新型コロナにより大きなダメージを受けた旅行業界だが、2022年10月に入国者に対する水際対策が緩和されて以降、訪日外客数は順調に増え、2023年6月は207万3000人と新型コロナ前の2019年6月の72.0%まで回復した。国内の旅行需要も拡大しており、旅行業界は活気を取り戻している。
そこで帝国データバンクでは、新型コロナ流行前から現在に至るまでの旅行業界(一般旅行業、国内旅行業、旅行業代理店業)に絞った景気DI の動きを調査。先日、その結果が発表されたので。本稿では、その内容を一部抜粋してお伝えしていく。
長い低迷期から脱却。インバウンド増や全国旅行支援、5類移行で急回復
第1回目の緊急事態宣言が発出された2020年4月のトラベルDI(Diffusion Index ※)は、調査対象の全企業が景況感を「非常に悪い」と回答したため、「0.0」を記録。国内では不要不急な外出の自粛が徹底され、同年3月に中国と韓国からの新規入国者を制限する水際対策が開始。4月には入国拒否地域が拡大したことで、旅行市場は需要ゼロ状態となった。
その後7月には「GoToトラベル」事業の開始で、わずかに回復するも、感染者数の拡大を受けて、12月に同事業が全国で一斉停止されると景況感は再び悪化、トラベルDIは2021年9月まで1桁台で推移した。
しかし、2022年に入ると世界的に水際対策が緩和され、日本でも観光目的以外の外国人の新規入国が再開。さらに10月には全国旅行支援や外国人の個人旅行の受け入れも再開されたことで、需要回復の兆しをみせた。
トラベルDIは2022年2月の3.6から11月には40.8へと大幅に改善し、30ポイント以上差があった全産業の景気DIとの格差も2.3ポイント差まで縮小した。2023年3月には、3年4カ月ぶりに全産業の景気DIより高くなり、「5類」へ移行した5月以降は、トラベルDIが3カ月連続で55.0を上回る高水準で推移している。
インバウンドの増加、国内旅行のコロナ禍からの反動増などのプラス要因に加え、2023年8月10日より中国から日本への団体旅行が解禁された。新型コロナの影響を受けて長期間の低迷が続いた旅行業だったが、今後さらなる景況感の上昇が見込まれる。
※ トラベルDIは、「一般旅行業」「国内旅行業」「旅行業代理店業」の景気DIから算出