リアル会場が大盛況だった『VALORANT Masters Tokyo』
日本での『VALORANT』人気を象徴する出来事が、6月11日から6月25日にTIPSTAR DOME CHIBAと幕張メッセで開催された国際大会『VALORANT Masters Tokyo』の成功だ。『VALORANT』を発売しているライアットゲームズは、世界中でリーグやインターナショナルイベントを開催しているが、今回は世界各地のインターナショナルリーグ上位チームで世界最高峰の12チームが参戦。6月24日と6月25日に幕張メッセで行なった試合では総来場者数1万7000人以上を動員した。増上寺でドローンによるセレモニーを行い、イベント開催中に千葉モノレールで『VALORANT Masters Tokyo』ラッピングの車両を走らせるなどプロモーション面でも大きな話題を集めた。Yueさんも公式実況者として現地で盛り上がりを体感した。
「それまで『VALORANT』の世界大会が日本で開催された事例がないなかで、世界一を決める場所として日本が選ばれました。ライアットゲームズが開催地を決めていますが、日本の『VALORANT』のコミュニティの熱気の強さがすごくて、それが運営側に伝わって開催されたと聞いています。今まで日本で開催されたFPSの大会の中で、僕が見てきたものでは一番の盛り上がりでした。じつは今回、日本チームは予選段階で負けて出場することができませんでした。それでも大きな盛り上がりを見せてくれたのは、これまでも世界大会を観ていた人が多く、海外の有名チームを把握して観戦していたことも大きいと思います。会場では、スーパープレーが出ると観客が一丸となって目の前で起きたプレーに対して盛り上がって、その一体感を強く感じました」
一方でせっかくの世界大会に開催国である日本チームは参戦できなかった。Yueさんは、それを『VALORANT』をもっと盛り上げるための課題に挙げている。
「日本のチームはもちろんトップの位置を目指していますが、そこを狙うにはまだまだ実力が足りないと感じました。いまは欧米勢が非常に強くて、意外なところではトルコも強いです。日本では家庭用ゲーム機で遊ぶことが一般的ですが、欧米では子供でもパソコンでプレーしています。子供の頃から親しんでいる母数が多いので、そこは文化の差としても大きいと感じました」
日本チームも国際大会に出場する機会を増やしているので、今後はさらに大きな成果を挙げることを期待したい。さらに会場では、大会のオフィシャル商品としてイベント関連グッズが販売されて人気を集めていた。アパレル関連では、ユナイテッドアローズとコラボしたファッションアイテムが販売されるなどZ世代やオシャレな層を狙った商品も多かったようだ。
「公式グッズはもちろんですが、今はチーム関連のグッズやアパレルを購入される人が多いです。大会では応援しているチームや大会の関連グッズを着て参加する人が目立ちました」
新たなゲームトレンドを生み出す配信者(ストリーマー)の存在
Yueさんは、公式大会での解説・実況以外では、動画配信サイト『Twitch』でゲーム関連の実況配信や日常の雑談動画などを配信する活動を行っている。『Twitch』はゲーム実況などを配信するサイトとしてスタートし、多くのストリーマーと呼ばれる配信者が利用するサービスになった。Yueさんも別のゲームの実況配信をする配信者として、『Twitch』などで活動していたが、『VALORANT』をきっかけにeスポーツキャスターとしての地位を確立した。配信者となったきっかけは、中学時代にパソコンを購入してもらって友達を始めたオンラインゲーム。当時は、まだプロゲーマーや配信者もメジャーではない時代だった。
「ゲームとの出会いは中学生です。親にパソコンを買ってもらって、学校の友達と一緒にゲームをやろうと言われてオンラインでプレーするMMORPGに誘われたことがきっかけでした。そこからFPSにも誘われてという形です。もし友達から誘われてなかったら、パソコンでゲームをすることは考えてなかったかもしれないです。当時、昼は学校の友達、夜はネット上の友達と遊んで、自分の中ではネットが第2の居場所というイメージでした。最初の配信は、高校生の頃に始めた『ニコ生』で、ひとりでゲームをする機会があった時に、それを人に見てもらって何かしらの感想が欲しくて、さびしさを紛らわせるために始めました。まだ『Youtube LIVE』や『Twitch』がなかったので、『ニコ生』が全盛でした。ゲームの実力はそれほどでもなかったですし、正直、あの時の自分に何か見られる要素があったかというとなかったと思います。配信の視聴者数を伸ばそうとしてやっていたというよりも、ほかの人がやっているし時間あるからやってみようという感じでした。当時は、そもそもゲームからお金を稼ぐという発想はなかったですし、プロゲーマーとして生計を立てる人もほとんどいませんでした。将来の仕事としてもまったく考えてなかったです」
Yueさんは、『VALORANT』以前は海外で人気だったオンラインFPS『カウンターストライク:グローバル オフェンシブ(Counter-Strike:Global Offensive/以下、CSGO)』をメインに活動していたが、それだけで食べていくことは難しかった。当時は、一般の仕事と両立して配信やゲーム実況を副業的にやっていたという。
「『CSGO』は好きなゲームでしたが、国内ではファンが少なかったです。その時に今のZETA DIVISIONの前身チームが『VALORANT』に移行するというニュースが流れて、僕も移行しようと決意しました。ゲーム実況者としてのきっかけは、友達が『CSGO』で参加者を集めて大会を開催する時に配信と実況をやって、それを見た方に『VALORANT』公式大会のキャスターとしてやってみないかと声を掛けてもらったのが始まりです」