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円安シフトが加速する中で噂される「為替介入」とは何か?

2023.10.05

為替介入とは、通貨当局が相場を安定させることを目的に通貨を売買することです。介入方法には『円買い』『円売り』があり、タイミングや規模は市場の動向・社会情勢に基づいて判断されます。為替介入の目的やデメリット・事例を見ていきましょう。

為替介入とは

円安・円高が過度に進むと、投資家たちは「政府による為替介入があるのでは?」と警戒します。為替介入とは、どのようなものなのでしょうか。

通貨当局が行う通貨売買

為替介入とは、通貨当局が為替相場安定のため、為替市場で通貨間売買を実施することです。正式名称を『外国為替平衡操作』といい、円高を抑制するための『円売り介入』と、円安を抑制するための『円買い介入』があります。

国が意図的に為替相場に影響を与えることは市場原理に反する上、さまざまな弊害を生みかねません。特に先進国では、「1国の利益のためだけに為替介入するのは控えるべき」との考え方が基本とされます。

とはいえ『投機筋』と呼ばれるヘッジファンドや機関投資家らの攻勢により、通貨高・通貨安が不要に加速するケースも少なくありません。国が投機的な動きをけん制して市場の安定を保つことには、一定の理解が示されているのが実情です。

為替介入の目的

為替介入の主な目的は、通貨相場の急激な変動を抑制し、安定性を保つことです。日本では、円高・円安が急激に進んだ場合に実施されてきました。

円高・円安とは、円が他の通貨に対し、どのくらいの価値があるのかを相対的に示したものです。例えば円高は、円1単位で交換できる他通貨の単位数が相対的に多い状態を指します。反対に円安は、円1単位で交換できる他通貨の単位数が相対的に少ない状態です。

為替相場は市場の需要と供給によって変動しますが、急激な変動は望ましくありません。急激な円高・円安には以下のようなデメリットがあります。

  • 円高:輸出主体企業の業績悪化・国際競争力の低下
  • 円安:輸入コスト増大による物価上昇

為替介入を実施して相場の安定を図ることは、日本経済全体の安定につながると考えられます。

参考:円高、円安とは何ですか? : 日本銀行 Bank of Japan

為替介入の仕組み

為替介入は『外国為替及び外国貿易法』第7条第3項に基づき、財務大臣の権限で実施されます。ただし実際に介入を行うのは、外国為替資金の運営事務を取り仕切る日本銀行です。

各種資料等から財務省が「為替介入が必要である」と判断した場合、日本銀行に具体的な介入指示が出されます。日本銀行は指示内容に従って、為替介入を実施する流れです。また状況によっては、日本銀行が海外の通貨当局に為替介入を委託するケースもあります。

為替介入で『円買い介入』『円売り介入』のどちらが実施されるかは、市場の状況次第です。

  • 円高を抑制したい場合:円を売ってドルを購入する
  • 円安を抑制したい場合:円を買ってドルを売る

為替介入で市場に影響を与えるためには、大量の為替介入金資金が必須です。介入金額は兆を超えるケースが多く、過去には約1年数カ月で30兆円を超える資金が投入されたケースもあります。

参考:外国為替及び外国貿易法 | e-Gov法令検索

為替介入の種類

通貨当局が為替市場に介入する場合、『単独介入』『協調介入』のいずれかが選択されます。

単独介入とは、1国だけで為替介入を行うことです。対して協調介入とは、2カ国以上の通貨当局が協働して為替介入を実施することを指します。

市場に与える影響が大きいのは、当然ながら協調介入です。ただし、協調介入が実施されるには、国家間の協議と合意が必須となります。単独介入と比較して、協調介入の実現はハードルが高いのが現状です。

過去に協調介入が行われた例としては、1985年の『プラザ合意』や、2011年の東日本大震災後、G7による協調介入などがあります。

また、単独介入の場合でも、他国への配慮は必要です。国が為替市場に介入することは、他国の通貨レートにも影響を及ぼします。安易に単独介入を繰り返すことは、国際的な信用低下につながる恐れがあります。

為替介入の資金はどこから調達するの?

資金と株価チャート

(出典) pixta.jp

国が為替介入を行うためには、為替介入資金が必要です。資金調達がどのように行われているのかを見ていきましょう。

円買い介入は外貨準備

外貨準備とは、通貨当局が保有する外貨建ての資産です。日本の場合は日本政府と日本銀行が所有しており、外貨預金や証券・金などで構成されています。2023年7月末時点での日本の外貨準備高は、1兆2536億7300万ドルあり、中国に次ぐ多さです。

円安が過度に進んだ場合、政府は保有しているドル建て資産を為替市場で売却し、円の買い入れを実施します。為替市場の円を減らし大量のドルを投入することで、円高・ドル安に導くのが狙いです。

円売り介入は国内市場

円高の是正を目的とする為替介入では、為替市場における円の売却・ドルの買い入れが実施されます。このときの円の調達先は、国内市場です。日本政府は『国庫短期証券』と呼ばれる割引債を発行することで、円を市場調達しています。

国庫短期証券は、資金不足の際に発行される国債の1種で、つなぎ資金のようなものです。公募入札方式で発行されますが、一般人の入札は認められていません。金融機関のみが入札に参加でき、2・3・6カ月または1年の4種類から選択できます。

