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勤続年数20年超の人は大幅増税?退職金課税新制度で損する人と得する人

2023.09.13

退職金課税新制度はどのようなものになるか?

6月に公表された骨太の方針で大まかに「退職所得課税制度の見直しを行う。」を記載された。まだ具体的な内容は決まっておらず、関係省庁などの要望を聞いてから内閣府設置の税制調査会で検討され、最終的には年末に公表される税制改正の大綱の内容でほぼ確定される。

20年を超える分が20年以下のときより大幅に優遇されていることは、途中で転職した人よりも、同じ会社で定年まで働いている人が大幅に税負担を軽減できるという優遇になる。

前述の定年まで38年間働いた人と途中で転職して19年ずつ働いた人が平等な控除額になるのは、20年超の優遇部分をなくして一律40万円にすると平等になる。

その場合、定年まで長く働いていた人は、現制度より税金が大幅に高くなり、税金を控除後の受取金額は少なくなってしまう。

仮に20年超の勤務期間に対する優遇がなくなった場合(一律40万円×勤続年数)を試算してみた。

前提勤続年数38年、転職なしとすると退職所得控除額は以下の通りだ。

現行:退職所得控除額800万円+70×(38年-20年)=2,060万円

一律40万円の場合:退職所得控除額40万円×38年=1,520万円

(1)退職手当が1,500万円
現行:退職手当が退職所得控除額を下回るため課税なし
一律40万円の場合:退職手当が退職所得控除額を下回るため課税なし

(2)退職手当が2,000万円
現行:退職手当が退職所得控除額を下回るため課税なし
一律40万円の場合:2,000万円-(退職所得控除額1,520万円)=480万円
480万円×1/2=240万円→【所得税】240万円×10%-97,500円=14.25万円

(3)退職手当が3,000万円
現行:3,000万円-(退職所得控除額2,060万円)=940万円
940万円×1/2=470万円→【所得税】470万円×20%-427,500円=51.25万円
一律40万円の場合:3,000万円-(退職所得控除額1,520万円)=1,480万円
1,480万円×1/2=740万円→【所得税】740万円×23%-636,000円=106.6万円

※所得税がかかる場合、翌年住民税も課税される。復興特別所得税を含まず計算。他に給与等があり、人的控除等の影響はないものとする。

20年以下の勤続年数の人は影響がない可能性があるが、20年超の勤続年数がある人は、大幅な増税となり、手取り金額がその分大幅に減る可能性がある。その影響は退職手当が多い人ほど大きくなる。

年金形式を選べる場合に税金を考えて年金形式を選ぶのは注意

退職手当の一部を年金形式で選ぶことができる会社で、退職手当に課税されないよう、退職所得控除額の範囲内で一時金で受取り、それ以外を年金形式で受け取ると考える人もいるかもしれない。その場合には以下の注意点がある。

(1)年金形式で受け取るときの公的年金等控除額の金額は小さい

公的年金等控除額は、国民年金、厚生年金、確定拠出年金(iDeCo、DCなど)、確定給付企業年金などで受給した収入から一定金額控除できるものだ。しかし、退職所得控除額や給与所得控除に比べてその金額は小さい。公的年金等控除額は65歳以上で収入に応じて110~195.5万円で、例えば、毎月約20万円の厚生年金を受給している場合、年間240万円、公的年金控除額が110万円となり、控除額を上回る。

その場合、さらに退職手当からくる年金がそれに上乗せされると公的年金等控除額では控除できないため、収入となりその分雑所得として課税される。

(2)社会保険料が高くなる。

退職手当を年金形式で受取り、それが公的年金等控除額を上回る可能性は高い。その場合課税され、住民税がかかる。国民健康保険料、介護保険料などの社会保険料は、住民税の金額に基づいて計算されるため、退職手当を年金形式で受け取った分高くなった住民税の影響で、その保険料が高くなってしまう可能性がある。

(3)健康保険などの負担割合が高くなる可能性がある

健康保険の窓口負担割合、介護保険の窓口負担割合、高額療養費の負担上限額は、収入に基づいて計算される。退職手当を年金形式で受け取った場合、収入が高くなり、これらの負担割合が高くなってしまう可能性がある。

退職手当を年金形式で受け取ると将来デメリットとなる点は多い。したがって、税金を一時凌ぐために退職手当を年金形式で受け取ることはおすすめできない。

一方、年金形式の方が受取金額が大きくなる、一時金で受け取るよりも使わなくて済むため長生きした時に安心できるなど、年金で受け取った場合のメリットも合わせて、退職手当を年金形式にするかは総合的に判断した方がよいだろう。

(参考)
経済財政運営と改革の基本方針2023 – 内閣府 (cao.go.jp)
日経新聞2023年8月12日「退職金最大45万円減」

文/大堀貴子

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