数年前から「風呂なし物件」が注目されているというニュースや噂をよく耳にする。至極シンプルなライフスタイルを堪能すべく、「風呂なし」の住まいをあえて選ぶ若者が増えているとか。
本当にそうなのだろうか?ここで、興味深い調査結果を見つけたので紹介しよう。
お風呂に関わる企画・開発・販売などを行うバスリエ株式会社が行なった「湯舟に浸かる時間」の年代別調査だ。
45分〜1時間以上の長湯をする年代は年配者が多いかと思いきや、20代以下や30代の方が多かったのだ。つまり、若者のほうがより長湯をする傾向にあると言える。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000235.000050030.html
若者、実はお風呂大好きっぽい。なのに何故、風呂なし物件がこれほど話題なのか?
今回、尽きることのない疑問を解消しようと、「風呂なし物件のみ」を紹介する不動産情報サイト「東京銭湯ふ動産」を運営する鹿島さんに話を聞いた。不動産業界の中でも一際異彩を放つこのサイトは2018年からサービスをスタートさせ、そのニッチな特長で一躍話題に。
運営する鹿島さんに、風呂なし物件の「ホントのトコロ」をお聞きしたところ、そこには意外すぎる事実、日本の片隅で噴出する問題があったのでご覧いただこう。
風呂なし物件は人気がない!?目指すは新たな暮らしの提案
巷では風呂なし物件が人気で、鹿島さんが運営するサイトには問い合わせが殺到している…と聞いていたのだが、
鹿島さん「正直人気があるとは思っていません。問い合わせが増えているという実感もありません。開始当初、思った以上に反響があっただけなのかなと思います」
–そうだったんですか。
「一般的に風呂なし物件自体、不動産屋でもなかなか紹介されない物件ですし、人気がないというよりは「お金がない」「仕事がない」ような人しか住めないという、少々ネガティブな印象を持たれていたようで…。弊サイトでは『銭湯のある暮らしができる物件』として風呂なし物件を紹介しようと思いました。つまり見せ方を変えたんです。その結果、多くの方々に新たな暮らしの提案が受け入れられ、少しだけ話題になったんだと思います」
そもそも、風呂なし物件を積極的に紹介するサイトなど前代未聞。不動産屋としても収益性の少ない風呂なし物件を紹介するよりは、少しでも高く風呂あり物件を紹介したほうが利益ちに繋がる。そのため、風呂なし物件に対しては消極的になりがちだった。
しかしそんな「不動産の陰」に違う角度から光を当てたことで大きな注目を集めたのだ。
2018年に始めた「東京銭湯ふ動産」は現在、鹿島さん一人で運営している。まずは立ち上げのきっかけを聞いた。
「以前、私は『東京銭湯 – TOKYO SENTO -』という銭湯を紹介するサイトでライターをしていました。当時、廃業していく銭湯を目にすることも多く、一つでも残すために何か力になれないかと考えていたんです。また、不動産仲介の仕事もしており、風呂なし物件のイメージも変えたかった。そこでまずは『銭湯と風呂なし物件を紹介するツアー』を始めました」
ツアーを始めるにあたり、鹿島さんは念入りに風呂なし物件を調査。その結果、新宿や渋谷など利便性のいい場所に格安の風呂なし物件が数多く残っており、しかもその近く(徒歩15分圏内)には2件~3件の銭湯があることが判明。光が射した。
「そういう物件を取り上げ、『風呂がないんじゃない、銭湯があるんだ』をモットーにすれば銭湯に通う人が一人でも増やせるのではないかと思い、サイトを立ち上げることになりました」
風呂なし物件のイメージも一新、さらには銭湯の魅力も伝えられる。鹿島さんの2つの想いを叶える術がこの「東京銭湯ふ動産」に集約されている。