タブレットは画面が大きくて便利ですが、通勤や通学の電車内でタブレットを持ち出すのはやや不便。もちろん、スマホも大画面化が進んでいますが、とはいえタブレットの画面サイズにはかなわないし、意外とデカい……そんな時、注目したいのが折りたたみスマートフォンです。
ただし、どの端末が魅力的なのか、いまいちピンとこないという人もいるでしょう。
そこで、国内外で発売されている〝横折りタイプ〟の折りたたみスマートフォンのスペックを徹底比較。あなたにぴったりな横折りタイプのスマートフォンはどれか? 選びの基準を決めたいと思います。
なお、縦折りタイプのスマートフォンの特集は、以下をご覧下さい。
【参考】縦折りスマホに買い替える時は「外側のディスプレイサイズ、厚さ、重量」を基準に選ぶのが正解
現行(一部昨年モデル)折りたたみスマートフォンのスペック一覧
まずは、執筆時点で販売されている、横折りタイプの折りたたみスマートフォンのスペックを簡単にまとめてみました。こちらをもとに、折りたたみスマートフォンの標準的なスペックを見ていきましょう。
※日本発売モデルが白、日本未発売モデルがグレーで色分けされています。
横折りタイプの折りたたみスマートフォンは「重さ」と「厚さ」のチェックが最重要事項
横折りタイプの折りたたみスマートフォンは、閉じた状態だと普通のスマートフォン、開くとタブレットライクに使えるのが特徴。タブレットサイズの本体サイズがあるのに加え、閉じた状態でも使えるようにディスプレイがもう1枚搭載されています。
本体サイズが大きい分、パーツを分散して配置できるので、開いた状態では厚みを抑えやすくなっていますが、持ち運ぶ際には折りたたむことがほとんどであるため、そちらの厚みが重要。また、モバイルデバイスである以上、質量も大切な要素となります。
日本でもなじみ深いGalaxyシリーズで見ると、2022年モデルの「Galaxy Z Fold4」は質量が約263g、閉じた状態での厚みが15.8~14.2mm。ディスプレイを閉じても完全に重ならず、隙間ができるデザインになっているので、最薄部と最厚部に違いがあります。一方、2023年モデルの「Galaxy Z Fold5」は、ヒンジを改良することでディスプレイが完全に閉じるようになっており、厚さは13.4mmに。質量も約10g減の約253gとなっています。
他機種の厚みを見ると、11mm~14mm台まで並ぶ形に。スマートフォンの厚みは、1mm違うだけで握り心地が大きく変わるだけに、「OPPO Find N2」や「vivo x Fold」は〝少々分厚いかな〟という印象です。できれば、12mm台にまで薄くなってほしいところでしょう。
質量はディスプレイのサイズや使用する素材によっても左右されるポイントなので、一概にいえない部分であるものの、圧倒的なのが約239g~の「HAUWEI Mate X3」。「iPhone 14 Pro Max(240g)」と同等まで低減されていると考えると、純粋に「ファーウェイがすごい」という話にもなりますが、他メーカーにとっても改良の余地があるといえるでしょう。
特に「Google Pixel Fold」の約283gは、メーカー初の折りたたみモデルとはいえ、さすがに重すぎるので、セカンドモデル以降で改良されることに期待したいポイントです。個人的には、折りたたみスマートフォンでも260g程度が目安になると考えています。
電池消費が多い折りたたみスマートフォンはバッテリー容量も重要
一般的なスマートフォンでも重要な要素ですが、横折りタイプの折りたたみスマートフォンでより重要になるのがバッテリー機能。タブレットサイズの大画面を搭載しているだけに、開いて使用していると、どんどんバッテリーを消耗してしまいます。
ソフトウエアのコントロールやチップセットの高性能化など、近年は省電力化が1つのトレンドです。特に顕著なのはGoogle Pixelシリーズで、ユーザーの使用状況に基づいて、バックグラウンドで動作しているアプリをコントロールし、バッテリーを長持ちさせる機能が搭載されています。多くのメーカーがバッテリーをコントロールする機能を搭載しているものの、機械学習やAIに強い自社開発チップ「Google Tensor G2」を搭載している「Google Pixel Fold」は、折りたたみスマートフォンの中でも比較的安心して使用できるバッテリー性能といえます。
