『寄附金控除』が、どのような制度なのかよく分からないという人は少なくありません。仕組みや計算方法、実際に寄附金控除を受ける方法、注意点について確認し、理解を深めましょう。『ふるさと納税』との違いについても解説します。
そもそも寄附金控除とはどんなもの?
納付すべき税金の額から一定の額を差し引く控除にはさまざまなものがあり、寄附金控除もその一つです。具体的にどのような控除なのか、控除される理由と併せて紹介します。
寄附をすることで受けられる控除
寄附金控除とは、国や地方公共団体などに寄附を行うと、その金額に応じて受けられる控除のことです。確定申告の際に『所得控除』を受けられるだけでなく、一定の対象に寄附した場合には『寄附金特別控除(税額控除)』を選択することも可能です。
ただし、寄附をして申請さえすれば、必ず受けられるというものではありません。寄附の対象となる団体や金額の上限などの条件が定められています。確実に控除を受けるためには、条件をしっかり把握しましょう。
参考:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁
控除される理由
控除される大きな理由は、寄附が社会貢献の一環として広く認識されているためです。寄附は、より良い社会をつくることにつながると考えられており、税金の控除が受けられるのです。
近年は、多くの人が寄附やボランティア活動に携わっていますが、寄附金控除が制定された1962年時点では、欧米諸国ほど寄附という行為が盛んではありませんでした。もっと気軽に寄附ができる社会にするために、寄附した人が優遇される制度ができたのです。
知っておきたい寄附金控除の仕組み
寄附金控除は、寄附をすれば無条件で受けられるというものではなく、条件があります。把握しておきたい条件や仕組みを紹介するので、しっかり確認しましょう。
控除の対象となる寄附先
寄附金控除を受けるには、指定されている特定の団体に寄附を行う必要があります。例えば、国・地方公共団体・公益社団法人・公益財団法人・独立行政法人・社会福祉法人・更生保護法人・学校法人・認定特定非営利法人(認定NPO法人)などです。
ただし、寄附した当人に特別な利益が生じると考えられるものや、政治資金規正法に違反するもの、学校の入学に関するものなどは該当しません。ほかにも認められないケースがあるため、寄附する際には、詳細を確認しましょう。
参考:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁
所得控除もしくは税額控除を選択可
寄附金控除には『所得控除』と『税額控除』があり、一定の団体への寄附に関してのみ、税額控除を選択することが可能です。認定NPO法人や公益社団法人、政党などに対する寄附金のうち、一定のものが対象になります。
選択できるようになった理由は、寄附をしやすくするためです。一般家庭の寄附では税額控除の方が控除額は増える一方で、高額所得者の寄附では所得控除の方が控除額は増えるケースもあります。より多くの寄附を募るために、どちらにもメリットがある仕組みになったのです。
参考:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁
寄附金控除の計算方法
所得控除と税額控除では、控除額の計算方法が異なります。それぞれの計算方法を確認し、自分のケースに当てはめて計算する際の参考にしましょう。
所得控除の計算方法
以下の手順で計算して出た金額が、寄附金控除額になります。
- その年に支出した特定寄附金の額の合計額と、その年の総所得金額の40%相当額を算出する
- いずれか低い金額から2,000円を引く
総所得金額等は、合計所得金額から純損失や雑損失などの繰越控除を適用後の金額を指します。
参考:No.1150 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)|国税庁
参考:専門用語集|国税庁
税額控除の計算方法
計算方法は寄附先によって異なるため、注意しましょう。政党などに対する寄附金の場合は、『(その年中に支払った政党等に対する寄附金の額の合計額-2,000円)× 30% =政党等寄附金特別控除額(100円未満の端数切り捨て)』です。
認定NPO法人に対する寄附金の場合は、『(その年中に支払った認定NPO法人等寄附金の額の合計額-2,000円)× 40% = 認定NPO法人等に対する寄附金特別控除額(100円未満の端数切り捨て)』に変わります。
公益社団法人などへの寄附のケースでは、『(その年中に支払った公益社団法人等に対する一定の要件を満たす寄附金の額の合計額-2,000円)× 40% = 公益社団法人等寄附金特別控除額(100円未満の端数切り捨て)』です。
参考:No.1260 政党等寄附金特別控除制度|国税庁
参考:No.1263 認定NPO法人に寄附をしたとき|国税庁
参考:No.1266 公益社団法人等に寄附をしたとき|国税庁