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PayPayは他社カード締め出しを延期、楽天ペイはスーパー還元実施、決済サービスを制するキャリアはどこか?

2023.08.30

■連載/法林岳之・石川 温・石野純也・房野麻子のスマホ会議

スマートフォン業界の最前線で取材する4人による、業界の裏側までわかる「スマホトーク」。今回は、決済サービスの覇権争いの今について会議します。

楽天ペイは認知度が低い?

房野氏:楽天ペイが楽天カードか楽天キャッシュでのコード・QR払いで最大20%還元される「スーパー還元」など、各種キャンペーンを開催して注目を集めています。

石川氏:楽天ペイは今までペイとして訴求をしなさすぎた。PayPayがあれだけ還元キャンペーンをやって、au PAYとd払いも色々とやっている時に静観の構えを見せていた。楽天はその時クレジットカードが強かったので静観していたんでしょうけど、今になって楽天ペイの認知度アップのためにポイント還元と言ってもなぁみたいな。

石野氏:驚いたことに「おトクなペイは楽天ペイ」というキャッチフレーズで、テレビCMもやっているんですよ。てっきりネット動画だけなのかなと思ったら、テレビCMもバンバンやっていて、ようやく尻に火がついた感がある。

房野氏:キャンペーンのCMですか?

石野氏:キャンペーンだけのCMってわけではなく、「楽天ポイントが使えるペイ」という訴求をしているCMですね。先日行われた説明会では「楽天ペイは知名度が低い」ことが課題としていた。MMD研究所の調査で知名度は3位だったんですけど、知名度以上に決済額とか決済回数の差が開いちゃっているというか、PayPayはその辺が大きいので、そこを取り戻したいんだろうなと感じました。

房野氏:説明会では「どんなクレジットカードでも使えます!」と、PayPayをすごく意識した感じでしたね。

石川氏:オープンでやっていることをアピールしていた。PayPayが自社カードにクローズしたことで、その足元を見て楽天はオープンだと言っています。とはいえ、PayPayも磐石かというと結構微妙な感じもしていて……

石野氏:カードは弱いですからね。

石川氏:PayPayはクレジットカードで決済金額を稼ぐところができていない。今までソフトバンクとしてカードにあまり注力してこなかったというツケが回ってきている。その点、d払いはdカード GOLDが1000万会員を突破、au PAYカードも2022年12月に830万を突破している。

 MMD研究所の調査で、4ペイ(PayPay、d払い、au PAY、楽天ペイ)のユーザーがコード決済と同じ会社のクレジットカードを紐付けている割合を見ると、d払いが圧倒的に多いんですよ。d払いユーザーはdカードを紐付けている。楽天ペイは2番目。au PAYが3番目でPayPayは圧倒的に少ない。ソフトバンクはユーザー数がドコモ、auに次ぐ3位で少ない。ソフトバンクユーザー向けにサービスを提供しても勝ち目はないのでオープン戦略にして、ソフトバンク色を消して、みんなで使えますよという戦略でやっているけど、なんだかんだ言ってやっぱり経済圏勝負に戻ってくる。そうなるとカードの強さが効いてくるのかなと。しかも、ZホールディングスでPayPay、LINE、Yahoo!の連携ができてないので、そこを何とかしないことには楽天経済圏に勝てない。今、面白いタイミングだと思います。

dカード GOLD

au PAY ゴールドカード

法林氏:楽天はペイをうまく扱えれば、他社をちょっと出し抜くことができるかもしれない。だけど「現状は知名度が云々」と言ってるくらいなので、「楽天ペイをいつからやっているんですか」って言いたいですね。

房野氏:楽天ペイはかなり早い時期から始めていますよね。

法林氏:だから「何をやっていたんですか」って話。

石野氏:うだつの上がらないペイになっている。

石川氏:楽天はクレジットカードがナンバーワンだし、非接触の楽天Edyも持っているし、経済圏があってペイもあってと、どれに注力したらいいんだろうかって迷う状況だった。

石野氏:ペイだけに注力しにくい状況だったとは思います。ただ、モバイルとの連携も弱すぎる。モバイル事業を持っているのにモバイルと連携しないペイも珍しい。PayPayなんてソフトバンクユーザーにバンバン、クーポンを配っていますし、au PAYもクーポンを配ったり割引したりしている。d払いもポイントアップしたりと活況。でも、楽天ペイって楽天モバイルを契約してもメリットがないんですよ。これはどうなんだろうって思うところはありますね。

 先日、ソフトバンクを久しぶりにちゃんと契約してわかったんですけど、ショップでPayPayアカウントの紐付けまでやってくれたんですよ。ドコモショップもd払いのアカウントを作ってくれる。楽天モバイルはそういうことをやっていなくて、囲み取材で「こういったサービスの違いが知名度の差になっているんじゃないですか?」と聞いたら、「7月から楽天モバイルショップでサポートするようになりました」と。7月って最近じゃんと。

