勝手にパーティーを開いて招待状まで自分で発行!PRGの「名もなき村人」が「本物の人間」になる日
ドラゴンクエストのようなRPGのNPC、つまり「名もなき村人」が「人間」になるとしたら?
RPGの村人は、いつ何回話しかけても「ここは○○村だよ」としか返さない。行動もその辺を行ったり来たりで、「いかにもモブ」という動きしかしてくれない。が、そんな村人が本物の人間と同じように生活を営むことができるとしたら?
そのようなことを可能にする技術は、既に確立されようとしている。
村人が人間のように行動する!
『Generative Agents: Interactive Simulacra of Human Behavior』という題の論文がある。
これは大規模言語モデルによって生成・行動付けされた25名のAIエージェントが、ひとつの村を想定した仮想空間の中でどのように動くかを検証する内容だ。早速難しい文言が並ぶが、要はRPGのような見下ろし型の村の中で村人を自由に行動させる……という実験である。
自然言語、即ち我々が普段使っている言葉でプロンプトを入力し、村人たちのプロフィールや性格等を決める。あとはそのまま放置するだけ。村には住居の他、小売店や飲食店などの生活に必要な施設も存在する。
村人の細かい行動に、プログラマーは干渉しない。つまり村人の性格の思うままに任せてしまうのだ。
村人同士が噂話を繰り広げ、なおかつ「この話は他の人には内緒だよ」と言われているにもかかわらず、あとでその話を他の村人に漏らしてしまう者。
現村長に不満を持ち、ならば自分が村長選挙に立候補しようと考える者。
パーティーを企画し、他の村人に招待状を送る者。そしてその招待に応じる者と応じない者。
これらの行動が確認されたという。
さらに賢くなる村人たち
筆者は今、この記事を書きながら『午後の紅茶 おいしい無糖』を飲んでいる。そして尿意を感じているから、この行を書いたら便所に行くつもりだ。
さて、筆者は便所から戻った。もちろん手はちゃんと洗っている。テレビのリモコンを手に取り、チャンネルをAXNミステリーに合わせる。もうすぐ『刑事コロンボ』が始まる。
そうした小市民の何気ない行動を、RPGのNPCにそのまま投映できるかもしれないのだ。
しかも、上の実験の村人を生成するのにつかわれているのはGPT-3.5であることにも注目する必要がある。これはChatGPTで知られた自然言語処理モデルだが、現在はそれよりも遥かに賢いと言われているGPT-4が登場している。つまり、GPT-4を上の実験に使えばさらに「人間臭い」村人が誕生する可能性が高いということだ。
RPGに「名もなき村人」はもういなくなるだろう。どんな村人も名前を持つようになり、当然個々に性格があり、身体的特徴も趣向も日常生活もそれぞれ異なる。人間世界の「当たり前」が、ゲームにそのまま投映される未来が近づいている。
す、すごい……!