低迷を続けるデジタルカメラ市場だが、2023年は各社メーカーがVlogカメラの新製品を発表。デジカメ市場に活気が戻りつつある。その詳細についてビックカメラ有楽町店の偏愛カメラ販売員・乙川和也さんはこう答える。
「約3年前にコロナ禍で外出機会が激減した中で、自宅で撮影してYouTubeにアップする、ルーティン動画やルームツアーなどの配信者が急増しました。その同時期に、ソニーから初の〝Vlog特化カメラ〞が発売され、ブームの火付け役となりました。そして現在、Vlogカメラは初心者向けから上級者向けまで選択肢が急拡大しているんです」
そこで今回、毎日約1000人以上のお客様の相談を受けるという乙川さんにオススメのVlogカメラを3つ紹介してもらい、その性能と絵変わりを比べてみることに。
第2回の本記事ではボケを生かしたり、高画質な映像を撮りたいと考える上級者にオススメモデルを聞いた。
第2回はVLOGCAMZV-E1(左下)。
シネマカメラと比較しても遜色のない『VLOGCAMZV-E1』
「今年の5月に発売されたSONYの『VLOGCAMZV-E1』はスゴいですね。Vlogカメラとして初めてフルサイズセンサーを搭載し、映画のようなしっとりとした映像が撮れる『シネマティックVlog設定』があります。画質もさることながら、被写体の動きに合わせて収音方向を切り替えるマイクも備えるので高画質のVlogを撮りたい方にはベストな商品だと思います」(乙川さん)
それでは早速、試し撮り!Vlog初心者にぴったりの「キヤノン PowerShot V10」と手ブレ補正がすさまじい「OSMO ACTION4」との違いは何だろうか。
Vlogカメラ撮りくらべPart1 キヤノン「PowerShot V10」はこちらから
Vlogカメラ撮りくらべPart.3 DJI「OSMOACTION4」はこちらから
【シチュエーション1・公園】
オートAFの速度と精度がハンパじゃない!
今回は既存のレンズキットを使用して撮影した。が、本機はレンズ交換式となっているのでソニーEマウントレンズであれば、どのレンズでもVlogが撮影できる。本機の撮像素子は有効約1,210万画素の裏面照射型CMOSセンサーで、画素数を抑えて高感度画質を高めている。動画の画質で定評のある「α7S III」と同じスペックだ。ダイナミックレンジは最大15+ストップと広く、感度も常用で最高ISO 102400となっている。この数値は十分にミラーレス一眼機として活躍するレベルなので静止画もボケを生かした撮影ができる。
蓮の花にピントを合わせ、後ろの仏閣をぼかした。まだ明るい空も白飛びすることなくコントラストを保っている。
今回はデフォルト設定で4K60pでの動画撮影。最初は手前の蓮にピントを合わせて、途中で遠くの仏閣にピントを切り替えている。
手持ちの撮影とは思えないほどのなめらかな映像に、ピント切り替えの速度が異常なくらい速い!
夕暮れ時の空の淡いオレンジなども階調豊かに表現できており、フルサイズセンサーの力量を見せつけられる。また、リアルタイム認識AF機能では、人物・動物・鳥・昆虫・車・列車・飛行機などの被写体を認識してくれるので、3年ほど前では難しかった動く被写体の撮影などもより簡単に撮れるはずだ。
【シチュエーション2・階段昇降】
細かな揺れはあるもののなめらかな映像が撮れる
手ブレ補正は光学式5軸ボディ内手ブレ補正機能を搭載。5段分の補正効果を謳う。本機は「アクティブモード」に加えてさらに補正効果を30%アップしたという「ダイナミックアクティブモード」を新搭載している。
今回は手ブレ補正2段相当で撮影した。細かな揺れは画角的に致し方ない印象だ。
実際に、歩きながらの手持ち撮影でもかなり揺れを吸収できていたように感じる。ただし、強力な補正と引き換えに画角は結構狭くなってしまうので、動きながらでなければ下位のモードを使うほうが画角を拡げて意図した映像を撮りやすくなるだろう。
【シチュエーション3・明暗差が大きい場所】
明所にピントを合わせても暗所が潰れない!