法林氏:だから「楽天ペイを何年やっているんだ」という話。楽天はグループ内がバラバラなんですよ。

石川氏:そうですねぇ。

法林氏:それが一番大きい。クレジットカードの本人認証の話だって3年前からできた話で、それが今までできてない。

石川氏:オフィスもバラバラだし。本来は三木谷さんとかがそこに橋渡しすればいいんだけど、そこまで回っていないというか。

石野氏:分社化しすぎているんですかね。

法林氏:楽天カードは元々、国内信販という別な会社だったし。その点、KDDIはauフィナンシャルホールディングスがあって、auじぶん銀行もKDDIと三菱UFJ銀行で設立した会社で、当初から双方の人材が参加していた。ドコモもdカードは、その後ドコモの社長になった加藤 薫さんが三井住友カードで勤務して始まった話。PayPayにはソフトバンクの広報の人が行っていたりする。グループ内でどうやって連携するかだけど、楽天グループは人材の面で、どこまで連携ができているのか。そういう点も含め、根本的にマーケティングができていないっていう状態じゃないかな。

石野氏:会社が細かくなりすぎているんですかね。楽天グループがあって、その中に楽天モバイルがあってペイメントがあって銀行があって証券があって……。KDDIの場合はKDDIがあって、中にauフィナンシャルホールディングスがあって、その下でauじぶん銀行とかauペイメントに分かれていたりはするんですけど、楽天の場合は楽天グループが管轄しているところがちょっと多すぎるんですかね。細かく縦割りになっちゃっている感じがする。

石川氏:Googleみたいな感じ。PixelとAndroidチームの連携はとれているの? みたいな。

石野氏:あんまりとれてないですね(笑)

法林氏: PayPayも結構大変な状況。他社クレジットカードの連携停止は2年くらい延長したんだっけ。

石川氏:2025年1月になった。1年半くらいですね。

法林氏:ひとます連携は継続することになったけれど、果たしてどうするのって感じ。PayPayカード自体は悪くないと思う。一応、携帯4社のカードを持っているけど、PayPayカードはナンバーレスだし、オンラインで各種情報の確認ができるとか、ちゃんとできているけど、うーん、なんだろうな……つい最近まで利用残高を確認するのに、再認証が必要だったり、ログインするしかないとか、ちょっと使い勝手の良くないところがあった。例えば、今月いくら使ったかを知りたいだけだったら、PayPayのアプリを起動したら見られるとか、そういう感じではなかったんですよ。そういうところが少しずつ改善されて使いやすくなってきている。逆に物足りない状況になっているのは証券。PayPayポイントの資産運用はPayPay証券の口座で、株式や投資信託を買えるんですが、そういうのを表示できないんですよ。アプリの作り込みが甘い部分がある。ソフトバンクの最大の難点は実はそこかなと思っていて、金融系の連携はちょっと足りない気がする。

PayPayカード

石川氏:その点、auは先に行っていますよね。au PAYアプリでauカブコム証券の表示に切り替えられるし。

法林氏:au PAYからSuicaのチャージができるなど工夫している。前も言ったと思うけど、たぶん、普通のクレジットカードは駆逐されていくことになると思う。マイレージのカードも、もしかしたらいずれ危うくなるかもしれない。

石川氏:いや、ANA Payはいいですね、ANA Pay推しです。iDとVisaのタッチ決済が使えるし、マイルもじゃかじゃか貯まる。航空系はまた盛り上がってくるといいなと思います。

法林氏:ペイは今、ちょっと転換期というか、チャンスという言い方もできる。もしかしたらカード会社にまた揺り戻されるかもしれないけど。

石野氏:コード決済はだいぶ普及しましたよね。それで良かったのかどうかは微妙なところですが。

PayPayの他社カード締めだしは「見せ方が悪かった」

法林氏:PayPayの他社カード新規登録の停止について、「PayPay改悪」って書かれちゃうんだって思った。

石川氏:こんなことを言ったらPayPayの人が渋い顔するかもしれないですけど、やっぱり見せ方が上手くなかったからだと思います。PayPayユーザーでどれだけクレジットカードを紐付けている人がいるのか。クレジットカードでチャージはできない、あくまで後払いとして機能しているので、そこを正しく理解されていないと思う。

石野氏:しかもほとんどポイントがつかないんですよね。自治体と一緒にやっている大幅還元キャンペーンも、他社カード紐付けでは還元されない。PayPayユーザーからすると他社カードを使うメリットは少ないんですよ。クレジットカードを使いたいけど、カードには対応してなくてPayPayは使えるというお店で、そのクレカで決済できるっていうぐらいのメリットしかない。正直、PayPayが他社カードを閉め出すことに対してポイ活勢はそんなに怒っていなかった。「ですよね」みたいな感じだったんですよ。当然、PayPay側は手数料を取られちゃうので全然旨みがないですし。

