懐かしくてあたたかい、すべてを洗い流してくれる…風呂なしの魅力、そして銭湯の癒し
風呂なし物件は昭和30年~50年代に建てられたものが多いという。当然そこには、最先端の機能もトレンドに則した設備もない。それでも、風呂なし物件には今だからこそ愛したい魅力がある。
「風呂なし物件には、イマドキの味気ない真っ白な空間ではなく、味のある畳と木の柱、そして板張りの天井など懐かしい空気感があります。時をかけて出てきた味わいは新築では出せない姿と形。それらはとても魅力的です」
「銭湯同様、風呂なし物件も少しずつ消えていく絶滅危惧種のようなもの。だからこそ、こんな素敵な物件があるんだということがもっと伝わればいいなと思っています」
そして、銭湯の魅力については、
「心も体も元気になれるところですかね。私も銭湯にたくさん救われました。やっぱり広い湯舟につかると色んなものが流れ出るというか、心にためているストレスなんかも一緒に洗い流される感じがします。今日もお疲れ様でしたと自分を労う時間が持てるのはとてもいいなと思っています」
「イマドキの銭湯は、新規顧客獲得のためにイベント行っていたり、でも常連さんのことも考えて昔ながらの菖蒲湯や柚子湯など季節を感じさせる催しも忘れず、幅広い世代のお客さんを楽しませようと頑張っているんです。また、昔と比べて清潔感が圧倒的に良くなり、掃除が行き届いていたり、衛生面にも努力を惜しまない点が素晴らしい。色んな地域でいろんな銭湯を楽しむために、格安の風呂なし物件を最低限の荷物で住みかえていく生活も、もしかしたら楽しいかもしれません」
最後に、「東京銭湯ふ動産」の今後の展望を聞いた。
「今は一人で運営していることもあり、できる限り長く続けれることに力を注いでいますが、将来的には銭湯さんと協力して風呂なし物件自体の魅力や価値をもっと発信できたらと思っています。素敵な物件も多いので記録に残す意味でアートブックなんかも作れたらいいですね」
取材協力
東京銭湯ふ動産
文/太田ポーシャ