明暗差が大きい場所での撮影はどうだろうか。デジタルカメラは暗部の階調がなくなり、真っ黒になってしまうことが多い。だが、今回の映像では持ち前のフルサイズの威力を発揮し色を残したままの陰をつくることができた。
手前の茂みからスカイツリーにスムーズにフォーカスを移動してくれた。
こういった明暗差が大きいところで、暗部にピントを合わせると、明部が白飛びしてしまうケースが多いのが、ZV-E1では、その心配も無くバッチリとピントが合った。
本機は暗所性能が高く、夜景撮影などかなり暗い時の撮影でも開放F1.4などの明るいレンズを使わずとも撮影ができる。これはズームレンズなどに多いF4あたりのカメラで日中から夜間まで撮影できるということにもつながる。〝複数のレンズを持ち歩かなければ撮れない〟という悩みを解消してくれる。
驚異のシネマティックモードで〝エモい〟映像が撮れる
シネマティックVlog設定は、本機の大きな注目点だ。面倒なカメラ設定や後編集をすることなく映画のワンシーンのように映すことができる。
具体的には、アスペクト比がシネマスコープの2.35:1に、フレームレートが映画と同じ24pにそれぞれ固定される。これだけでも映画のような雰囲気は出るが、さらに「ルック」と「ムード」の設定もできる。
ルックはS-Cinetone、CLEAN、CHIC、FRESH、MONOから選べる。また、ムードはAUTO、GOLD、OCEAN、FORESTから選べ、組み合わせて色々な絵作りができる。
今回はデフォルト設定で「ルック」「ムード」は使用せずに撮影した。
横長の画角に蓮の葉がびっしりと連なる様子は何かのシーンでも使えそうな会心の出来。三脚やジンバル等をつければなめらかなに移動していく映像が撮れるはずだ。
【まとめ】今のVlogカメラの〝最高峰〟だが、値段は手を出しづらい……
〔使いやすさ〕★★☆ 〔映像のクオリティ〕★★★ 〔低照度・暗部の撮影〕★★★
小型ボディにフルサイズセンサーを積んた日常使いのムービーカメラとして、かなり完成度が高い。手軽にオシャレな映像が撮れる「シネマティックモード」や置き撮り時に、自動で人物を中心にする「オートフレーム」機能などかなり使い勝手がいい。が、Vlog向けで30万円オーバーはなかなかの値段で手を出しづらい部分はある。
とは言いつつも、動画をやり始めると「あれもやりたい、これもやりたい」と映像表現上の欲求はどんどん出てくる。そうした時にポテンシャルの高い本機ならマニュアル撮影や交換レンズの活用、後編集などを駆使してハイレベルな映像を作ることができる。高価ではあるが、ユーザーの上達に合わせたステップアップに対応できるのは頼もしいところだろう。
製品スペック
〔製品名〕VLOGCAM ZV-E1
タイプ・センサーサイズ |
ミラーレス・フルサイズ |
マウント |
ソニーEマウント |
有効画素数 |
約1210万画素 |
動画性能 |
4K(3840×2160)120fps |
連続撮影時間(実撮影時間) |
約95分 (CIPA規格準拠) |
ISO感度 |
80-102400相当(拡張: 上限ISO 409600) |
液晶モニター |
バリアングル |
幅×高さ×奥行き |
約121.0×71.9×54.3mm (グリップからモニターまで) |
重量 |
約483g(バッテリー、カード含む) |
ブランドサイト
https://www.sony.jp/ichigan/products/ZV-E1/
写真・文/河原塚秀信
DIME最新号ではVlogカメラのトレンドを分析!
大特集は「Google超研究」!売上40兆円というIT界の超巨人が目指す未来を徹底解説したほか、Googleの最新ガジェットや超便利アプリの使いこなし術まで徹底解説しています!!
ほかにも「腰痛マネジメントの極意」「最新スポーツギア図鑑74」「10分でわかるインボイス制度」など、総力取材でどこよりも情報を詰め込んだ雑誌となっています。