甘い飲み物が女性の肝臓がんと肝疾患死リスクを押し上げる可能性
糖分で甘く味付けされた飲み物(加糖飲料)の摂取を控えるべき理由は多々あるが、女性の場合は肝臓がんや肝疾患による死亡を避けることも、そうすべき理由の一つかもしれない。
10万人近くの女性を対象とした研究から、加糖飲料を1日に1本以上飲んでいる女性は、肝臓がんの発症が85%、慢性肝疾患による死亡が68%、それぞれ高リスクであることを示すデータが報告された。
米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院のLonggang Zhao氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Medical Association(JAMA)」に2023年8月8日掲載された。
米国では成人の約65%が加糖飲料を毎日摂取している。加糖飲料の摂取と心血管代謝性疾患のリスクとの関連はよく研究されているが、Zhao氏によると、「われわれの知る限り本研究は、加糖飲料の摂取と慢性肝疾患による死亡率との関連を報告した初の研究であり、この結果が追試により確認された場合、肝疾患のリスクを抑制するための公衆衛生戦略の道が開かれる可能性がある」と述べている。
この研究には、閉経後の一般女性を対象とする大規模疫学研究「Women’s Health Initiative(WHI)」のデータが用いられた。
1993~1998年に米国内40カ所の施設でWHIに研究参加登録された、50~79歳の閉経後女性9万8,786人を2020年3月1日まで追跡。食事頻度調査により、加糖飲料と人工甘味料入り飲料の摂取量を把握し、肝臓がんの発症、および、慢性肝疾患(非アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝疾患、慢性肝炎、肝硬変など)による死亡との関連を検討した。
なお、加糖飲料を1日に1杯以上摂取している人は6.8%、人工甘味料入り飲料を1日1杯以上摂取している人は13.1%だった。
中央値20.9年の追跡で、207人が肝臓がんを発症し、148人が慢性肝疾患により死亡。人口統計学的因子や生活習慣関連因子などの潜在的な交絡因子を調整後、加糖飲料を1日に1杯以上摂取している女性は月に3杯以下の女性に比べて、肝臓がんの発症〔10万人年当たり18.0対10.3、調整ハザード比(aHR)1.85(95%信頼区間1.16~2.96)〕と、慢性肝疾患による死亡〔同17.7対7.1、aHR1.68(1.03~2.75)〕のハザード比がともに有意に高かった。
一方、人工甘味料入り飲料については、上記同様の摂取量での比較で、肝臓がんの発症〔同11.8対10.2、aHR1.17(0.70~1.94)〕、慢性肝疾患による死亡〔同7.1対5.3、aHR0.95(0.49~1.84)〕ともに、関連が非有意だった。
Zhao氏らは、「本研究は観察研究であり因果関係を証明するものではなく、加糖飲料の摂取量および肝臓がんの発症を、本人からの自己申告に基づき解析しているという限界点がある。示された関連性の検証が必要であり、また、なぜ加糖飲料が肝臓がんや肝疾患死のリスクを増加させるのかを解明するために、さらなる研究が求められる」と述べている。
とはいえ、この結果は、加糖飲料が健康全般に有害であるという既存のエビデンスをさらに強固にするものと解釈できる。
米疾病対策センター(CDC)は、加糖飲料の頻繁な摂取は、体重増加、肥満、痛風、2型糖尿病、心臓病、腎臓病、非アルコール性肝疾患、虫歯などのリスク増大と関連しているとしている。(HealthDay News 2023年8月9日)
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(参考情報)
Abstract/Full Text
https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2807987
Press Release
https://www.brighamandwomens.org/about-bwh/newsroom/press-releases-detail?id=4499
構成/DIME編集部