車を運転する時によく耳にする「ステアリング」という言葉。自動車に詳しい人にとってはなじみ深い言葉だが、それ以外の人にとっては意味を理解しにくい言葉かもしれない。そこで、本記事では、ステアリングという単語が示す意味、そのシステムの詳細について解説する。
ステアリングとは?
ステアリングの語源は、英語で操舵を意味する「steering」。そこから転じて、車やバイクなどの進行方向を操作するシステムをステアリングと呼ぶようになった。例えば、ハンドルを右に回すと、システムが作動して前輪と後輪のタイヤが右の方向に向く。このようにハンドル操作でタイヤを転舵させるシステムがステアリングだ。
ハンドルはステアリングの一部
ハンドルを回すことを、ステアリングを回すと表現することがある。一見するとハンドルとステアリングが同じ意味を持つように見えるが、厳密に言えば、それらの意味は異なる。
ハンドルはあくまで、ステアリングを動かす起点となる部品で、ステアリングはハンドルも含めたタイヤを動かすための機構だ。つまり、ハンドルはステアリングシステムの一部と言える。
ステアリングは4つの部品で構成される
ステアリングのシステムは、車の3つの基本的な機能、「走る」「止まる」「曲がる」のうち、「曲がる」と密接な関係がある。そのシステムは、以下のパーツで構成されている。
・ハンドル(ステアリングホイール)
運転席に備えられたハンドルで、操舵の起点となるパーツだ。
・ステアリングコラム
ハンドルのすぐ下に備えられ、ハンドルを操作した時のパワーをステアリングギアボックスに伝える機能を持つ。電動パワーステアリングの場合、アシスト機能のモーターが備えられている場合も多い。
・ステアリングギアボックス
ステアリングコラムを通じて伝わってきたハンドルの操作をタイロッドに伝える機能を持つ。
・タイロッド
ステアリングギアボックスの入力をタイヤに伝え、タイヤを左右に動かす機能を持つ。
ハンドルの回転が起点となり、その入力内容が各部品を介してタイヤにまで伝わり、タイヤの向きを動かすのがステアリングシステムの特徴だ。
ステアリングシステムには2種類ある
ここからは、2つあるステアリングシステムの種類について解説する。
マニュアルステアリング
マニュアルステアリングとは、油圧や電動などのアシストがなく、ドライバーの力でステアリングの操作をするステアリングだ。直接力を伝えやすいものの、ハンドルが重く、その操作に力が必要になることから「重ステ」と呼ばれることもある。
パワーステアリング
パワーステアリングとは、ハンドルを回した際に、ステアリングコラムを通じてタイロッドに伝える力を増やすアシスト機構を持つステアリング。一般的な自動車にはほとんど標準で装備されており、少ない力でステアリングを操作することができる。
このパワーステアリングには、2つの種類がある。
一つ目が、油圧式だ。油圧式のパワーステアリングは、エンジンの力で油圧ポンプを回すことで、ステアリングを転舵するパワーを生み出す。そのメリットは、大きな力を生じさせることで、トラックなどの大型車両に採用されるケースも多い。もともと多くの車両に採用されていたが、近年では燃費の悪さというデメリットもあり、徐々に見かけなくなっている。
もう一つが、メインに採用されている電動式のパワーステアリング。ドライバーのハンドル操作をセンサーで感知し、ハンドル操作だけでは足りないパワーをモーターの力で増幅し、タイヤを左右に転回させる。モーターを使用するため、大型車を動かすほどのパワーはなく、小型車やハイブリッド車などに採用されるケースが多い。
ステアリングの故障と注意点
自動車の操作に必要不可欠なステアリングは、故障すると走りへ大きな影響を及ぼす。それでは、実際に故障するとどのような現象が起こるのだろうか。
ハンドル操作に不具合が生じる
パワーステアリングが故障すると、ハンドル操作がしにくくなる。例えば、ハンドルが極端に重くなったり、少しの力でハンドルが左右に回りすぎたりする症状が出ることがある。車の操作は可能であるものの、事故につながる可能性があるため、整備工場やJAFに連絡してすぐに対処するようにしよう。
走行時に異音が発生する
走行しながらハンドルを回す時に電動パワステのステアリングギアボックスで、「ギィギィ」「ガッガッ」と低い異音が発生する場合がある。走行性能に大きな影響はないものの、大きな音が出る可能性があり、走行時の快適性が損なわれるため、なるべく早い段階で修理工場に持ち込むようにしよう。
ステアリング故障時の注意点
ステアリングが故障した際には、車のインパネにハンドルマークの警告灯が表示される。この場合、パワーアシスト機能の異常を表すため、早急に修理するようにしよう。また、異変を感じたら、近くの整備工場に持ち込み、点検をしてもらうのもおすすめだ。消耗した部品を交換するだけでも、自動車の他のパーツへの負担が減り、車の寿命を長くすることができる。
文/編集部