ウェルビーイングへの意識が高いアメリカで、自己管理能力を高めるためのツールとして人気を集めている「マインドフルネス」。グーグルやヤフー、メタ(旧フェイスブック)など、数多くのグローバル企業が社内研修に導入していることでも知られている。また、仕事面での悩みや不安を解消し、自分のパフォーマンスを高くキープするために、マインドフルネスを日常的に実践しているビジネスパーソンも多いという。
マインドフルネスが実際にどのように仕事の課題解決に役立つのか。新刊『心が整うマインドフルネス入門』の著者であるネパール出身の瞑想家、ニーマル・ラージ・ギャワリ氏に聞いた。
自信がなくなるのは「比べる」から
今回、ニーマル氏にぶつけてみたのは、「自分の経験やスキルに自信がない」という悩み。これは、転職を考えたときに頭をよぎる不安のひとつ。思いがけない部署異動や出向などの際に感じることもあるかもしれない。
「一般的に、自分の経験やスキルに不安を感じる理由はただひとつしかありません。それは、自分を何かと比べてしまうということです」(ニーマル氏・以下同)
私たちは自分を他人とつい比較しては、落ち込んだり、うらやんだりしてしまうもの。「しかも、人間には『ダメだったときの自分』と何かを比較してしまう癖があります」とニーマル氏は言う。
「『自分はあのときひどい失敗をしたのに、あの人は器用にこなしている』など、よりによって悪いパフォーマンスをしてしまったときの自分と比べてしまうんです。もはや、自分からわざわざ不安や落ち込みを大きくしているようなものです(笑)」
確かに、人間は調子がいいときもあれば、悪いときもある。だが、私たちはつい「できなかったこと」や「持っていないもの」など、自分のネガティブな側面にとらわれやすい。
まずは、比べている自分に気づくことから
他人と自分を比べては落ち込んでしまう。そんな癖を解消するには、どうすればいいのだろうか。
「私たちの脳は、比べるのが大好きです。『人は人、自分は自分』と思っているつもりでも、つい他人と自分を比べてしまうのは、脳の条件反射のようなもの。そのため、大切なのは、自分を何かと比べてしまったときに『あ、自分は今、〇〇と比べているな』と気づくことです」
比べている自分に気づくことができれば、意識を過去のダメだったときの自分から、「今この瞬間の自分」へと戻すことができる。すると冷静になり、「比べることに何の意味がある?」「それよりも、目の前のことにベストを尽くそう」といったふうに、自分自身に集中できるというわけだ。
「気づく」力は、マインドフルネスで向上できる
比べてしまったときのネガティブな感情にとらわれず、「あ、比べている」と気づけるようになるには、そもそも「気づく」力を高める必要がある。
「それには、練習が必要です。日常生活のなかでマインドフルネスに過ごす練習を続けると、『気づく』力が高まり、自分の経験やスキルに対する不安は消えていきますよ」
ニーマル氏の最新刊『心が整うマインドフルネス入門』には、マインドフルネスの簡単な練習法をはじめ、ビジネスパーソンに役立つアドバイスが数多く紹介されている。自分の経験やスキルに不安を感じている人はもちろん、つい他人と自分を比較しやすい人は、ぜひ読んでみてはいかがだろうか。
ニーマル・ラージ・ギャワリ(Nirmal Raj Gyawali)氏
母国ネパールにて9歳よりヨガを学び、15歳から指導を開始。ハタヨガメディテーション及びアーユルヴェーダを学び、22歳で博士号を取得。20カ国でメディテーションを指導し、2003年に来日。2019年にメディテーションテックベンチャーのスワル株式会社を設立。著書に『黒感情が消える ニーマル10分瞑想』、『美顔ヨガ』(小学館)など。
『エグゼクティブが実践するニーマルメソッド 心が整うマインドフルネス入門』
ニーマル・ラージ・ギャワリ著
初心者でも日常生活に取り入れやすいマインドフルネス法を紹介。マインドフルネスを実践し、充実したビジネスライフを送るエクゼクティブの方々のインタビューや仕事の具体的な悩みへの対処法のコーナーもあり、日々のリアルなビジネスシーンに活かせる内容満載。初版&期間限定でニーマル氏がガイドする瞑想動画の特典プレゼント付き。
取材・文/志村香織