女性活躍推進策、「公平な評価」が約6割でトップ。「男性育休取得推進」の上昇幅目立つ
女性の活躍推進のために自社で行っていることについて尋ねたところ、「性別に関わらず成果で評価」が59.0%でトップ、「性別に関わらず配置・配属」(48.2%)が続き、男女平等に関わる項目が上位に並んだ。
次いで、「女性の育児・介護休業を取りやすくする」(40.1%)といった、女性に特化した働きやすい環境づくりに関する対応策が続く。
また、男女問わず働き手の家庭と仕事の両立への支援となる「就業時間の柔軟化」(27.8%)および「時短勤務の対応」(25.5%)に取り組んでいる企業はそれぞれ4社に1社だった。
他方、政府が特に強化している「男性の育児・介護休業の推進」は15.7%(前年比3.1ポイント増)で前年からの上昇幅は全項目のうち最大となった。しかし、「キャリア開発・育成の充実」(7.3%)や「キャリアに関するモデルケースを提示」(2.6%)といった女性のキャリア支援となる項目はわずかな上昇にとどまり、低水準だった。
男性の育休取得率は平均11.4%、特に従業員数「1000人超」の企業で高く
2023年4月より従業員1000人を超える企業を対象に男性の育児休業(以下、男性育休)取得率の公表が義務化された。また同年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」では、それまで掲げていた男性育休の取得率の目標(民間企業)である「2025年までに30%」が「2025年度に50%、2030年度に85%」に引き上げられるなど、政府は男性の育児参加を促す取り組みを強化している。
そこで、自社の男性育休取得率について尋ねたところ、平均は11.4%となった[2]。
規模別でみると、「大企業」が14.1%、「中小企業」が10.6%、うち「小規模企業」が8.6%となり、企業規模が大きいほど取得率が高い傾向にある。
従業員数別でみると、現在取得率の公表が義務づけられている「1000人超」の企業が20.8%で最も高く、全体を9.4ポイント上回った。
なお、単回帰分析を用いて、各企業の「男性の育休取得率」と「女性管理職の割合」の関係を確認した。その結果、男性の育休取得率が上昇すると女性管理職の割合も上昇するという傾向[3]が表れ、男性育休の取得促進を段階的に進めると、女性の継続就業や管理職を目指す意欲の向上、活躍できるフィールドの広がりなどを通じて、女性管理職の割合が高まる可能性が示された。
調査結果まとめ
本調査によると、女性管理職(課長相当職以上)割合は平均9.8%だった。過去最高を更新したものの、依然として1割に届かなかった。政府目標である「女性管理職30%」を超えている企業の割合もわずかながら上昇し、過去最高となったが1割を下回った。女性役員も同様の傾向となるなど、総じて上向いているものの進捗は緩やかだった。
女性の活躍推進のために自社で行っていることについて、男女平等に関わる項目である「性別に関わらず成果で評価」が6割近くでトップとなった。
ほかにも、女性にとって働きやすい環境づくりに関連する項目も上位にランクインし、就業時間の柔軟化など男女とも働きやすくなるよう対応している企業も一定数あった。
また、「男性の育児・介護休業の推進」は15.7%となり、前年からの上昇幅は全項目のうち最も大きかった。一方、女性のキャリア支援となる項目はそれぞれ1割未満となり低水準にとどまった。
少子高齢化による人手不足感が加速し、女性の活躍は欠かせない。企業には性差に関する固定観念の打破や、長時間労働の人ほど昇進しやすいなどといった旧態依然とした社内風土の改革に加え、男女とも仕事と家庭を両立できるための働きやすい環境づくりや業務の効率化に向けた取り組みが求められる。
また、従業員に対するキャリア開発・育成の強化や、それぞれの見本となるキャリアに関するロールモデルの提示など多方面からアプローチしていくことも重要となろう。
その取り組みを支えるために、働きやすい環境整備への奨励金や、育児休業の助成金制度・税制優遇制度、人材開発に関する助成金など多岐にわたる効果的な公的支援策の拡充・強化も肝要といえる。
[1] 「女性管理職割合」「役員割合」の選択肢は「100%」「70%以上」「50%以上 70%未満」「30%以上 50%未満」「20%以上 30%未満」「10%以上 20%未満」「5%以上 10%未満」「5%未満」「0%」の9段階および「分からない」。平均は、各選択肢のレンジの中間値を回答数で加重平均したもの
[2] 男性育休取得率の選択肢は「100%」「70%以上」「50%以上 70%未満」「30%以上 50%未満」「20%以上 30%未満」「10%以上 20%未満」「5%以上 10%未満」「5%未満」「0%」の9段階および「分からない」「該当者なし」。平均は、各選択肢のレンジの中間値を回答数で加重平均したもの
[3] 「女性管理職の割合」のレンジの中間値を被説明変数、「男性の育休取得率」のレンジの中間値を説明変数としてロジスティック回帰分析を行い、以下の結果が得られた。
logit(女性管理職割合が100%となる確率)=-2.425+0.389*男性の育休取得率(0.000)(0.022)
[一般化線形モデル(GLM:Generalized Linear Model)、カッコ内p-値、対象企業数5471社]
調査概要
調査期間/2023年7月18日~31日
調査対象/全国2万7768社
有効回答企業数/1万1265社(回答率40.6%)
なお、女性登用に関する調査は、2013年以降、毎年7月に実施して今回で11回目
調査機関/株式会社帝国データバンク
関連情報
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p230808.html
構成/清水眞希