「安芸灘とびしま海道」のはじまり
国道185号線に戻って20分ほど走ったところで、再び橋へと続く標識を発見しました。
橋の名前は「安芸灘(あきなだ)大橋」。7つの島をつなぐ「安芸灘とびしま海道」の入り口にあたり、最初の島である下蒲刈(しもかまがり)島へと続きます。ところが…、どうやら安芸灘大橋は通行料がかかるようなのです。
「自動車専用道じゃないといいけど…」
有料道路と聞くと、カブ乗りのほぼ全員が心配になるポイントかもしれません。自動車専用道とは、その名の通り自動車のみが通行できる道のこと。原付二種であるクロスカブは通行できないため、回り道や別のルートを探さなければいけなくなるのです。
不安を胸に橋への道を進んでいくと、料金所の看板に「二輪車 125ccまで50円」の文字を発見しました。ホッとすると同時に、通行料の安さに思わず笑ってしまいます。このリーズナブルさも、島旅にカブをおすすめしたい理由のひとつです。
一見穏やかに見えた瀬戸内海ですが、橋の上から見てみると、海面にいくつもの筋や渦のようなものが浮かび上がっています。その激しさは「瀬戸のうずしお」で有名な淡路島付近を思い出すほど。小さな島が集まる瀬戸内海ならではの風景です。
さて、下蒲刈島へと着くと、予想していたものと違う風景に出会いました。石畳の道と立派なお屋敷が続く、江戸時代のような景色。「三之瀬地区」と呼ばれるエリアです。
実は下蒲刈島は、かつて関所として栄え、大名や公家が宿泊する本陣が集まったり、朝鮮通信使の宿泊地となったりした場所。現代はそれらの建物が資料館や文化財となり、観光客に人気なのだそうです。
言われてみれば当時は陸路が発達しておらず、遠くから人や物を運ぶには海路が一番。拠点や宿泊場所として、瀬戸内海の島々は優れていたのでしょう。
付近には、当時使われていた「櫂伝馬船(かいでんません)」という小舟の展示もありました。
櫂伝馬船はスピード性・安定性に優れ、高速船として海難救助や緊急を要する際の連絡船として使われていました。
水軍(海賊船)が用いた舟がルーツにあり、現代では「櫂伝馬競漕」という伝統的なレースが行われているのだそう。漕ぎ手・船頭・太鼓打ちなど18人が乗って競うというのだから、想像するだけで迫力満点です。