最低賃金引き上げへの対策
最低賃金の引き上げが実施された場合、企業は何をすべきなのでしょうか?企業が取るべき対策を紹介します。
給与の見直し
まずは自社の最低賃金が、国の設定する最低賃金を上回っているかどうかを確認しましょう。国の最低賃金に満たない場合は、早急な見直しが必要となります。
給与の見直しを行う場合は、以下の手順を踏むとスムーズです。
- 給与水準を調査する
- 賃金項目や報酬基準を見直す
- 導入前のシミュレーションを実施する
- 従業員に周知・説明する
給与見直しのポイントは、同業種や一般的な企業の賃金水準を適切に調査することです。給与は、従業員にとって重要な労働モチベーションとなります。あまりにも低い水準を維持し続けると、優秀な人材が離職したり人材確保のハードルが上がったりといったデメリットにつながるかもしれません。
生産性向上のための設備投資を行う
新しい機械やツールなど、生産性向上につながる設備投資を実施しましょう。
最低賃金の引き上げによる人件費の負担を解消するため、有期雇用契約の社員・非正規の社員を人員整理の対象とする企業は、多々あります。新規雇い入れの停止や雇い止めを実施する企業は、人手不足のダメージを抑制することが大切です。
また人員整理で残された従業員の負担が増大すると、労働のモチベーションが下がります。離職率の上昇を防ぐためにも、ツールや機械の導入による業務効率化が必要です。
助成金の活用
最低賃金の引き上げによって企業負担が増えることは、想定内です。政府は最低賃金の引き上げを実施した企業に対してさまざまな支援策を設け、生産性向上や利益率の向上をバックアップしています。
主な支援制度は、以下の通りです。
- 業務改善助成金:生産性向上のための設備投資を行う場合に助成を受けられる制度
- キャリアアップ助成金:非正規雇用労働者の企業内におけるキャリアアップを促進する場合に受けられる制度
- 中小企業向け賃上げ促進税制:中小企業で一定の要件を満たした賃上げを行ったとき、法人税(個人事業主は所得税)の控除が受けられる制度
- 企業活力強化貸付:設備資金や運転資金を低金利で借り入れできる制度
いずれの制度も、最低賃金の引き上げを実施した場合に利用できます。助成対象や条件・求められる賃金引き上げ率などは制度によって異なるため、事前の詳細確認が必須です。
参考:最低賃金・賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援施策紹介マニュアル|厚生労働省
最低賃金法に違反した場合どうなる?
最低賃金は、最低賃金法の定めるところにより適切な手順を踏んで決定されています。企業が最低賃金の引き上げを実施しない場合、どうなるのでしょうか?最低賃金法に違反した場合の罰則を紹介します。
法令違反した場合の罰則
最低賃金は法律によって定められており、企業には『従わない』という選択肢がありません。企業の賃金が最低賃金未満であった場合、企業は労働者に対し最低賃金額との差額を支払わなければならない決まりです。
また、企業が地域別最低賃金額を下回る賃金を設定することは、最低賃金法第40条に抵触します。改善が見られない企業については、50万円以下の罰金が科される恐れがあります。
一方、特定(産業別)最低賃金を満たさない場合の罰則の根拠は、労働基準法です。特定(産業別)最低賃金が最低賃金未満の企業は、労働基準法第24条および第120条に基づいて30万円以下の罰金が科されます。
参考:最低賃金法 | e-Gov法令検索
参考:労働基準法 | e-Gov法令検索
最低賃金法適用外のケースも
最低賃金の対象は、労働者全てです。国籍や労働形態にかかわらず、雇用契約を結んで働く労働者には最低賃金法のルールが適用されます。
ただし、最低賃金の適用が雇用機会を狭める恐れがある場合、使用者は減額が可能です。例えば、以下に該当する人については、必ずしも国が定める最低賃金基準をクリアする必要はありません。
- 精神または身体の障害により著しく労働能力の低い人
- 試用期間中の人
- 基礎的な技能などを内容とする認定職業訓練を受けている人のうち、厚生労働省令で定める人
- 軽易な業務に従事する人
- 断続的労働に従事する人
なお、最低賃金の減額を求める場合は、都道府県労働局長の許可を受けることが必要です。
構成/編集部