2. 生前贈与を行う際のポイント②|贈与税に注意する
生前贈与を行う際には、贈与税の課税にも注意する必要があります。特に相続対策として生前贈与を行う場合、贈与税について勘違いをしていると、かえって損をしてしまうことになりかねません。
贈与税については、主に以下のポイントを押さえておきましょう。
①年間110万円を超える贈与を受けた場合、贈与税の申告が必要
②父母・祖父母からの贈与については、相続時精算課税も検討すべき
③相続開始前一定期間の贈与には、相続税が課される
2-1. 年間110万円を超える贈与を受けた場合、贈与税の申告が必要
贈与税の申告は、原則として、1月1日から12月31日までに受けた贈与の額が110万円を超える場合に必要となります。
複数回にわたって贈与を受けた場合(別の人から贈与を受けた場合も含む)には、それぞれの贈与は110万円以下でも、合計で年間110万円を超える場合は贈与税の申告が必要です。
贈与税の申告期間は、翌年の2月1日から3月15日までです。申告を怠ると、後に加算税を含む追徴課税を受ける可能性があるのでご注意ください。
なお、年間110万円以下の贈与は非課税です(=基礎控除)。基礎控除の範囲内であれば、無税で財産を贈与できます。
2-2. 父母・祖父母からの贈与については、相続時精算課税も検討すべき
60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫が贈与を受ける場合は、通常の課税方式(暦年課税)に代えて「相続時精算課税」を選択できます。
相続時精算課税を選択すると、通算2500万円までの贈与が非課税となる一方で、相続発生時(=贈与をした人の死亡時)に相続税が課されます。
暦年課税と相続時精算課税のどちらが有利であるかは、財産の状況などによって異なるため、税理士などのアドバイスを受けることをおすすめします。
2-3. 相続開始前一定期間の贈与には、相続税が課される
相続開始前3年間に行われた生前贈与には、相続税が課されます。2024年以降は相続開始前7年間まで、相続税の課税期間が拡大される予定です。
基礎控除(年間110万円)の範囲内で行われた贈与についても、上記の期間に行われたものについては相続税が課されます。相続対策として生前贈与を行う場合は、早めに始めた方がよいでしょう。
3. まとめ
高齢に差し掛かる一方で資金に余裕がある方は、資金を必要とする子どもや孫などに対して、生前贈与をすることが有力な選択肢となります。
また、生前贈与は相続対策としても有用です。税理士などの専門家にアドバイスを求めながら、生前贈与を行うべきかどうか、行うとすればどのような形がよいかを検討してみましょう。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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