブリッド車)・FCV(燃料電池車)の新エネルギー自動車のことをいう。中国では、そのNEV車を自動車メーカーや輸入業者は、一定率以上の数値目標を設定され、その数値を達成できなかった分は他の電気自動車専業メーカー等数値目標を上回るメーカーからクレジットを買い取る必要がある。そのため、ガソリン車の売上がどんなに多くても、NEV車の数値目標が達成できていなかった場合にはそのクレジット購入のため利益は下がることになる。逆に、電気自動車専業メーカーは薄利多売をしても、クレジッドを売ることで利益を確保することができてしまう。

中国政府の政策から、中国メーカーは電気自動車の販売台数を伸ばし、国内だけでなく世界でもシェアを伸ばしている。それとともに、電気自動車の基幹部品である車載電池においても中国企業がシェアを伸ばしている。

電気自動車は内燃機関を持たず、主要な部品は車を動かすためのモーターとそれに電気を供給する車載電池で、ガソリン車に比べると部品数も少なくシンプルなつくりだ。その分、電気自動車を選ぶときには、主に航続距離、デザイン、価格で選ばれるが、その車体価格は車載電池の価格が大きく影響を与えるため、低価格の車載電池である中国メーカーはその価格競争力が高い。その中で、中国の車載電池メーカーが世界の車載電池市場の6割強を占めている。

2大車載電池メーカー「CATL」と「BYD」

世界の車載電池市場の6割強を占めている中国企業で、特にCATLとBYDは2大メーカーであり、シェア1位のCATLは世界車載電池の36.8%を占め圧倒的なシェアを誇る。

■CATL(寧徳時代新能源科技・Contemporary Amperex Technology)

中国の福建省に本社を置く、世界最大手の車載電池メーカーであり、蓄電システムにおいても世界最大手だ。

中国・深セン市場に上場(銘柄コード:300750)しているが、日本人が日本から直接CATLの株式を買うことは現状難しい。

CATLは2011年に設立されたばかりだが、もとは、現在TDKの子会社であり、スマホなどに搭載される小型バッテリーを手掛けていたATL(香港アンプレックステクノロジー、1999年設立)の車載電池部門が独立したものだ。

電気自動車の基幹部品である車載電池を自前で用意できる自動車メーカーは少なく、中国国外でもテスラをはじめ、GM、フォルクスワーゲン、ボッシュ、ダイムラー・クライスラー、BMWなどから受注を受けている。

例えば、テスラの中国製モデル(モデル3・モデルY)にはCATL製の電池が搭載されている。モデル3はもともとパナソニック製の電池を搭載していたが、中国の上海でテスラの新工場稼働とともに中国電池メーカーのCATL製に変更された。CATLの電池の方が低コストであることから大幅に車体販売価格も値下げされた。

CATLの強みは、1社の電気自動車メーカーに集中せず、内外問わず様々な電気自動車メーカーに車載電池を供給していることだ。電気自動車が普及すれば、どの自動車メーカーがシェアを握っても売り上げを伸ばすことができる可能性が高い。

CATLが7月25日に発表した2023年1~6月期決算は売上高が前年同期比68%増の1892億元(約3兆7,000億円)、純利益も前年同期の約2.5倍になる207億元(約4,100億円)となり好調だ。※1元=19.732円換算(7月25日終値)

また、その研究開発にかける投資額は他社に比べて大きく、2022年の研究開発投資金額は前年比2倍の155億1,045万元(約3000億円、1元=19円換算)で、高い給与水準の提示で国内外の有名企業、大学、研究機関から人材を確保しており、新バッテリーの開発力も非常に高い。

今年8月16日新型の車載電池『神行超充電池』を発表し、世界初となる4Cのリン酸鉄系電池である。低温下では充電時間が長くなってしまった従来品に比べて、温度に関係なく急速充電が可能となる技術で、2024年3月までにEV搭載予定となっている。

さらに、他社に先駆けて原材料を確保しており、安定調達ができることも強みだ。車載電池の原材料にはコバルト、ニッケル(精錬済)、リチウムのような希少な鉄(レアメタル)が必要だが、コバルトはその生産67.9%がコンゴ共和国、ニッケルはインドネシア30.4%、中国が4.8%、リチウムはオーストラリア48.8%、中国17.1%、チリが22%だ。