石川氏:他社カード締めだしは独禁法違反だ、みたいなことを言う人もいた。コード決済の大きなシェアを持っているPayPayが、支配的なのにも関わらず他社カードを閉め出すことはどうなんだって言い方をしていたので、あれは見せ方に失敗した感じがする。

石野氏:独禁法違反という意見については大げさに話をふくらませているだけのような感じもします(笑) なんというか「改悪と言っていた人、そんなにいたかな」って感じがしたんですよね。

法林氏:Twitterのトレンドでは完全に改悪になっていた。

石野氏:そうですね。ただ、それで検索して見ても、「ふざけんな」「PayPayやめるぞ」みたいな人は、そんなにいなかったというか。あれは実際、どこまで本当に解約騒動だったのかなって。

石川氏:昔、ソフトバンクが「アメリカ放題やめます」って言ったらみんなが激怒したみたいなのと一緒。

石野氏:いや、あれは本当にちょっと怒ったじゃないですか。

石川氏:やめられたら困るっていう人って、たぶんそんなにいなかったと思うんだけどけど、イメージによって結局は無期限延期になった。ああいうところ、ソフトバンクは下手な気がする。

石野氏:アメリカ放題をやめられていたら本気で切れますよ。「何のためにソフトバンクを契約していると思っているんだ」みたいな(笑)

房野氏:そこまですごくはないでしょう(笑)

石川氏:まぁ、それだけソフトバンクとしてはPayPayカードを作ってもらいたい、そっちに寄せたいっていう思惑があるんだろうなと思います。

房野氏:私、PayPayカードを作る気はあるんですけど、新規入会のポイント大幅還元キャンペーンをやってくれないかなと思って待っているんです。今は5000ポイントくらいで、ちょっと渋いんですよ。

石野氏:さっさと作りましょうよ。「PayPayあと払い」(8月から「クレジット」に表記が変わった)は便利ですよ。

法林氏:名前がいまいちだけどね。

石野氏:後払いと言うんだったらメルペイのメルカードぐらい、もっとITの力を駆使してほしいな。

法林氏:PayPayあと払いって、つまりカード払いでしかない。ああいう名前を付けたために、逆にPayPayあと払いを選ばない人が増えちゃった感がある。で、結局、PayPayあと払いを「クレジット(旧)あと払い」に変えざるを得ないことに追い込まれた。そういうところも含めて、PayPayって拡販は上手にやってきたんだけど、見せ方が全体的に良くない。

石川氏:前にTwitterで、「何も汗をかかずに儲けているビジネスモデルが気に食わないからPayPayをやめる」って投稿しているお店があったんです。ああいうのを見ると、何も理解されていないんだなと思います。努力して汗をかいて一生懸命対応サービスを増やしているにも関わらず、そういうことが理解されていない。

石野氏:PayPayカードについては、PayPayに紐づいてPayPay内で管理できるクレカの割に、フィンテック感がちょっと薄い感じ。メルカリのメルカードだと、好きなタイミングで支払いができたり、分割にできたりと柔軟な支払いができて、それをアプリ上でできるんです。プリペイド的にもポストペイ的にも使えて、アプリで管理して、支払いたければポンとタップすればすぐにできる。PayPayカードは本当に単なる締め日に引き落とされるカードなので、ちょっとフィンテック感が薄い。せっかくPayPayと連動するんだったら、もっとちゃんとカードの面白いサービスにしてよって思うところはあります。ただポイント還元率が高いだけなので。

法林氏:その点、au PAYカードはゴールドカードの11%還元にはじまり、投資信託や証券をauカブコム証券でカードで買うとポイントが大量に還元されたりする。

房野氏:auは金融系サービスを使うと、いつのまにかPontaポイントがどんどん増えて、それをau PAYアプリにチャージして使えますね。

法林氏:Pontaポイントは買い物に使うこともできるけど、株などの投資にも使える。いろんなことができるように仕組みをうまく作っている。ドコモのdポイントは日興証券とTHEOと組んでいるけれど、自前の銀行がない。三菱UFJ銀行と組んでやろうとしているけれど……ドコモはNTTグループとして銀行を作っちゃいけないという法律でもあるのかな。何か制限があるのかもしれないね。

石川氏:ドコモ口座の不正利用のトラウマがやっぱり相当強いみたいです。お金を扱うことには相当、警戒している感じがします。

石野氏:そうですね。

法林氏:でも、他社に対抗していくんだったら銀行をやらないとダメじゃないかな、“NTT銀行”。

石野氏:NTTの株主的に“日本銀行”になってしまう(笑)

石川氏:将来的にauじぶん銀行と楽天銀行が一緒になったら面白いなと。

石野氏:おっと(笑)

法林氏:またそういう発言を。

石川氏:今の勢力図のまま行かない可能性もある。パンダとタヌキがくっつく可能性も。

石野氏:パンダとタヌキはまぁ、形的に似ていますからね(笑)

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