物流の「2024年問題」まで1年を切り、各社トラックドライバー人材の採用熱が高まる
2022年後半から「流通」の求人数が増加傾向にある(図②)。この要因の1つに、「流通」業種の中で、ボリュームを占める「道路貨物運送業(宅配便・トラック運送など)」の求人数が増加トレンドにあることが挙げられる(表②)。
2024年4月から施行される働き方改革関連法案により、トラックドライバーの時間外労働規制が強化されることで、輸送能力の不足が懸念される「2024年問題」。時間外労働の年間上限が960時間までとなり、トラックドライバー1人あたりの労働時間の短縮が必要になる。そのため、各社は輸送を担う人材確保に力を入れており、求人数が増加したと考えられる。
しかし、若者が車離れしていることや、物理的な移動が伴うトラックドライバーは他職種と比べはたらき方の柔軟性が低いことなどから、転職を希望する人は少ない傾向にある。結果、採用に苦戦する企業が多いのが実態だ。
そのため企業では、ベースアップの検討や、転居費を負担するなどの動きがみられる。また、労働時間減少のために、ドライバーの人員を増やすだけでなく、業務の生産性アップや効率化を狙い技術職の採用を強化する企業も増加傾向にある。
具体的には、荷役を効率化させるために使う機械(マテリアルハンドリング)の設計や配達向けドローン開発などの求人、社内のシステム導入を推進する社内SEの求人などが増えている。このように、直接的に人員を強化するだけでなく、はたらき方やシステムを見直して業務を効率化させる動きは今後も続くだろう。
新型コロナの5類移行やインバウンド需要を受けて、旅行ニーズが復活
2023年4-6月期の「航空運輸業」の求人数は、前期比の増加率が「流通」のなかで最も高く、117%増となった。この背景には、新型コロナの5類移行やインバウンド再開による国内外への旅行需要の回復に加え、夏休みの旅行需要増加に備えた採用強化などがあったと考えられる。
旅行需要が急減したコロナ禍初期~中期は、地上スタッフを中心に異業界への転職などを余儀なくされた。一部企業では既存社員を他社へ出向させるなど、新しい形での雇用を続けていたものの、異業界への人材流出の影響は大きく、今は急な需要の戻りに対して人手が足りない状況にある。
これに伴い、地上で搭乗手続きや荷物の受け入れ、出発・到着ロビーでの案内を行う「グランドスタッフ」や、荷物の運搬や搬入などを行う「グランドハンドリング」といった地上スタッフの確保が急務となり、「航空運輸業」の求人数を押し上げたと推測する。
航空業界の経験者は比較的少ないこともあり、企業は採用の間口を広げるために未経験採用にも力を入れている。
未経験者を受け入れるにあたって、空港の構造や仕組みを学べる研修や、採用競争力を上げるために入社祝い金を導入するなど工夫を凝らす企業もある。これまで「グランドスタッフ」が行ってきた搭乗手続き等の顧客対応は、AI案内システムやロボットの導入を推進し、業務の効率化を図る動きが続く見込みだ。そのため、今後DX推進にかかわる求人も増えていくと予想している。
「専門店(家電量販店)」の求人数は前年同期比で約4.5倍に。DX人材や携帯電話販売スタッフの採用強化が要因
「専門店(家電量販店)」の求人案件数は2022年後半から大きく伸び、2023年4-6月時点で、前年同期比が459%になった(表③)。その背景には、大きく2つの要因が挙げられる。
1つ目は、「DX人材の確保」。現在、家電量販店では生産性を上げ収益性を高めるために、店舗のDX化に注力している。例えば、スマホアプリで商品情報を見られるようQRコードを導入するなど、オンラインとオフラインの融合が進んでいる。
そうしたスマホアプリの自社開発や改善、データ分析に加え、社内の基幹システムの見直し、新規プロジェクトの進行マネジメントなどを担うDXポジションのニーズが高まっている。DX人材は市場価値が高く各社採用意欲が高いため、今後も求人は増える見込みだ。
2つ目は、「携帯電話販売スタッフの確保」。携帯電話の解約金撤廃を受け、気軽に通信キャリアや機種の変更ができるようになった。またコロナ禍の入店制限が撤廃されつつあり、事前予約が不要な店舗が増えてきたことも影響し、キャリアショップや家電量販店に赴く人が増えている。
しかしながら携帯電話販売スタッフは、未経験から提案経験を積み、数年で他業界の営業に転職するというキャリアステップを踏む傾向が強くある。ニーズに対して人手が不足していることから、求人数が増えたと考えられる。
出典元:パーソルキャリア株式会社
構成/こじへい