【短期集中連載 Vol.4】 カジノ&ギャンブル カジノゲーミンクの中のアレコレ『ブラックジャックでディーラーを翻弄するプレーヤー』
ナマステ。カジノライターのかじのみみです。今回のテーマは、カジノの大ポピュラーゲーム「ブラックジャック」。
ブラックジャックは、「Game of chance」であると同時に「スキルゲーム」でもあります。一体、どんなスキルがあるのでしょう? シリーズ④のタイトルは、『ブラックジャックでディーラーを翻弄するプレーヤー』です。
「ブラックジャックテーブルとプレーイングチップ、ショーカードの一例」
「知性と勘」を駆使するギャンブルゲーム
カジノに興味がなくても、過去に国内外のカジノ施設を訪れたことがなくても、「ブラックジャック」というゲームの名前を知っている人は我が国日本にも多くいると思われる。
ブラックジャック(以下BJ)は、世界のカジノプレーヤーから愛され続けている「知性と勘」を駆使するギャンブルゲームだ。バカラと比較をするとゲーム性が高く、自分の采配で次に配られるカードの結果に影響があるので、「ビギナーズラック」以外でこのゲームに勝利するには多少のテクニックは必要なのかもしれない。
ところで、ブラックジャックには「ネバダディール」と「ロンドンディール」の2 種類があるのをご存じだろうか。まず基礎知識を簡単にお伝えしたい。
「ネバダディール」とは、アメリカで人気のある「ピッチングブラックジャック」である。トランプカード1 箱(1 デッキ)のみを使用したBJ で、このタイプは現時点で、国内ではほぼ導入されていないだろう。
一方「ロンドンディール」は、一般的に知られているカードシューター(shoe)を使ったBJ。シューターBJ の場合は、近年はカードを6~8 デッキほど使用するのが主流だ。
BJ は別名「21」(テュウェンティ・ワン) 、日本では「二十一」と呼ばれることもある。「BJ」は、絵札とエース(A)の2 枚のカードの組み合わせで21 になるもの、他方の「21」は、3 枚以上のカードの合計が21 ピッタリになったものを言う。
どの名称でも、国内外のカジノでは大体通じるので、自分の好きな呼び方を選んでいただけたらと思う。
図:『カジノで学ぶ英会話(ソニー・ミュージックソリューションズ)』より
尚、1960 年代は、エドワード・O・ソープ氏が執筆した本「ビート・ザ・ディーラー」(Beatthe Dealer) に火がつき、カジノでそれを試すプレーヤーが増えたことが「カードカウンティング」の流行のきっかけである。
今ではsky eye(監視カメラ)でカードカウンティングを確認した途端、カジノから出禁となる場合があるので、この件はここでは扱わない。
ディーラーをいかに飛ばす(バーストさせる)か?
ではカードカウント以外でディーラーを翻弄すプレーヤーはどんなプレースタイルをとるのだろうか。
それは、サークルの上げ下げを行い、ディーラーの「バーストタイム」を作り得る“工夫”をすることである。ではそれを説明しよう。
このプレーはディーラーとプレーヤーが1対1で対戦しているときが最も有効と思われる。同じテーブルに他のプレーヤーがいる場合は、他人の意思が自分のプレーに影響を及ぼすため(逆もしかり)、不確実性の要素が高まってしまうからだ。
画像:『カジノで学ぶ英会話(ソニー・ミュージックソリューションズ)』より
BJ テーブルに座る位置はサークル4 か5 辺りがよいだろう。サークル(circle)とは、自分が座った席の前に表示された数字の箱、チップを賭ける場所である。日本では「ボックス」と呼ばれている。
例えば、サークル4 に座った場合、1 つだけ賭ける場合はサークル4 に。3 か所に賭けたい場合はサークル3,4,5 に。5 か所の場合はサークル2~6、あるいはサークル3~7 を使う。これは、カジノで規定がない限り、どのサークルに何か所賭けても大丈夫である。
5 か所の場合は、1 か所よりも単純に5 倍の賭金が必要となる。5 か所に賭けてディーラーがバーストする(ディーラーが負ける)と大きな勝利がもたらされるが、その逆に、ディーラーが21 となり、賭けたすべてのチップを取られるリスクもある。だからこそ、プレーヤーは賭けるサークル数を頻繁に変え、「ディーラーがいかにバーストしてくれるか?」を考えるのだ。
BJ の醍醐味の一つは自分が21 になることよりも、ディーラーを飛ばす(バーストさせる)ことを思案しながら自分流のゲームメーキングをすることだろう。プレーヤーがカードの流れをつかみ、自分に「バーストタイム」が訪れたディーラーの心はかなり熱い!
(くやしい~。次のゲームで取り戻したい)
などと思っていた矢先に、「ありがとう!」といって勝利者はテーブルから離れていく。
(ああ、待って! まだ行かないで~)と、心の中でプレーヤーを追いかける瞬間である。
ディーラーは基本的にプレーヤーとの勝敗で給与が決まるわけではない。しかしながら、自分のディーリングで対戦者が大きく勝ちだすと、即「ディーラーチェンジ」となる。顔には出さなくても、ディーラーも負けると悔しい思いをするものである。
「カジノ&ギャンブルの深層」シリーズ③でも触れたが、もしあなたがカジノで大勝利したときはディーラーチップを渡していただけたらと思う。チップを受け取ったディーラーはそれが癒しとなり、あなたに感謝をするだろう。
勝負の世界で結果が出た後に、勝者が敗者に対して「思いやりを表現する」行為は、成熟した大人でなければ行動に移すことはできない。カジノの“discipline”(ディシプリン)の一つでもある。
人はゲームに勝って、負けて、負けて、そしていつかまた勝つ・・・
勝者は敗者になり、敗者も勝者になる日がある。カジノプレーはこの結果の繰り返し。
そしてプレーヤーも人、ディーラーも人。ハウス運営を行うのも人である。人には「感情」があり、感情があるからこそ、人々は楽しみ、喜び、悲しみ、怒り、くやしい思いをし、その後にはきっと奮起をする力が湧いてくるのだろう。
取材・文/かじのみみ
カジノライター/ カジノコンサルタント
カジノ、ギャンブル、IR業歴31年。ディーラー歴25年。1992年より全国各地で開催された120件以上の「模擬カジノ」の企画、運営、ディーリング業に携わる。2008年から米系大手カジノ企業のVIPマーケティング・通訳・経理担当。2013年8月に同企業を離れフリーとなり、IRの誘致活動に従事。2020年以降は、カジノとギャンブル関連の執筆、スポットコンサル、通訳業に専念し、現在に至る。大阪生まれ、横浜・インドボンベイ育ち。