「知らない道を走って冒険がしたい!!」
ある日突然、気持ちが爆発しました。
スマホが1台あれば、地図でも観光案内でも飲食店でも、家から一歩も出ずに情報を集められる現代。ライターとして暮らしている私にとってツーリング前のリサーチは欠かせないもので、行くべきスポットをすべてマップにお気に入り登録して、効率よく回れるルートを練るのが恒例となっていました。
ところが便利になったのとは裏腹に、ツーリングのワクワク感は薄れてしまっていたのです。
初めてバイクに乗った時みたいな、何が待ち受けているかわからない旅をもう一度したい!…そう思い、行き先と日程を決めずにカブで走り始めたのでした。
ナビを見ずにブラリ旅
やってきたのは、広島県の海沿いにのびる国道185号線。8月の終わりが近付くこの日、気持ちよくカラッと晴れた空の下、穏やかな瀬戸内海は深緑色にキラキラと太陽の光を反射して輝いていました。
事前に決めていた通りにスマホのナビを消して、ただ西へ向かって愛車のクロスカブを走らせます。頼りにしているのは、ライダー御用達の紙地図「ツーリングマップル」と、自分の勘のみ。
顔を左側へ向けると、水平線がまったく見えないほどたくさんの島が、幾重にも重なって海に浮かんでいるのが見えました。
それだけではありません。竹原市と東広島の境付近に入ってからは、いかだのようなものが何十個もかたまって浮かんでいる光景が見られるようになったのです。
道沿いには、「牡蠣直売」「生かき」といった看板を出すお店が続いていることに気が付きました。つまり海に浮かぶいかだのようなものは、牡蠣の養殖場なのでしょう。
てっきり牡蠣は広島の海全体で養殖されているものだと思っていたのですが、後ほど調べたところによると、養殖場は県西部にかたまっているのだそう。つまり牡蠣のいかだが見えてきたら、広島の西半分へと突入した目印だったのですね。
橋があれば必ず渡る
今回の旅の冒険感を高めるため、ナビを使わないこと以外にもうひとつ「橋を見かけたら必ず渡る」ということを自分の中で決めていました。瀬戸内海の島は数十分~3時間ほどで一周できるぐらいの規模であることが多く、寄り道するにはもってこいなのです。
さっそくこの旅で最初の橋が遠くに見えてきました。標識によると、橋の名前は「大芝大橋」。そして続く島の名前は「大芝島」です。
スレンダーな桁が特徴の大芝大橋の上は、サワサワと心地よい風が吹き、鼻の奥に潮の香りが届きます。
辿りついた大芝島は、ぐるっとまわるだけであれば20分ほどの規模でした。島内は海沿いを中心に民家が並び、小さな商店やカフェがあります。北部にある1棟貸しの宿泊施設の前を通った時は、大学生ぐらいの若者たちがパーティをしていたのが印象的でした。宿は白を基調としたモダンな雰囲気で、デザイナーズっぽいインテリアが目に焼き付きました。
大芝島に限らず、最近の「島」にはおしゃれな施設が増えた気がします。いつか行ってみたいな…と思いつつも、砂埃にまみれてバイクで駆けまわる私にとってはハードルが高く、つい羨ましくなってしまうスポットなのです。
個人的に一番気に入ったのは、島の外周を通る道でした。
比較的天候が荒れにくく、波が低い瀬戸内海ならではかもしれません。全体的に海との距離が近く、場所によっては堤防すらありません。そして何より、車1台がやっと通れるぐらいの道幅の区間が点在しているのです。
これまで色んな場所を走ってきましたが、これほどの狭さと気持ちの良さを併せ持つ道は滅多に見かけません。車で来たのであれば「どうやって通ればいいんだろう!?」と困ってしまいますが、どんな場所でもスイスイ走れるクロスカブなら躊躇なしに走れます。
これこそが、私が島旅にカブをおすすめしたい理由のひとつなのです。