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三菱電機、岡山大学、大阪大学がヒトの脳サイズの撮像を可能にする磁気粒子イメージング装置を開発

2023.09.14

三菱電機株式会社、国立大学法人岡山大学、国立大学法人大阪大学大学院工学研究科は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構の支援のもと、1kHz以下の低周波でもヒトの脳サイズの領域の磁気粒子を高感度に撮像でき、電源装置の大型化を抑えた「磁気粒子イメージング装置」を世界で初めて開発したと発表した。

↑開発した磁気粒子イメージング装置(試作機)

日本における65歳以上の認知症患者数は、2025年には700万人に達する(※2)と見込まれている。また、認知症患者のうち67.6%をアルツハイマー病が占めるという統計結果(※3)もあり、国内では今年6月、認知症の予防を促進する「認知症基本法」が成立し、8月には、アルツハイマー病の発症要因となり得る脳内に蓄積したアミロイドβ(※4)を除去し、病状の進行を抑制する治療薬の製造販売承認が厚生労働省の専門部会で了承されている。脳内のアミロイドβの蓄積が少ない段階で早期に投薬治療を開始することが発症抑制に繋がることから、アミロイドβの蓄積量や分布を測定する技術が求められている。

磁気粒子イメージング装置は、コイルが発する交流磁場により、体内に注入した磁気粒子の磁気信号を誘起し、これを検出することで、3次元画像を生成する装置だ。交流磁場の周波数が高いほど磁気信号を高感度に検出できるため、既に製品化されているマウスなどの小動物用の小型装置では、25kHz前後の高い周波数が使用されている。同等の周波数を用いて、ヒトの脳サイズの領域を撮像可能な大きさに装置を大型化した場合、コイルが大きくなることで負荷が上がり、必要な電源容量が増大するため、電源装置が非常に大型になることが実用化を妨げる要因の1つとなっていた。

今回、三菱電機がさまざまな機器開発で培ってきた電磁気学技術を深化させ、交流磁場を発生するコイルと、信号検出コイルの配置を精密に調整し、磁気信号の検出の障害となる不要な信号(ノイズ)を最小化できる構造を確立したことで、1kHz以下の低周波でもヒトの脳サイズの領域の磁気粒子を高感度に撮像でき、電源装置の大型化を抑えた磁気粒子イメージング装置を世界で初めて開発した。本開発成果は、アルツハイマー病発症前の画像検査の実現に向けた大きな前進となる。

↑本装置で撮像した画像

なお、磁気粒子イメージング装置を用いたアルツハイマー病発症前の画像検査の実現にあたっては、磁気粒子イメージング装置のさらなる高感度化、高解像度化が必要で、また、検査装置としての実用化に向けては、安全性や有効性を確認するための臨床試験が必要となるとのこと。三菱電機らは、2030年頃に実用化の目途を付けることを目標に、他社との協業も視野に入れて検討を進めていくとしている。

※1 2023年9月7日現在。三菱電機調べ
※2 出典:「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」(平成26年度 厚生労働科学研究成果データベース)
※3 出典:「都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応」(平成24年度 厚生労働科学研究成果データベース)
※4 脳内で作られるたんぱく質の一種。脳内に蓄積されることで脳の認知機能の低下につながるとされる

関連情報
https://www.mitsubishielectric.co.jp/news/2023/0907-a.pdf

構成/立原尚子

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