コバルトのコンゴ共和国生産分はその半分を既に中国企業が抑えているが、CATLはその合弁事業を行う中国企業からコバルト鉱山の権利を取得した。そして、リチウムはボリビア政府と資源開発の投資を行うことで合意しボリビアの2つの塩湖にプラントを新設する予定だ。ニッケルもインドネシアの国営企業と統合事業を行うことで合意しているなど、EVに必須のレアメタルの資源を確保している。

■BYD(比亜迪)

BYDは、世界2位の電池メーカーでもあり、EV自動車でも世界2位の販売台数を誇る自動車メーカーである。電池を自動車メーカーが自前で製造できるところは少なく、自社で電池を製造しているBYDは、その価格競争力の高さが武器だ。

BYDの株式は香港(銘柄コード:1211)と深セン(002594)に上場しており、香港市場なら香港株式を扱う証券会社で日本人でも自由に売買できる。香港株は香港ドルで取引でき、香港ドルはドルに為替相場が固定されている。

BYDのグローバルな会社名は、もともとの中国の会社名「比亚迪(bi③ya④di②)」のピンイン(中国語の発音表記)からきているが、今では『Build Your Dreams(夢を築こう)』も表しており、BYD車のダッシュボードまたはバックドア等に書かれている。

BYD車には、王朝シリーズと海洋シリーズがあり、王朝シリーズでは車の名前に『漢』『唐』など中国の歴代王朝が使われている。

自動車販売は、2023年7月で前年同月比61.3%増の約26万台と3ヵ月連続単月最高台数と好調で、2023年の販売目標は300~360万台としている。

アメリカのインフレ抑制法がネック

中国国内では、テスラを筆頭に電気自動車の大幅な値下げ競争が繰り広げられている。

値下げだけではなく、車をもう一台付けるなど行き過ぎた販促も・・・。

中国政府からの補助金と減税が2022年末に終了し、電気自動車の販売が伸び悩み、在庫が積み上がり、さらに在庫消化のための値下げ競争が激化する恐れもある。特に、中国では生産目標やGDP目標が掲げられており、メーカーは勝手に生産調整できないお国事情も相まっている。

さらに、アメリカではインフレ抑制法が2023年4月から施行された。インフレ抑制法とは、アメリカ内でEVを購入した人に1台あたり最大7,500ドルの税額控除を受けられるEV購入者優遇措置だが、優遇を受けるためにはその購入したEVの車載電池がアメリカ本土で作られ、その原材料が一定率アメリカまたはアメリカと自由貿易協定を結ぶ国からの調達でなければならない。この法律は、躍進する中国自動車メーカーを狙い撃ちするようなもので、当然中国で生産された車載電池は除外される。そこで、2023年2月CATLはフォードが車載電池を生産する形で技術提供をする予定だ。電池の製造自体はフォードが行うため、インフレ抑制法による優遇は受けられることになるが、今後アメリカ向けに中国から直接EVまたは車載電池を輸出することは難しくなりそうだ。

中国国内が頭打ちとなる中、今後世界に向けて車載電池を売り出したい中国電池メーカーにとって、大きな市場である米国で直接輸出できないことは大きなネックになるだろう。

一方、シンガポールの調査会社カナリスによれば、2023年1~3月の東南アジア6か国(タイ・インドネシア・マレーシア・シンガポール・フィリピン・ベトナム)のEV市場でBYDがシェア42%に達し、中国企業が60%超となっている。EVは車の販売市場全体の4.1%で、全体シェアではトヨタ自動車が29%と日本企業が60%近く占めているが、今後EVが伸びてくるとその全体のシェアにも中国企業が入ってくることになる可能性があり、中国電池メーカーもさらなる伸びが期待できそうだ。

(参考)

会社概要 (catl.com)
Canalys Insights – Unleashing the power of Chinese EVs in the global market
車載電池大手CATL、2022年の売上高は前年比2.5倍(中国) | ビジネス短信 ―ジェトロの海外ニュース – ジェトロ (jetro.go.jp)
2021年1219日 日経新聞 「EVメタルが足りない」

文/大堀貴子

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