車を運転する方なら、一度は耳にしたことがあるはずの「クリープ現象」という言葉。しかし、どのような現象なのか、なぜ発生するのかの仕組みまでをしっかりと理解している人はそう多くはないかもしれない。
そこで本記事では、クリープ現象の仕組みや注意点について解説する。特徴を知っておくことで、実際にクリープ現象が発生した際に慌てずに対処できるはずだ。
クリープ現象とは
まずはクリープ現象がどのような現象か、あらためて確認しておこう。普段車を運転する方は、必ずチェックしてほしい。
アクセルを踏んでいないのに車が動きだす現象
クリープ現象とは主にオートマチック車でシフトレバーをDもしくはRに入れている場合に発生する、アクセルを踏んでいないにもかかわらず車がゆっくりと動きだす現象だ。「クリープ現象」という言葉の由来は「徐々に進行する」「這いまわる」といった意味を持つ英単語「creeping」に由来する。
クリープ現象発生時の速度は5km~10kmほど
クリープ現象発生時、車はおよそ5km~10kmのスピードで動く。ただし、車の状態によっても速度は変動する点は覚えておこう。長時間のアイドリング状態、空調の使用といった要素がエンジンに影響を与え、速度にも影響するため注意が必要だ。
クリープ現象はなぜ発生する?
では、なぜクリープ現象が発生するのだろうか。その仕組みと、クリープ現象が発生しない車種があることを覚えておこう。
クリープ現象の仕組み
クリープ現象はオートマチック車に装着されている「トルクコンバーター」という装置が原因となって発生する。オートマチック車はエンジンが作動しているあいだ、トルクコンバーターを通じて動力をタイヤに伝え続ける。この動力がタイヤを動かすため、アクセルを踏んでいない時でも車が動き出す。
クリープ現象が発生しない車もある
数ある車種の中には、クリープ現象が発生しない車も存在する。大前提として、クリープ現象が発生するのは基本的にオートマチック車のみ。マニュアル車はトルクコンバーターを利用せず、クラッチを利用した動力伝達を行う構造上、クリープ現象は発生しない。
また、オートマチック車の中でもハイブリッド車や電気自動車にはクリープ現象が発生しない車種も存在する。
クリープ現象による事故を防ぐために
クリープ現象は、時に事故の原因となることもある。ここでは、クリープ現象による事故を防止するために意識すべき点を紹介する。
停車時はブレーキをしっかり踏み込む
停車時にブレーキペダルをしっかり踏み込むことが、クリープ現象による事故防止において大切なポイントだ。時に、自動かつ低速で動作するというクリープ現象の特性上、運転者がクリープ現象の発生に気づかない場合がある。信号待ちや渋滞時など、ふとした拍子に発生したクリープ現象が事故につながらないよう、ブレーキをしっかり踏み込むことを意識しよう。
車間距離を十分に確保する
周囲の車との車間距離を十分に確保することも、クリープ現象による事故を防止するために欠かせない。車間距離を確保していれば、クリープ現象によって車が動いていることに気づくための時間的な余裕ができる。対して車間距離が短いと、とっさのブレーキが間に合わない可能性も高まってしまう。十分な車間距離を取る意識は追突事故の防止にもつながるため、日ごろから意識するようにしよう。
各種ブレーキを活用する
クリープ現象による事故を防ぐためには、サイドブレーキやシフトレバーといった各種ブレーキを活用するのも有効だ。ブレーキペダルと併せて他のブレーキを使用することで、踏み込みが甘くなってしまったときの保険となる。渋滞時など、長時間ブレーキペダルを踏み続ける状況では疲労も溜まりやすいため、ブレーキを併用して運転の負担をやわらげよう。
クリープ現象のメリット
事故の原因にもなるクリープ現象だが、時としてメリットに転じるケースもある。最後に、クリープ現象のメリットを見ていこう。
ブレーキだけで速度調整ができる
クリープ現象による自動走行を利用することで、アクセルを踏まずにブレーキだけで走行速度の調整が可能になる。渋滞をはじめとした低速で運転を行うべき場面では、クリープ現象を利用すれば運転の負担を軽減できる。ブレーキペダルを踏みこむ力によって速度が変わるため、クリープ現象を上手く活用しよう。
駐車場での運転がしやすくなる
人通りも多い駐車場では基本的にスピードを落として運転する必要がある。そのため、アクセルを踏むのではなく、クリープ現象を利用する方が安心だ。バックをする際もアクセルを踏む必要がないため、駐車時にも活用したい。
坂道発進がしやすくなる
坂道発進もクリープ現象が便利なシーンの一つ。本来、坂道発進の際には車の後退を防ぐためにペダル操作をする必要がある。しかし。クリープ現象による推進力を利用すればペダルを踏み変える際に車が勝手に後退してしまうのを防いでくれる。ただし、急勾配な坂道を登れるほどの力はないため、クリープ現象に頼りきらないように注意しよう。
文/編集部