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史実を徹底的に調べて細部までこだわったホビージャパンのダイキャスト戦闘機「1/32 零式艦上戦闘機五二型」に込められた開発者の思い

2023.09.11

各部位を精巧に再現

ダイキャスト合金製の『1/32 零式艦上戦闘機五二型』は、自分で接着剤を塗ったり筆を動かしたりする必要のない半完成品タイプである。

エンジンを覆うカウリングは取り外し可能、そして栄エンジンそのものも脱着できる。プロペラピッチ、風防、主脚、尾脚、着艦フック、さらには足位置指示装置までちゃんと動く。コクピット内部も操縦桿や計器、スロットルレバー、そしてそのスロットルレバーにある射撃レバーも精巧に再現されている。

少なくとも、筆者の目には粗が全く見受けられない。実機をそのまま小さくしたかのようだ。

さて、この製品の岩本徹三機が三菱製(中期生産型)ということは上述したが、これも三菱の生産記録と岩本の著書を照合した上での判断であるという(五二型だったという前提の上)。

「それでもこのことについて討論できるだけの準備はしてあります」と高橋氏は話す。

「零戦研究家を名乗る方は、アマチュア含めて非常に多い。故に生半可なことはできない」ということは、ライター職で禄を食んでいる筆者にもよく理解できる。一歩間違えれば、待っているのは全国各地にいる研究家からの批判の嵐だ。

零戦の「一般浸透」はいつから?

「ところで澤田さん、零戦というものが日本の一般国民に広く知られるようになったのはいつだと思いますか?」

高橋氏のその問いかけに、筆者は一瞬詰まりながらもこう答えた。

「少なくとも、真珠湾攻撃直後ではないですね。もっと後の出来事だったと記憶しています」

「1944年11月です」

なぜ、ここまで細かい断定ができるのか? それは1944年11月に新聞が零戦をその名前付きで報道したからだ。

よく戦時中が舞台のドラマなどで、「僕は大きくなったら零戦のパイロットになるんだ!」と息巻く軍国少年が出てくるが、そのような台詞を用意するなら時代背景は1944年11月以降でなければおかしい。真珠湾攻撃成功の一報をラジオで聞いて少年がそう発言したのなら、それは脚本が間違っている。

「零戦が子供たちの憧れになったのは、実は戦後の出来事です。昭和30年代に戦記物ブームというものがあって、そこで初めて子供たちの間で零戦と戦艦大和の存在が共有されるようになりました。『0戦はやと』っていう漫画もありましたし、あと『紫電改のタカ』というのもありました」

一般的な日本人が知っている戦闘機

アメリカ人の大半は、P51マスタングという戦闘機の名前を知っている。イギリス人の場合はスピットファイアだ。日本人の場合は、当然ながら零式艦上戦闘機である。

というより、「ミリタリーマニアではない日本人が知っている戦時中の戦闘機」は零戦しかない。

そして数々のモデルが存在する零戦の中でも、日本人に広く共有されているのは「濃緑色のカラーリングの五二型」だと高橋氏は説明する。考えてみれば、上述の「1944年11月の新聞報道」もつまるところ五二型を取り上げたものだ。

零戦は、日本の歴史を語る上で欠かせない工業製品である。そんな軍用機を膨大な資料調査で徹底的に検証し、妥協なく再現したのがこの製品ということだ。

『1/32 零式艦上戦闘機五二型』のメーカー希望価格は税込5万2,800円。この数字の中にある付加価値の大きな部分は「史実調査」が占めているのではないかと筆者は感じている。これだけで数本の学術論文が書けそうな勢いの調査が実施され、製品に反映されているのだ。

「製品と付加価値」について、改めて熟考させられた今回の取材である。

【参考】
1/32 零式艦上戦闘機五二型-ホビージャパン
https://www.hjmodelkit.com/hjmdf001-2

取材・文/澤田真一

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