2023年9月に実施された第1179回の公募では、発行予定額は額面金額で5兆8,000億円程度となりました。

参考:国庫短期証券(第1179回)の発行予定額等 : 財務省

為替介入によるデメリット

為替の分析

(出典) pixta.jp

政府が為替介入を実施するデメリットは、「一時的な効果に過ぎない」「国家間トラブルに発展する恐れがある」という点です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

介入効果に限界がある

市場は、『ファンダメンタルズ』と呼ばれる基礎的な経済諸条件に大きく影響を受けています。為替介入で一時的に流れが変わったとしても、市場におけるインパクトは限定的です。市場に円安や円高の圧力が強くかかっているときは、一時的な介入を行ってもすぐに元の流れに戻る傾向があります。

特に円安を抑制して円高に誘導する場合、外貨準備高をにらみながら余力を測らなければなりません。下落する円を買い支えるのにも限界があり、長期的な介入や頻回な介入が難しくなります。

米国の理解を得られないことも

日本は主にドル円で為替介入を行っていますが、過去全ての介入で米国の理解を得られたわけではありません。日本の為替介入が米国の利益を損なうと見なされた場合、2国間の関係が悪化するリスクがあります。

国際市場の基軸通貨・ドルを持つ米国は、他国の為替介入について特に強い警戒感を抱いているのが現状です。主要貿易相手国を調査する『外国為替報告書』を年に2回発表しており、日本は2016年から『監視対象』に含まれていました。(2023年6月に除外)

米国からの批判・関係悪化を避けたい日本としては、為替介入が米国の理解を得られるかどうかも大きな課題となります。

過去に行われた為替介入の事例

株価分析

(出典) pixta.jp

日本政府はこれまでにさまざまな為替介入を行ってきました。2000年代以降の主な事例を紹介します。

2003年の介入

日本政府と日本銀行が2003年1月から2004年3月までに行った、大規模な円売り介入です。政府と日銀は1年3カ月の間に、約35兆円ものドル買い・円売りを実施しました。

介入は長期間にわたったものの、市場の円高の流れは止まっていません。2003年に120円台に達していたドル円相場は、2004年1月には105円台にまで円高が進んでいます。円が110円台を回復したのは、2004年3月になってからです。

2003年に円高が進んだ原因は、市場全体が「米国は『双子の赤字(財政収支・経常収支の赤字)』により、ドル安を容認している」との見解を持っていたためといわれています。

デフレからの脱却を目指していた日本政府は、『デフレ+円高』という深刻な事態を避けるため為替介入に踏み切りました。

2011年の介入

2011年の3・8・10・11月、日本政府は円高の進行を止めるため大規模なドル買い・円売りを繰り返しています。その結果、2011年の介入総額は14兆円に上りました。

リーマンショックやギリシャ危機の影響を受け、市場のトレンドは円高・ドル安に傾いていました。そこに東日本大震災が発生し、『有事の円買い』によりさらに円高の流れが強まったかたちです。2011年10月には、円は1ドル75円35銭という戦後最高値を記録しています。

政府・日銀は「投機的な円買いをけん制する」として、大規模なドル買/円売り介入を実施しました。これにより75円ラインは死守されましたが、すぐに円高の流れが変わったわけではありません。

当時の円高は投機的なものというよりは、市場のニーズに基づくものでした。2013年頃まで、円高のトレンドが続くこととなります。

2022年の介入

2022年9~10月にかけて行われた円買い・ドル売りの為替介入です。日本が円安をけん制するための介入を行うことは非常に珍しく、24年ぶりとなりました。為替介入総額は約9兆円に上っています。

2022年初頭に110円台だったレートが9月には140円台を突破し、10月には150円台にまで円安が進みました。政府は円安の流れを止めるため、為替介入に踏み切ったと見られています。

今回の為替介入は米国の理解を得て実施されており、一定の効果はあったとするのが一般的な見解です。ただし、円安の原因の一つは、『金利を引き上げる米国』『金融緩和を維持する日本』の金利差であるといわれています。為替介入による効果は限定的で、円安のトレンドは継続中です。

為替介入以外で為替相場に影響を与える要素

株価チャート

(出典) pixta.jp

為替相場に影響を与えるものとして、『要人の発言』『政策金利』などがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

要人の発言

市場を円高または円安にコントロールしたいとき、要人のちょっとした発言が為替介入と同様の効果を発揮することがあります。これは一般に『口先介入』などと呼ばれます。

例えば日本では、2015年に前日本銀行総裁・黒田東彦氏の発言で為替相場が動いたケースが有名です。円安が進む中、黒田氏は円安に否定的とも取れる発言を行っています。市場はすぐさま反応し、124円台半ばだったドル円レートは、122円台まで円高が進みました。

このほか、FRB(米連邦準備制度理事会)やECB(欧州中央銀行)の要人の発言にも、市場は大きく反応します。

政策金利

政策金利とは、各国の中央銀行が金融政策として定める金利です。金利はその国の経済に合わせて設定され、景気が良いときは引き上げられ、不景気になると引き下げられます。為替市場では、政策金利の高い国の通貨の需要が高く、低い国の通貨は売られる傾向です。

2008年にリーマンショックが起こり、世界各国が金利を引き下げざるを得ない状況となりました。しかし近年、米国をはじめとする多くの国が政策金利の利上げに踏み切っています。

投資家たちは低金利を維持する日本の円を売り、利率の高いドルやユーロなどを購入する動きが顕著です。

構成/編集部

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