日常会話で何気なく使う言葉のなかには、漢字で表記すると読むのが難しい言葉がある。「暈す」もその一つだ。
本記事では暈すの意味や読み方、使い方について解説する。例文や類語もチェックして、表現の幅を広げるのに役立てててほしい。
「暈す」とは
「暈す」の読み方は「ぼかす」。線や色彩の境目がはっきりせず、ぼんやりしている状態を指す。絵のような実体のあるものだけでなく、言葉や表現といった実体をもたないものに対しても使われることがある。例えば「会話の内容を暈す」は、意味をはっきりと言わず、遠回しに表現することを指す。
「暈す」の使用シーンと例文
暈すの使い方をより具体的にイメージするために、使用シーンと例文を見ていこう。日常で耳にすることの多い言葉でもあるので、使えるシーンを確認してほしい。
【例文】
「輪郭を暈して描くのも、絵画における技法の一つだ」
「話の要所を暈すことで、聞き手の想像力を引き出せる」
「SNSに写真を上げる際、通行人の顔を暈すのはプライバシーの観点からして重要なことだ」
「言葉を暈して伝えるのは有効だが、ときにははっきり伝えることも大切だ」
「最近では、無料のアプリでも写真を暈すことが可能になった」
「暈す」の類語と言い換え表現
ここでは、暈すと似た意味を持つ類語と言い換え表現を紹介する。シーンに応じた表現を選択することで、より正確にニュアンスを伝えられるはずだ。
ぼやける
「ぼやける」は、はっきりしない、ぼんやりしている状態を表す言葉。「暈す」と同様に実体を持つものと持たないもの、双方に使用される。漢字で表すと「暈ける」となり、意味・漢字ともに「暈す」との共通点が多い。視界がかすんだり、はっきり見えなかったりする際に使う「目がぼやける」は日常の中でも頻繁に耳にする表現だ。
【例文】
「視界がぼやけるときは目をつむって休憩するべきだ」
うやむや
「うやむや」は物事がはっきりしないことを意味し、漢字で書く場合は「有耶無耶」と表す。「議論は内容がうやむやのまま終了した」というように使われ、曖昧な状態を示す言葉として使われる。思い悩んですっきりしない心の内を表現する際にも使われる。
【例文】
「情報がうやむやになったまま、その会議は終わってしまった」
婉曲
「婉曲」は物事を遠回しに述べて、穏やかに伝えることを指す言葉だ。言葉に深みをもたらしながら、角が立つことを防ぐ遠まわしな表現は「婉曲表現」とも呼ばれる。
【例文】
「このアーティストの歌詞は婉曲表現が魅力的だ」
曖昧
「曖昧」は態度や物事がはっきりせず、明らかでない状態を表す言葉。内容が掴みづらく、解釈が多数存在するような表現のことを指す。「曖昧な回答で明言を避ける」というように使われ、どっちつかずな態度を表す言葉として使われることも多い。
【例文】
「曖昧な態度ばかりとっていると、相手に誤解されることもある」
「暈」の漢字が含まれる熟語
最後に、「暈す」に含まれている「暈」の漢字が使われている熟語を紹介する。「暈す」との共通点を意識して読むと、それぞれの熟語に対するイメージがしやすいはずだ。
眩暈
「眩暈」は「めまい」もしくは「げんうん」と読む。めまいは「目眩」とも書き、漢字の通り目が眩んでふらふらすることを指す。「目が眩む」と「目がぼやける」は双方とも視界がはっきりしない状態を表す。
【例文】
「歩いていると眩暈がしたので、木陰で休憩することにした」
日暈
「日暈」は「ひがさ」もしくは「にちうん」と読む。太陽を囲むように現れる光の環を指す言葉で、薄い雲である巻層雲が太陽と重なった際、光の屈折が原因となって発生する現象だ。
「暈」という漢字だけでもほとんど同じ意味を持ち、この場合は太陽だけでなく、月の光によって生じた環のことも指す。月の光によって生じたものは「月暈」とも呼ばれている。
【例文】
「空を見上げると、太陽の周囲にきれいな日暈が生じていた」
暈繝
「暈繝」は「うんげん」と読み、「繧繝」や「雲間」といった漢字でも表される。同じ色を濃淡を変えつつ層をつくるように彩る彩色法を意味し、「暈繝彩色」と呼ばれることも多い。着物や織物、寺院の装飾などで多く用いられ、この彩色法で制作されたもの自体を暈繝と呼ぶこともある。
【例文】
「この美しい錦織物は暈繝彩色によって織られている」
文/編集部