普段、当たり前のように目にしている物でも「名前の由来や意味までは知らない」という言葉は少なくない。「食パン」も、そのような語源が知られていない言葉の一つだ。食パンそのものを知らない人はほとんどいないが、なぜ「食パン」と呼ぶのかと聞かれると、説明できる人は多くないはず。
そこで本記事では、「食パン」の正式名称や名前の由来、他のパンとの違いなどについて解説する。
「食パン」の正式名称は「主食用パン」
「食パン」は「主食用パン」を正式名称とする説が有力だ。文字通り「主食として食べるパン」を意味しており、日本にパンが紹介される際に使われた「主食用パン」という名称が縮まって広がったとみられている。
別名を「本食(ほんしょく)パン」とも呼ばれ、パン職人の間では「本食」と略される場合もある。
「食パン」の由来と起源
「食パン(主食用パン)」は、パン生地を長方形の焼き型に入れて焼いたパンの総称だ。イギリスで作られている「山型食パン」や、フランスの「パン・ド・ミー」に起源を持ち、日本人の好みに合うよう材料の比率や焼き加減を調整している。
日本の食パンの元祖は、イギリス人のロバート・クラークが横浜の外国人居留地に創業した「ヨコハマベーカリー」と言われる。クラークの後を継いだ日本人のパン職人・打木彦太郎によって食パン作りは続けられ、現在も横浜最古の製パン業者「ウチキパン」として営業を続けている。
「食パン」の対義語は「菓子パン」
「食パン」は食事の際に主食として食べられるパンを指すことから、対義語は「菓子パン」とされる。食パンが日本に紹介されるのと時を同じくして、あんやクリームなどをパン生地で包んだ「あんぱん」「クリームパン」も登場したため、両者が正対関係に置かれたものと見られる。
「食パン」の種類や各部位の名称
食パンの由来に加えて、食パンの種類や各部位の名前についても知っておくと知識の幅を広げられるはずだ。身近な食べ物にも関わらず、知らないことが多い食パンの知識をチェックしてみよう。
形状によって2種類に分かれる「食パン」
食パンは、焼き上がったときのパンの形状によって「角食パン(角型食パン)」と「山食パン(山型食パン)」の二種類に分かれる。
・角食パン(角型食パン)
型に生地を入れたあとに蓋をして四方をまんべんなく焼くタイプの食パン。四角い型を使用して焼き上がることから「角型食パン」、略して「角食(かくしょく)パン」「角食」と呼ばれる。生地の水分が蒸発しないため、しっとりした焼き上がりになる。
・山食パン(山型食パン)
型に生地を入れたあとに蓋をせず焼き上げるタイプの食パン。焼き上がりの段階でパンが山のような形に盛り上がることから「山型食パン」、略して「山食(やましょく)パン」「山食」と呼ばれる。生地が上に伸びるためパンのきめが粗く、さっくりした焼き上がりとなる。
「食パン」の耳は「クラスト」、白い部分は「クラム」
パンの外側(焼き上がる段階で焼き型と接していた部分)の焼き色が付いた硬い部分は、通常「耳」と呼ばれるが、「クラスト(crust)」や「皮(表皮)」とも言う。
また、クラストの内側にある柔らかい部分は、日本語で何と呼ぶのか迷う人も多いが、パン職人などのプロの世界では「クラム」「内相」と呼ぶのが一般的だ。
「食パン」を英語で言うと?
欧米にはパンを主食とする国・地域が多い。一口に「パン」と言っても多くの種類があるため、英語で食事や買い物をする機会がある場合は、「食パン」の英語表現も知っておくと良いだろう。
「食パン」の英語表現
日本の一般的な食パンを英語で表現する場合は“white bread”が適当だ。一方、全粒粉(小麦の表皮なども混ぜ込んだ小麦粉)で作られた色の濃い食パンは“whole wheat bread”と呼ばれる。
ちなみに、ジャムやパターなどを付けていない状態の食パンは“plain bread”、トースターで焼いた食パンは“toast”となる。
「食パン」の英語での数え方は?
食パンの英語での数え方は、パンが切られている状態か、一斤丸ごとかによって異なる。スライスした状態の食パンは“a slice of bread”(一切れの食パン)。一方、丸ごとの食パンと表現したい場合は“loaf”(ひとかたまりのパン)を使用して、“loaf of bread”(一斤の食パン)」、二斤であれば“two loaves of bread”(2斤の食パン)となる。
文/編集部