もちろん、物理的なバッテリー容量もやはり重要です。今回比較している横折りタイプのスマートフォンでいえば、いずれも4400mAh~5000mAhのバッテリーを搭載しており、極端に違いがあるとはいいがたいものの、「Galaxy Z Fold4」と「Galaxy Z Fold5」(いずれも4400mAh)、「OPPO Find N2(4520mAh)」は、一般的なスマートフォンと比較しても、近年のハイエンドスマートフォンとしては小さめなので、少し不安が残るかもしれません。
チップセットは現行ハイエンドがベターだけど……
今回比較している横折りタイプの折りたたみスマートフォンを見比べると、自社チップを搭載している「Google Pixel Fold」を除くと、いずれも「Snapdragon 8 Gen 2」もしくは1世代前の「Snapdragon 8+ Gen 1」を搭載しています。「Google Pixel Fold」の「Google Tensor G2」も2022年に発売された「Google Pixel 7/Pixel 7 Pro」に搭載されているものと考えると、いずれも1年~2年以内に登場したハイエンドチップセットを搭載していることになります。
特に横折りタイプの折りたたみスマートフォンは、画面を分割して2つ以上表示するなど、さまざまな使い方ができるのが魅力。その分マシンパワーが必要になるので、ハイエンドチップセットを搭載しているのは当然の流れともいえます。
そういう意味では、現行チップセットであるSnapdragon 8 Gen 2のほうがベターといえますが、Snapdragon 8+ Gen 1も、パワー不足を感じるシーンは少ないでしょう。「こだわる人は、省電力性や機械学習の性能がアップしている現行チップセットを搭載したモデルを選ぶべき」程度の認識で問題ないと思われます。同じ理由で、メモリ容量も大きいほうが安心ではありますが、今回比較している機種はいずれも12GB~と大容量を搭載しているので、いずれの製品でも快適に動作するでしょう。
折りたたみスマートフォンの購入は〝標準値〟を元に好みを選ぶが正解
今回比較してわかった横折りタイプの折りたたみスマートフォンの標準値は、以下のようになりました。
・厚み:12mm台以下
・質量:260g以下
・バッテリー:4500mAh以上
・チップセット:現行ハイエンド or 1世代前のハイエンド
・メモリ:12GB以上
もちろん、スマートフォンを構成する要素はこれだけでなく、ディスプレイ性能やオーディオ性能、カメラ性能なども必要なポイントではありますが、これらは〝必要要素〟として、何が欲しいか、欲しくないかの取捨選択を行っていただければと思います。
さて、折りたたみスマートフォンは年々進化しており、Galaxy Zシリーズにいたっては5世代目がすでに発表されています。歴代のGalaxy Z Foldシリーズを見ると、第3世代となる「Galaxy Z Fold3 5G」でIPX8の防水や専用タッチペン「Sペン」への対応、日本版ではおサイフケータイ機能の搭載など、飛躍的な進化がありました。
「Galaxy Z Fold2 5G」までを折りたたみスマートフォンの〝第1世代〟、「Galaxy Z Fold3 5G」からを〝第2世代〟と区分すると、今回紹介した厚さや質量、バッテリー性能などを大幅にアップデートする新しい〝第3世代〟の登場を待つのももちろんあり。あくまで希望的観測ではありますが、より薄型化や軽量化の技術が進み、ディスプレイが3つ折りできるモデルなどが登場すると、さらに面白い市場に発展していくでしょう。〝ガラケー〟と呼ばれるフィーチャーフォンの時代からスマートフォンの時代へと転換していったように、折りたたみスマートフォンが当たり前になる時代は、意外と遠くないかもしれませんよ。
取材・文/佐藤文彦