紆余曲折はあったけれど、下地があったKDDI
房野氏:auマネ活プランの広告やCMも今後、出るようですね。三太郎シリーズに新しいキャラクターが加わります。フリーアナウンサーの田中みな実さんが担当されるとのことで、発表会にも登場していました。
石川氏:9月からだったかな。
房野氏:お金のことに詳しいキャラクターになるんでしょうね。
石野氏:そんなイメージ、全然なかったんですけど「投資が上手なイメージのある女優ランキング」の1位だそうで。
房野氏:あのランキングはauじぶん銀行調べとありました。
石野氏:しかも、5位に米倉涼子さんが入っていた(笑)
房野氏:以前、auは新しいサービスに対して、目の付け所は良いけれど、やりっぱなしが多いという評価がありましたよね。金融系は勝木さんがしっかりやってきたということでしょうか。
石野氏:でも……
法林氏:じぶん銀行もしばらくは作りっぱなしだったよな(笑)
石川氏:じぶん銀行は結構ブレた時期もあった。auじぶん銀行にしたけど、「au」を取ってみたり、また付けたり。
石野氏:急に午後3時以降、他行への即時振込ができなくなったりとか。
房野氏:そういえば「改悪だ!」と、みなさん怒っていた時がありましたね。
石野氏:振込の無料回数が下がったりとか。ちょいちょいフラフラしているんですよ。
房野氏:オープンなのかクローズなのかも、ちょっとはっきりしないような。
石野氏:オープンではある。
房野氏:ともかく、KDDIは金融事業にかなり注力していますよね。
石川氏:主力ですから。
石野氏:右肩上がりで成長している。まぁ、買収も含めてですけど。
石川氏:住宅ローンとかクレジットとか。
法林氏:クレジットカードは3回か4回ぐらいブランドを変えている。今の状態になるまで結構時間がかかっている。国際ブランドも変えているんじゃないかな。今はマスターカードに加えVisaも選べるけど、最初はマスターカードだけだった。
石川氏:プリペイドの「au WALLET カード」がマスターだった。
法林氏:結構、いろいろ変わっているんだよね。でも、材料を揃えたのは勝木さんのおかげじゃないかな。田中会長が社長の時代から、いろんなことに取り組んできた。
因果だなと思ったエピソードがあるんだけど、昔、髙橋さんが「モバイルバンキング、ネット銀行はすごく面白い」と言っていたことがあった。「ネット銀行業界の人と飲みにいくと、『飲み代は振り込みね』といって、みんな口座に振り込んで割り勘で払っているんだよ」と話していた。当時はまだケータイね。「この前もイーバンクの人に会ったけど、話したら、面白かった」なんて言ってたイーバンク銀行って、今の楽天銀行ですからね(笑)
だから、下地はちゃんとあった。自らそういうことを体験して、ちゃんと考えて作ってきたことを感じます。ただ、今回のマネ活プランが受け入れられるかどうかは別ですよ。それはもっといろいろやらなきゃいけないことがたくさんあるので。
KDDI 代表取締役会長 田中孝司氏(左)、KDDI 代表取締役社長 髙橋 誠氏
石川氏:「αU(アルファーユー)」とどっこいどっこいかな……
メタバース・Web3サービスプラットフォームとして、2023年3月7日KDDIが設立した「αU(アルファユー)」
石野氏:いや、αUよりは……
房野氏:行けそうな気がする。
石野氏:行けそうだとは思うんですけど、発表会で質疑応答の時に「ほぼ全員に使ってもらいたい」ぐらいの勢いだったのは、それちょっと言い過ぎじゃないかと思った。
石川氏:高橋さんは「マネ活はアドオン的なものだから、1回申し込んで使って、合わなければやめてもらってもいい」みたいなことを言っていた。あれも変な話で、マネ活プランと通常プランが2つあって、auマネ活プランってプランじゃないじゃんと。
房野氏:オプション的な感じでしょうか。
石川氏:パックですよね。
法林氏:auスマートパスみたいな、加入すると権利が得られるみたいな感じにしても良かった。
石川氏:バックなのかパスなのか。
石野氏:でも家族割がつかなくなっちゃうので、プランといえばプランかと思って。
法林氏:そこはすごく気にしていた。家族割の1000円が適用外になるのはどうやって説明しようかと。1000円割引はなくなるけど、家族としてはカウントされるとか。
石野氏:それがau PAY残高還元特典の800円になるんですよね。なぜ1000円に揃えないんだよって思いました。
石川氏:髙橋さんがよく決算会見で言っているのは、金融サービスを使ってると解約率が下がる、劇的に改善して、ARPUが上がると。やっぱりそこにつなげたいのかなと。最終的にはモバイルで解約率を下げたいっていうのはあるんじゃないかな。
石野氏:そうですね。逆に言えば1人でauを契約するとやめやすいわけで、そういう人たちを縛れるメリットはある。
法林氏:光回線やCATVインターネット、ホームルーターを含む高速ブロードバンドと、au PAYカードとファミリー、この3つが揃ってる環境の人は結果的に安くなるけど、どれかが1つでも欠けるとそこそこ。カードの特典は200円程度だけど。
房野氏:光回線の契約が難しいんですよねぇ。
石野氏:普通、光は2本も引かないですからね。
法林氏:光回線じゃなくてもいいんだよ。ホームルーターでもいい。ドコモはいよいよ本気になってhome 5GのCMをやり始めたからね。
石野氏:ドコモはhome 5Gの宣伝をする前に、通信品質を直すのが先だろうって言いたいですけどね(笑)
……続く!
次回は、ドコモの通信品質改善について会議する予定です。ご期待ください。
法林岳之(ほうりん・ たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。
石川 温(いしかわ・つつむ)
日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、2003年に独立。国内キャリアやメーカーだけでなく、グーグルやアップルなども取材。NHK Eテレ「趣味どきっ! はじめてのスマホ」で講師役で出演。メルマガ「スマホで業界新聞(月額540円)」を発行中。
石野純也(いしの・じゅんや)
慶應義塾大学卒業後、宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で活躍。『ケータイチルドレン』(ソフトバンク新書)、『1時間でわかるらくらくホン』(毎日新聞社)など著書多数。
房野麻子(ふさの・あさこ)
出版社にて携帯電話雑誌の編集に携わった後、2002年からフリーランスライターとして独立。携帯業界で数少ない女性ライターとして、女性目線のモバイル端末紹介を中心に、雑誌やWeb媒体で執筆活動を行う。
構成/中馬幹弘
文/房野麻子