生活密着型のサービスを提供する店舗や拠点などの現場では、深刻な人手不足が課題となっている。企業側の努力により賃金を引き上げる施策が行われているほか、外国人の採用拡大、ロボットやIT機器を活用した省人化施策が進められている。
一方で、物価上昇を受けて厚生労働省が最低賃金の大幅な引き上げを決めたことにより、企業では更なる負担が求められることになった。
このような状況において、当事者となるサービス業従事者が本当に求める時給はいくらなのか、また時給以外に離職の原因となっている事象は何かを明らかにするため、ClipLineはこのたび、サービス業(外食、小売、運輸、介護)の離職経験者1,033名を対象にした「離職理由と時給についてのアンケート調査」を実施し、その結果を発表した。
離職理由、「仕事がきつかった」が最多に
Q1.職場を選ぶ際に重視した点は何でしたか(複数回答可)。
給与や待遇よりも通いやすさや自分の都合に合わせられることのほうが上位という結果になった。職業属性別の傾向は以下の通り。
・学生:他の属性に比べて「給与・待遇」を重視する割合が高い。「自分の都合に合わせて働けること」「長く働けること」は重視する割合が低い。
・主婦/主夫:他の属性に比べて「自分の都合に合わせて働けること」「交通アクセス」を重視する割合が高い。
・フリーター:他の属性に比べて「自分の都合に合わせて働けること」「交通アクセス」を重視する割合が低い。
・シニア:他の属性に比べて「長く働けること」を重視する割合が高い。「給与・待遇」を重視する割合が低い。
Q2. もっとも離職に影響した理由はどれですか。
勤続期間別に離職理由を集計したところ、勤続期間に関わらず「仕事がきつかった」が最も多い理由となった。ただしその中でも勤続期間が短い人ほどその割合が高くなっており、入社前のイメージとのギャップがあったり、なかなか仕事に慣れることができなかったなどの理由が考えられる。
ただし、1年以上勤続している場合でも最も回答率の高い離職理由であり、自身の役割の変更や店舗の人手不足などで仕事の負荷が上がった場合、ベテランスタッフであっても離職の可能性となり得るため、注意が必要と言えそうだ。また、2位以降の要因が重なって「きつい」と感じる遠因になっている可能性もある。
反対に、「上司や同僚と気が合わなかった」など職場環境を理由とする離職は勤続期間が長い人ほどその割合が高くなっている。長く働く中で、店長の異動や同僚の離職などにより自身の居心地が悪くなるとそれが離職のトリガーになることが伺える。
※上記のグラフでは「転居、卒業、結婚、介護など生活の変化があった」「通勤が大変だった」「学業や生活との両立について理解がなかった」の3項目を「自主的なコントロールが難しい離職項目」と判断して除外している。すべての項目を含む結果はこちら。
※以降の設問では、離職理由で「転居、卒業、結婚、介護など生活の変化があった」「通勤が大変だった」「学業や生活との両立について理解がなかった」の3項目を選択した回答者を「自主的なコントロールが難しい離職」と判断して調査から除外している。