■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議
スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、秋のキャリア戦略について会議します。
auとY!mobileが新料金プランを同日に発表
房野氏:auから金融サービスを利用すると特典が得られる新たな料金プラン「auマネ活プラン」が登場。Y!mobileは料金プラン「シンプルS/M/L」を改定して容量アップする「シンプル2 S/M/L」を2023年10月以降に開始します。
石川氏:たまたま、2社が同じ日(8月23日)に発表会を実施しました。
法林氏:違うよ(笑)
石野氏:KDDI側の話では、Y!mobileに(同じ日へ)ぶつけられたそうですね(笑)
石川氏:本当は22日に発表会をやりたかったんだけれど、その日は色々あるから無理だよって話になり(笑)
それはさておき、同じ日に発表会がありましたが、性格的にはまったく異なる料金プランになっています。Y!mobileは寺尾さんが作っているだけあってシンプルに徹している。一部値上げだという指摘もありますが、光回線とのセットや家族割引などを組み合わせることによってギガ単価が下がっている。とにかく徹底的にシンプルにまとめたのがY!mobileの「シンプル2」です。
かたや「auマネ活プラン」はとっつきにくい印象があります。au経済圏のサービスを使っている人からすると「お、良いじゃん」という感じになりますが、全然使っていない人からすると魅力がさっぱり分からない。ハードルがめっちゃ高い。
石野氏:わかりにくいですよね。偏差値が高いというか。
石川氏:回線を契約して銀行口座を作って、さらにau PAYカードを作ってようやく特典が受けられる。なかなかハードルが高いので、どちらかというとauユーザーを囲い込むためのプランという位置付けになっているかなと思います。
面白いのが、ああいった建て付けって、経済圏の中にいろんなサービスを持つauと楽天しかできない。ただ、楽天はモバイルを契約することによる魅力をポイントぐらいでしか出せていない。KDDIはいち早く先鞭をつける形で「金融がお得になりますよ」という見せ方をしたということで、一歩先に行った感じがする。
ソフトバンクにも一応PayPay銀行やPayPay証券があって、同様のことがやれないことはないんだけど、いかんせん、IDの統一化ができていない。まずはIDを統一化して紐付けていかないことにはできないので、あと数年はかかるでしょう。
ドコモに関しては、銀行も証券も持っていないので、はなからできない。というわけで、今後の経済圏の戦いは非常に面白くなりそうです。
石野氏:端的に言うと、Y!mobileのシンプル2は偏差値40の人でも分かる。auマネ活プランは偏差値70くらいを要求される(笑) この座談会でも何度か言っていますけど、KDDIの料金プランって、なんというか頭の良い人がいろいろ考えて作りだした感じがすごくするんです。今回はそれがモロに炸裂しているというか。しかも勝木さん(auフィナンシャルホールディングス 代表取締役社長 勝木朋彦氏)の金融マンっぽいビジュアルも相まって「うわー、偏差値70っぽいわぁ」って思いながら発表会を見てたんです(笑)
ただ、実際に計算してみると、今までの使い放題MAXよりも還元額が高くなるケースが多い。auじぶん銀行とau PAYをバンバン使っているだけでも、今までより安くなるパターンがある。それとau PAYゴールドカードの通信料金に対する還元率が、1年間だけですけど10%高くなるので、意外とお得なんですよね。確実にお得になるのは、家族なしで1人でauの使い放題MAXを契約しようとする人。そういう人はauマネ活プランにして、じぶん銀行で固めた方が確実に安くなります。
ドコモに比べると、auやソフトバンクって家族契約の割合が少ないと言われているので、単身者がマネ活することによってお得になるプランを出したのはKDDIらしいというか、立ち位置をうまく生かしているような感じはしました。
auフィナンシャルホールディングス 代表取締役社長 勝木朋彦氏
石川氏:結局、Y!mobileもauも、固定の光回線やホームルーターと組み合わせて、さらに「クレジットカードを使ってね」ということで、昔と変わってないなと。やっぱり3キャリアの強みはそこなんだなと。いかにユーザーを囲い込むかという感じになっている。ユーザーが楽天モバイルに逃げないようにするため、昔からの手法が強化されたって感じがしました。